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29 正規品の利

オレ達が部屋に飛び込むと、ジーグが扉の横に用意したバリケードを扉の前に置いていく。


「上出来上出来」


壊れた扉の向こうの状況をみながら、ジークは上機嫌に扉を封鎖する。様々な荷物を積み重ねた簡易バリケードだ。とはいえ、いつまでも保つような立派なものではない。


「急いで補強を…」

「大丈夫さ。あいつらは警備用の稼働機だ。守るべき施設を破壊するようには作られていない。そういった動きをする稼働機が出るのは、警備用が必要なくなってからだ」


そういって簡易バリケードを築き終えると、ポケットから小型マテリアルを取り出して起動させる。


「じゃあ、オレたちは必要なものを探させてもらう。そっちも、金目のものを漁っていいぞ」

「ガラハドとドリスは?」


この倉庫にいるのはオレ達3人だけだ。二人の姿はない。


「裏口に向かわせた。退路の確保さ。荷物を抱えて稼働機に封鎖された坑道を抜けたくはないだろ?稼働機が来たら知らせるように伝えてある」


たしかに、ポーンタイプの一体や二体なら二人だけでも対処できるだろう。そして、オレたちのチームで遺物を漁る目があるのはオレだけだ。適材適所といえるだろう。


「安心しろ。儲けは均等に配分だ。いきなり、独り占めとか、歩合制だとか言うつもりはないよ」


ジーグの言葉に、軽く肩をすくめて見せる。こっちはまだまだ金が必要であることも見抜かれているようだ。


「ボヤボヤしてないで、手早く漁れ。見張りがいるとはいえ、稼働機が迂回してくるまで時間は、そんなにかからないぞ」

「わかっているよ。ほらセージ。いいモノ見つけて来い」

「へーい」


ハガロスの言葉に返事をしてジーグ達から離れる。

倉庫の中はいくつもの棚が並んでおり、そこには粘土製の箱に覆われた部品が山と置かれている。

はぎ取ったパーツや、ジャンク品ではなく、正規品である。それだけで三倍近い値段に跳ね上がる貴重品だ。

そこから金目のものを調べる。基本的には稼働機の中枢基盤が収まった胸部部分が最も高価だ。だが、同時に大きくかさばる部分でもある。

消耗品で需要の高い腰回りや関節部分。もしくは、パーツ交換の互換性が高い腕部や、移動のための脚部なども、売りさばきやすいという意味ではありだろう。

が、最終的に言わせてもらえれば…


「無難に頭部だな」


ポーンタイプの頭部パーツには、小型のマテリアルが内蔵している。最悪、マテリアルとして売却する事も可能だ。とはいえ、バリエーションが多くなく、需要という意味ではそれほど高くない。中に入れるアプリで多様性を持たせているからだ。

とりあえず、棚にある種類を何個か重ねてロープで縛り、ズタ袋へ。

ある程度入れたところで、他の小さなパーツを放り込んで隙間を埋めると、ジーグのところに戻る。

二人も回収は終わらせたようだ。ジーグも目的の物は見つけられたようで、ご機嫌に大きな箱を背負っている。

オレが戻ってきたのを見て、笑みを浮かべて手を振る。


「よしよし。回収はできたな。こういう時は思い切りがモノを言うんだ。時間をかけるのが一番悪い。どんな品でも、そこそこの金にはなるからな」

「ゴミを拾ってもらっても困るんだがな。前の時みたいに」

「うるへ~」


そんなジーグに突っ込みを入れるハガロスも、大きな盾にいくつもの箱を括り着けて背負っている。その盾は簡易背負子か?


「よし。セージ。この区画の外まで移動する。魔砲の残弾はあるか?」

「ああ、後二発だ。」

「十分だ。ハガロスとお前が最後尾だ。稼働機を見たらとりあえず撃て。壁や天井に当たれば十分だ」


なるほど。二足歩行が悪路を苦手とするなら、壁や天井を破壊して移動速度を落とすだけで、十分足止めになるわけだ。


倉庫の裏口を開けると、坑道の先の分かれ道に、破壊された稼働機と、ガラハドとドリスがいる。まだ余裕があるのだろう。こちらを見ると二人が手を振る。


「よし。帰るまで気を抜くんじゃねぇぞ」


ジーグの明るい声と共に3人は荷物を抱えて走り出した。




カザル=ボーダーに戻って2日後。

帰還して一日休み、次の日はジャンク屋や修理屋を巡って戦利品を売りつける。


「…金貨67枚と銀貨33枚」


もう銀貨が端数です。なんだこの生活?わずか三か月で経済観念が吹っ飛んでいく。一応、もうけはチームで分けるのだが、それでも金貨30枚。

こっちの経費といえば、3人分の武具の補修で銀貨数十枚。食料品や消耗品を入れても金貨一枚程度だろう。

倍々ゲームで収入が増えていく…


「おいおい。この程度で目を回していたら、トレジャーハンターなんてやってられないぞ」

「大規模探索とかに出たら、この10倍は稼げるからな」

「大規模探索?」


ジーグ達おなじみの酒場で、分配兼ささやかな成功祝いをしながら話を聞く。


「オレ達トレジャーハンターの数はそう多くない。1チームに10人もいれば大所帯で、そんなチームは上を探索するような【金階級】のチームだ。【銀階級】は大体が2~5人。その数では、今回のような遺跡を全部探索するのは無理だ」


【銀階級】のトレジャーハンターは基本的に少人数でチームを組んでいる。理由としては、狭い坑道を移動する為だろう。大人数で戦う利が少ない上、人数が多いと敵に察知されやすい。騎士団のように相手を倒すのが目的ならそれでもいいのだろうが、遺跡を探索するというトレジャーハンターの目的からは外れる。

必要な人員を稼働機である程度まかなえる事も理由の一つだろう。


「で、オレ達は、そういった大規模な遺跡を漁る場合は、同業者の力を借りる。5チームも集めれば20人近くなる。さらに各チームの稼働機を入れれば、複数のルークタイプでも十分対応できるわけだ」

「で、その人数で防衛設備を破壊してから、しっかり遺跡を漁るのさ」

「つまりだ。セージ。お前たちが早く一人前になれば、オレたちのこのもうけ話にも加われる。オレ達も手を借りる同業者が増える。今回の話もそういう意味があるわけよ」

「10倍稼ぐための準備をしているとみれば、今回のもうけを折半する程度、すぐに元は取れるのさ」

「おっと、お前たちが見つけた大規模遺跡の時も、ちゃんと声をかけてくれよ」


そういうと、嬉しそうに俺たちの持つカップに自分のカップをぶつけると、一気にのどに流し込む。

なるほど、とりあえずは同業者として認めてくれたという事だろう。

同時に、オレ達ではまだまだ足りないという事だ。


稼働機。マテリアル武器。魔砲。アプリ。


だが、とりあえず一息入れるだけの収入は手に入った。

今回の収入で、オレは一つの野望を果たせるのだから…


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