表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/35

静寂

最終章


それでも世界は続く


一年後。


世界は、続いていた。



ヴァルグラン帝国北部。



かつて、

空が裂けた場所。



そこには今。



巨大な慰霊碑が建っている。



名前はない。



ただ。



黒い石碑へ、

一文だけ刻まれていた。



《世界を終わらせなかった者へ》



誰が作ったのか。


正式記録は残っていない。



だが。



世界中から、

人が訪れていた。



帝国兵。


神聖国の巡礼者。


海洋連邦の船乗り。


シオンの旅人。



皆。



何かを感じていた。



世界は、

一度終わりかけた。



そして。



誰かが、

止めた。



その事実だけを。



アーカディア。



崩壊しかけた空中都市は、

完全復旧していた。



市場には人が戻り。


子供達が笑い。


飛行艇が空を走る。



いつも通り。



人類は、

また生きている。



争いもある。



国家間摩擦。


資源問題。


小競り合い。



何も変わっていない。



だが。



少しだけ。



本当に少しだけ。



世界は、

前より優しくなっていた。



理由を説明できる人間は、

誰もいない。



それでも。



人々は、

空を見上げるようになった。



星を見るようになった。



そして。



“世界が続いていること”を、

少しだけ大事にするようになった。



アーカディア中央区。


空中庭園。



レンカは、

手すりへ寄りかかっていた。



風が吹く。



夜空。


星。



綺麗だった。



「また来てるんですか」



後ろから声。



ヤクモ。



相変わらず、

酒瓶を持っている。



レンカは、

少し笑った。



「筆頭こそ」



「習慣みたいなもんだよ」



ヤクモは、

隣へ座る。



昔と同じ場所。



でも。



決定的に違う。



ゼロがいない。



レンカが、

静かに聞く。



「……寂しいですか」



ヤクモは、

少し黙った。



そして。



「まぁねぇ」



小さく笑う。



「腐れ縁だったし」



軽い言い方。



でも。



その目だけ、

少し遠かった。



レンカは、

空を見る。



「ゼロって、

最後……

幸せだったと思いますか」



長い沈黙。



ヤクモは、

星を見る。



本当に長い時間を、

見送ってきた目で。



やがて。



「どうだろうね」



小さく笑う。



「でもまぁ」



そこで。



ヤクモが、

ほんの少しだけ柔らかく笑った。



「最後は、

ちゃんと人間っぽかったよ」



風が吹く。



星が流れる。



レンカは、

何故か泣きそうになった。



世界は続く。



また争う。


また間違える。



それでも。



誰かが笑う。


誰かが未来を信じる。



そして。



その全部を。



きっと。



どこかで、

ゼロは見ている。



そんな気がした。



夜空の向こう。



無数の星が、

静かに瞬いていた。



――完――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ