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21 宴会と拠点(仮)

さて、前にも話したが”鉄兜”リース率いる騎士団は、下級騎士団の中では精鋭といってもいい。

しかし、その構成はほぼすべてが奴隷階級であり、基本は孤児出身者だ。

つまり、食うや食わずの孤児院で、他に選択肢もなく騎士団に入った者達だ。

騎士団に入って食えるようになっても、基本は歩合制。危険と隣り合わせで、腹に詰め込むだけ。


そこに金貨10枚超の臨時収入である。


中央の発熱材で焼かれる一頭の土竜もぐらの丸焼き。ちなみに、炎で炙るわけではないので、開きみたいにして表裏表裏で焼いて、ナイフでこそげ落として食べるのが主流だ。

さらに、オレが前回持ってきた樽酒。さすがに、シダ酒ではなく、エールのような安いカビ酒だが、その樽が5倍あれば話は別だ。

さすが体育会系。質より量か。


まあ、そんな感じに酒と肉がそろった以上、そこに始まるのは宴会だ。

体育会系の飲み会のようだ。まあ、体育会系である事は間違いないな。




「はあ!?15だ!?」

「ああん。なんだよ」

「髭の生え揃わんガキだガキだとは思っていたが、本当にガキだったとはな」


なで繰り回すように、あたまを撫でつつ短い顎ヒゲをツンツン引っ張る。

超巨大なお世話である。

とはいえ、本当に孤児院を出てから、まだ2ヶ月も立っていない。正真正銘15歳のガキだ。そういう意味では、とんでもない世界である。


「あたしも焼きが回ったね15のガキから金をむしり取っちまうとは」


愚痴りながら撫でる手を、うっとおしいので払いのけて、エールを飲みながら肉をかじる。


「別に、こっちにだって利益はあったからな」

「ほう」

「あの二人を銀階級にできた。これであの二人も市民階級だ」


見れば、ガラハドとドリスは、騎士団員に囲まれている。

確か、ガラハドも一時期、ここの騎士団にお世話になっていたはずだ。団員とも面識はあるのだろう。

ドリスは騎士団の女性陣に囲まれ、何やら話をしている。女性陣がドリスに質問し、その答えを聞くたびに、女性陣から黄色い歓声が上がる。

そしてそのたびに、ガラハドが他の団員からボコボコに殴られている。

リア充である故の業というものだ。温かい目で見守って(見捨てて)やろう。


「しかし、あんな危なっかしい戦い方をするのは感心しない」

「稼働機はちゃんと倒したぞ」


それに、あの二人の戦い方は堅実なものだった。実際に、ケガらしいケガをしたのはオレだけだ。あんただって「研究している」と褒めていたはずだ。


「ああ、あの二人はな。問題はお前だ」


鉄兜の下から鋭い目がこちらを見る。

その意味は分かっている。正直、オレは戦闘で役に立たない。足手まといといってもいい。あの二人は従軍経験があり、戦いの日々を数年過ごしている。

だが、オレにはその期間はない。孤児院時代も、他の孤児が騎士団入団の為に戦い方を学ぶ中、孤児院を抜け出しては【鉄屑漁り】を続けていた。

その為のマテリアル。そのための魔砲だ。


「『斧を持って強くなったと思うのは間違いだ』ドワーフの格言だよ。相手も斧を持てば、そいつは弱いままだからな。真の戦士というのは腕を磨くものだ」

「…」

「「そんな時間がない」というのは言い訳だ。それはお前だってわかっているだろう」


リースの言っている事はわかる。確かに、オレは騎士団ではなくトレジャーハンターの道を選んだ。その為に、オレは一人で戦う術というのを持っていない。一発限りの魔砲。使いどころの限られるマテリアル。

切り札ではあっても決定打ではない。

騎士団に入り腕を磨く。数年騎士団で生き延びればガラハドのように戦う事ができる。そうしないで、トレジャーハンターになったのは、もちろんオレのエゴだ。

騎士団は確かに危険な仕事だ。だが、未熟なトレジャーハンターとしてやっていく事と比べて、それほど危険だろうか?

時間をかければ、オレの苦労はもっと少なくてすんだ。


「そのための準備はしているさ」

「ほう?」

「魔砲を強化する。そして、その腕を磨く。そのために、二人を銀階級にした。二人が市民階級になって一緒になれば、家を借りれる。パーツを回収できるし、魔砲を強化できる」


そうなれば、一発限りではなくなる。使いどころ使い勝手が悪いといっても、魔砲は強力な武器だ。さらに、今回の金でマテリアルを入手すれば、さらに効率は変わってくる。


宴会では再び黄色い歓声が上がる。

それに合わせて、ボコボコにされたガラハドが救いを求めるようにこちらを見るが、サムズアップで答えて無視する。

兄弟。安心して通報されろ。


ほろ酔い気分で土竜肉をほおばっていると、


「決めた!」


グイッと、首に腕を回され引き寄せられる。

柔らかい感触を感じないでもないが、首に回された鉄の様な腕の痛みの方が強い。

見れば、カビ酒を飲みながら上機嫌のリースが、笑いながら鉄兜のマビサシの向こうで笑っている。


「お前、ここを使え」

「はあ?」

「拠点がいるんだろ?見ての通りココは街のはずれだ。部屋を作る場所は開いている」

「なんでだよ!?」

「お前。パーツとやらを回収したらどうするんだ?」

「は?」

「ここなら、いつも誰かがいる。盗みに入るようなバカはいない」


武器を持った荒くれ集団の騎士団相手に盗みを働くバカはさすがにいない。騎士団も全員で出撃するわけではない、けが人や待機組がいる。そうでなくても住み込みの奴隷階級の団員がたむろしている場所だ。いつも誰かがいる。


「…何を狙っている?」


こいつが、善意で何かするとは思えない。


「くっくっく。安心しろ。部屋代は格安にしてやる」

「それが狙いか!?」

「うちの騎士団も、小粒でも後援者ってのが欲しいのよ」


たかる気か!?冗談じゃない。

何とか逃げ出そうとするが、万力のようなリースの腕はびくともしない。


「それに、ここなら戦う経験ってのに事欠かんぞ。お前みたいな奴でもな。そぉれ!」


突然の浮遊感。それが、片腕一本でオレを投げ飛ばしたリースの仕業だ。距離はそれほどでもないが、ゴロゴロと転がって宴会場の真ん中にある酒樽にぶつかって止まる。


「クソッ。何しやがる」


上座近くの特等席から、宴会場の中央まで投げ飛ばされて、悪態と付きながら起き上がる。


ガシッ。


誰かに肩をつかまれた。ゴツイ手だ。

振り返ると、とてもよく見知った顔が見えた。

多くの人から祝福(善意の解釈)を受けたのであろう。その顔は多くの洗礼(比喩表現)を受けている。


「よ、よう兄弟。無事だったか」

「ああ、兄弟。お前がオレの姿を見て笑っていたのは知っているよ」

「いや、待て兄弟。それは誤解だ」

「ああ、そうだな兄弟。だ・が、逃がさん!」


そして、ピンチのオレを地獄に叩き込むリース声が、宴会場中に響き渡る。


「野郎ども!今回の立役者のガキどもだ!盛大に歓迎してやんな!!」

「ハイホーハイホーハイホー!」


その理論はおかしい。

もちろん。オレの言葉が聞き入れられることもなく、嬉々として拳を握りしめたドワーフ達が、こちらに殺到してきた。


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