25 共同探索
カザル=ボーダーの外で待ち合わせて合流する。
前回の金で、ガラハドとドリスは完全武装だ。ガラハドは既製品の鉄の盾に鎖帷子。さら部鉄製の胴鎧。ドリスは少し軽装だが鎖帷子に胸当て。
少なくとも、カザル=ボーダーの一般兵と比べてもそん色のない武装となっている。
それに対し、ジークやハガロスはさらに数段高い装備をしている。
一枚の鎧ではなく、複数のパーツを組み合わせ動きやすくしたオーダーメイドの鎧だ。さらにハガロスは大きな方形の盾。テーブルくらいあるような大きさと厚さの盾を持っている。
おれ自身は基本的に変わっていない。鉄の胸当てを追加購入したがそれだけだ。正直”バケツ頭”返上のために、鉄の兜を購入しようとしたが、重い上に視界が悪くなるのであきらめた。一応、バケツに鉄板を打ち付けて防御力を上げている。
何よりも重要な変化は背中に背負った魔砲銃だ。
あの後、町の外で試射をして使い方は確認している。
ワキに抱える事ができない重量になっていたので、使う時バズーカのように肩に抱える事になりそうだ。本当に個人携帯用大砲だ。
で、試射した感想。
うん。ファンタジー甘く見ていたわ。
いままで光弾光弾って言っていたけど、普通に打つとまっすぐ飛ばない。そりゃ、物理じゃないエネルギーなんだから、砲身を通ることで慣性が付いて一方向に飛ぶという”物理”法則が効くわけがない。
試しに照準装置を外して撃ってみたら『魔球みたいなカーブ』を描いて横の壁に当たった。いや、もう笑ったね。
しかも威力上がっているもんだから、盛大にえぐれるし。下手すりゃ、崩落の危機だな。
ジャードの親父さんにお礼言っておかないと、追加装置を知らなかったら、まともに魔砲を使えなかったわ。
とはいえ、照準装置につけても正確にまっすぐ飛ぶわけではない。一応、方向性が付く程度だ。精密射撃は難しいだろう。ポーンクラスの稼働機に当てるには10m程度まで近づく必要がある。それ以上になると、まっすぐ狙ったら外れるだろう。10mでも、体の中心を狙ってどこかに当たるという程度の命中精度だ。
ちなみに、撃てば光がオレの目をくらませる為に、弾道補正も無理である。
その分、かなりの確率で相手を吹き飛ばせるわけだが、本当に威力だけだな。魔砲って。
「まあ、基本的な事からだ。遺跡までの道は、複数用意する」
カザル=ボーダーを出て歩きながらジーグがはなすのはコド=ハラクシャス遺跡群への道の事だ。
正直、オレ達みたいな新参者に教えていいのかと思ったが、ジーグは気にせず話していく。
「一本だけの道なんてどうなるかわからない。崩落したり、凶悪な怪物が住みついたら?新しい道を探すのは構わないが、その先はまた見知らぬ道になっちまう。未知の坑道を進む厄介さは知っているな?」
オレがうなずくと、ジーグも笑みを浮かべつつ言葉を続ける。
「これが向かう場合ならまだいい。街に帰ればいいだけだからな。だが、探索を終えた帰り道だったら?疲れ果て、重い荷物を抱えていたら?だから、同じ方向へ進む幾本の道を確保する。隣の道。同じ方向へ進む道。3本か4本確保すれば、迂回するときもどれかの道を探せばいい。危険は最小限で済む。いいか、重要なのは退路の確保だ」
なれたように道を進んでいく。途中、危険な痕跡を見つけて迂回したりしたが、それでもオレ達より圧倒的に短い時間で遺跡群へと到着。片道一日程度である。
ジーグに言わせると、今日はまだ順調だったからこの時間で済んだらしい。そうそう、順調には済まないのがカザル=ボーダーの外の世界との事。注意が必要だ。
「さて、軽く今回の遺跡について話しておくぞ」
すでに、地面は人工の物に変わり、コド=ハラクシャス遺跡の中だ。ジーグ達は迷うことなく進みながら、オレたちに説明する。
今回探索する遺跡は何件もの販売所が並ぶ通りで、物を売り買いするのが専門の場所だ。作ったり、寝泊りする場所ではないらしい。
現代でいうところのショッピングモールのようなものなのだろう。
価値があるものをまとめて置いている為、警備も厳重。メインの通りにはルークタイプが、各店舗にもポーンタイプの稼働機が配置されているらしい。さらには、各店舗と通りの稼働機は連動しており、下手をするとその地区すべての稼働機が襲いかかってくることになる。
「そんなわけで、この区画を歩くためのマテリアルを用意している。これで、表通りの稼働機は無視できる。余計なことはするなよ。そこら辺の落ちている物を拾っただけで、あっさり効果をなくすような能力しかないんだからな」
「ああ、そうだな落ちているコイン拾って追いかけられたこともあるからな」
「うるへ~。ゴミかと思ったんだよ」
「金貨の段階でありえんだろ…」
二人の掛け合いを見つつ。考える。要するに、客として入る事はできるが、スタッフルームに入る事はできない。そこに突入すれば、防衛用の稼働機と交戦する可能性が高い。
そこで、オレたちが敵を抑える必要があるわけだ。
「そんなわけで、オレ達が狙うのは店頭に並んだ品ではなく、その奥にある倉庫に確保されているパーツだ。店頭の品を漁っていたら、すぐにそこら中の稼働機が集まってバラバラにされちまう」
「奥を漁ったとして、帰りはどうするんだ?」
「店側から帰る事はできない。だが、こういった大型商業区画には荷物搬入用の裏口が設置されえている。そもそも、倉庫からもそちらの方が近い。必要なものをかっさらったら、そこからおさらばだ」
「なら、なんでそっちから遺跡に入らないんだ。倉庫も近いのだろう?」
ガラハドが首をかしげて聞く。
「連動した施設の稼働機は、その区画でしか襲ってこない。区画を出れば、そこまで追ってこないし追ってきたとしても数が極端に減る。入り口が近い必要はないが、出口は近い方がいいのさ。要するに、必要なものを手早く漁ってこの区画を出るまでが勝負なわけだ。欲はかくなよ。命があってこそだ」
最後の言葉をやけに重々しく言うジーグにオレ達はうなずいた。




