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28 迎撃

稼働機がやって来る通路の角まで大体10m程度。有効射程といった所だろう。試射で射程は把握している。


「一発入れます」


片膝をついて、肩に担いだ魔法を通路の角に向ける。簡易ゴーグルの狭い視界だが、見るのは通路だけだ。


「狙いはわかってるな」

「もちろん」


まだ、足音は近づいている段階で、魔砲アプリを起動させる。当然、まだ稼働機は通路に姿を現してはいない。

オレの撃った光弾は狙い通り、通路の角の天井にぶち当たる。

大きな音ともに天井の一部が吹き飛び、破片が落ちて大きな音を立てる。


「どうです?」

「おう。足止めとしては十分だ」


ゴーグルを上げつつ光弾でぼやけた視界を、目をつぶって回復させながら、状況をハガロスに聞く。悪くない返事のようだ。

天井を破壊して破片を落とす。その理由は、文字通り足止めだ。

二足歩行タイプの稼働機は、悪い足場に弱い。階段の上り下りや、歩いたり走ったりすることはできても、バランスを調整しながら悪路を移動するような、微妙な調整ができるほど高性能ではないからだ。

その為に、より悪路に対応できる多脚タイプや、車輪タイプがあるのだが、今回のような整備された施設では、二足歩行タイプの稼働機が配備される。

その為に、足場を悪くすることには意味がある。


規則正しく向かってきた稼働機の足音が、にわかに乱れ始める。同時に、それは稼働機が通路に到着したことを意味していた。


「さあ、こいや!」


通路に、ハガロスの声が響いた。




さて、さっきから音だのなんだのと説明しているが、理由がある。

失敗した。

トリガーを引いて魔砲を発射した後、目をそらすべきだった。つい直視してしまった。


オレの簡易ゴーグルは、細いスリットを入れた目隠しだ。これは、光は直進するという科学知識から、細いスリットにより正面以外からの光が目に入ることを防いでいる。

つまり、真正面から発射した光弾を見たために、制限されていたとはいっても、光が目に入ったのだ。

試射の時にわかっていたのだが、実戦できれいさっぱり忘れていた。


にじむ視界が何とかおさまると、ハガロスの活躍が見て取れる。


オレの目が回復するまでの短い時間で、すでに二体目の稼働機にとどめを刺しているところだ。地面に転がった稼働機の胸部に、手に持った武器の先端を当てている。

ハガロスが使っているのはマテリアル武器だ。形はロッドに似ている。50㎝ほどの金属の棒状のもので、柄のように、小型のマテリアルが装着されている。

その先端を稼働機に押し当てると、マテリアルを動かしたのだろう。ピチュンという鋭い音がする。

押し当てたロッドをどけると、そこに5㎝ほどの穴が開いている。

どんな効果かはわからないが、床まで穴が開いているあたり、貫通力に特化した効果があるのだろう。

稼働機はそれで動かなくなる。基盤部分が破壊されたのだろう。どこに基盤があるかわからなければできない芸当だ。


そうやって稼働機を倒しながら、ハガロスは奇妙な行動をとっていた。壁に盾をぶつけているのだ。みると、壁には4本足の虫のような小さな稼働機が数体。カサカサと動いていた。


「バケツ頭。目は治ったか」

「なんとか」


まだ、少し視界はかすんでいるが、行動するのに問題はない。


「ワスプをつぶしてくれ。こっちは次の稼働機が来る」

「ワスプ?」

「この小さいのだ。武器はない。だが、どんどん救援をよぶぞ」


とりあえず、ハガロスの言葉通りに、近くにいる直径数十センチのワスプに銃底(砲底?)で叩き潰す。

クシャリと軽い音がして、あっさりと動きを止める。

次の一匹を踏みつけると、同じように壊れる。この小さな稼働機は足が細すぎて、小さな衝撃でも壊れてしまうようだ。壊した破片を少しでも邪魔になるように、稼働機のやって来る角へと蹴り飛ばす。

しかし、見ると、その通路の方からさらに三体のワスプが壁や天井を這ってやって来る。


「どんどん来るな」

「そういう稼働機だからな」


オレのつぶやきに、稼働機に盾を叩き込みながらハガロスが答えた。




オレが3体目のワスプを潰したあたりで、後ろからジーグの声が響く。


「ハガロス。準備できたぞ」

「よし。バケツ頭。先に下がれ」

「魔法の準備はできている。まとめてくれ」


オレの言葉に、ハガロスの口髭が持ち上がる。そのままテーブルのような大きな盾を横にして通路をふさぐようにして突進する。

戦闘の稼働機が盾にぶつかるが、ハガロスは気にすることなく前へ。


「ぬおおおおおお!!」


ダッシュの突進力とドワーフの膂力で、稼働機を押すと、そのままブルドーザーのように二体目三体目の稼働機を巻き込んで進む。

そして、4体目でハガロスの突進が止まる。


「いくぞ!」

「ハイホー!」


ハガロスの合図とともに、オレは床に伏せる。

ワンテンポ遅れて、ハガロスが後ろに跳ぶ。テーブルのような盾が、伏せたおれの頭の上を越えていく。

そして、同時に床に伏せて魔砲を構えたオレの射線が開いた。

当たり前だが魔砲の不安定な軌道は、相手との距離が短くなればなるほど小さくなる。さらに、相手は複数体がまとまって不安定な大勢だ。

破壊力抜群の魔砲の格好の的である。

ためらう必要もなく魔法アプリを起動させる。


「ハイホー!!」


ドゴーーーーン!!


轟音と共に吹っ飛ぶ稼働機。今回は、うまく目を閉じてそらせたが、それでもドワーフの集光能力は高すぎる。しかも、今回はハガロスとのタイミングを合わせたために、視界を遮る簡易ゴーグルはつけてない。

目を抑えながら起き上がり、ジーグのいる扉の方へと進む。


「ほれいくぞ。今のであらかた片づいたが、すぐに次がくる」


視界の悪いオレの背中を守りつつ、ハラガルがオレの背中を押す。

にじむ視界の中で、なんとか進むオレに、ジーグが扉を開けて迎えてくれた。

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