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18 新しいマテリアルと施設の稼働機

オレがマテリアルに入れたアプリはオーソドックスなものだ。


『マテリアル探知』アプリ


範囲内のマテリアルを調べるアプリだ。これがあれば、稼働しているマテリアルの有無。また、それを原動力にした稼働機の有無がわかる。

問題は、こいつが安物という事だ。


・半径10m程度

・マテリアルの有無がわかるだけ

・オレの持っているマテリアルにも反応する


しょせん安物である。とりあえず、自分の魔砲銃に取り付けていつでも打てるようにしているマテリアルをガラハドに渡して離れてもらう。

10mほど離れてもらわないと一緒に感知してしまう。


扉の前まで移動して、片膝をつくと、ポケットからマテリアルを取り出して起動。

マテリアルに表示された文字を見る。


「なんて書いてあるんだ?」


頭の上に肘が載せられる。

見ると、鉄兜をかぶった騎士団長が、面白そうにオレの手に持っているマテリアルを覗き込んでいる。


「『反応なし』だ。少なくとも、入った瞬間に、稼働機に奇襲をかけられるような事はなさそうだ」


肘をどかして立ち上がり、スコップを引き抜くと、早速カギを壊しにかかった。




扉を開けると、狭い空間だ。正面に受付と思われる長い机が置かれている。もちろん、無人だ。ほこりをかぶっており、使われた形跡はない。

机の上に置かれた奇妙なオブジェだけが、使われていた形跡を残している。


しかし、このオブジェ。結構見かけるのだが、どんな意味があるのだろう。豊かなヒゲを蓄えた逞しいドワーフの鎧姿の男が、両手にハンマーをもって掲げ、大口を上げているポーズ。

…わからん。なぜ、ドワーフ男の頬を赤く塗っているんだ?福助みたいなものか?


受付の部屋の片側には、3つの扉が並んでおり、入口に近い方を開けてみると、中は応接室か会議室のようだ。大きなテーブルに数脚のイスがある。

原形を保っているものもあり、持ち帰れば金になりそうだが、かさばる重さのわりに、大した額にはなるまい。とりあえず後回しだ。


受付の反対側から奥に続く通路が伸びている。

のぞいてみるとその先にのぼりの階段が見える。会談の手前で通路は横に折れており、この通路も先に伸びているようだ。


入り口付近に魔砲を置き、オレ一人で忍び足をしながら階段の方へ向かう。何かあったら即座にで逃げられるよう用心しながら進み、再びマテリアルの探査アプリを起動。


『反応あり』


改めて階段を見る。階段の一段が広い。これは、稼働機が上り下りする為の配慮だ。上の階に稼働機がおり、降りてくる可能性があるという事。

さらに、遺跡で見つけた鏡の破片を使って、曲がり角の向こう側をのぞく。


いた。

ポーンタイプが二体。廊下の先にある両開きの扉の前に立っている。マテリアル探知に引っかかったのはアレだろう。

とりあえず、そのままゆっくりと戻る。




「二体稼働機がいた。おそらく連動する」


鏡が小さく詳しくは見れなかったが、二足歩行タイプ。それも個人住宅にいるような「立って歩ける」基本性能のみではなく、こういった施設防衛用は、走ったり、体勢を立て直したりと高性能なものが多い。高度なアプリを組み込んで、連携して攻撃する事も可能だ。


「どうする。一気に叩くか?」


同型のポーンタイプと戦ったころに比べて、格段に装備は良くなっている。だが、オレ達は今まで一体の稼働機と戦ったことはあるが、複数の稼働機と戦ったことはない。


「いや、下手に時間をかけると階段の上から援軍が来る可能性がある」


しばし考える。


「おびき寄せよう」


あの時と違って、今回は出し惜しみが不要だ。




階段前の分かれ道に飛び出す。

曲がり角の先の扉には、確認した通り2体の稼働機。オレの存在を感知して頭部のセンサーが赤く光る。

人型のポーンタイプ。前の個人住宅にいたものよりもスリムで、足が太い。左腕が砲塔になっており、右腕が鉄の棒だ。遠近両方に対応したタイプで、さらに機動力も高いのだろう。


飛び出すと同時に、オレは青銅製の手斧を片方の稼働機に投げつける。


ガツン!


刃の部分が辺りは舌が、青銅製と装甲の材質のせいか、突き刺さりはしなかった。ただ、威力はあったらしく、軽くへこんでいる。

オレの攻撃に反応したのか、体を持ち上げるように、待機モードから戦闘モードに移行すると、砲塔をこちらに向ける。

だが、オレだってそれをのんびり待つわけじゃない。投げた手斧が当たったか確認したところで、即座に角に飛び込んでいる。

二発の光弾が角にさく裂し、光がオレの目を焼く。

だが、一目散に駆け戻るオレの後ろでの話だ。ちょっと目がくらんだが、すぐに回復する。

通路の抜けて受付の部屋へ。


ガシャガシャガシャ…


後ろからは、規則だ正しい音が聞こえる。前の人型稼働機よりもタイミングが早い。


(撃つなよ。撃つなよ…)


心の中で、祈るように願いながら走る。

二体いるために、重複する足音を聞きながらわずか10数mの距離を走る。

稼働機が角に到着する時間の方が早いだろう。そのまま追ってくるなら問題ない。角から砲塔で攻撃されたら…

一応、その確率は低い。射程距離が離れれば命中率は下がる。さらに、足音だ。

二足歩行のバランス能力でしかも移動中に射撃を命中させられるほど、精度は高くない。少なくとも、あのタイプの稼働機は射撃特化ではない汎用型だ。

最悪、粘土製の盾を背負って走っている。背中に一発当たった程度では死なないはずだ。


運よくというか、そういう行動プログラムなのか、砲塔での攻撃がくることはなく、オレは受付の部屋まで戻ることができた。

オレが、到着すると同時に、通路の横で待機していたガラハドとドリスが用意していたバリケードを押す。


会議室の机を重ねた簡易的な物だが、二足歩行で、両腕が武装した稼働機では、簡単にはどかせまい。


力技に出やがった。


ポシュンポシュン!


と砲塔からの射撃音とともに、バリケードが大きく傾く。ガラハドとドリスが慌てて抑えるが。簡易的なバリケードはミシミシときしむ。所詮は机か。


ギュガン!ギュルルルル


次にバリケードを突き破ったのは、鉄の棒だ。稼働機の右腕。しかも、ドリルのように回転している。その破壊力を使って、バリケードを破壊するつもりだ。

すぐに二本目もつきだす。


「だが、遅かったな!」


こっちの準備は整った。オレの準備だが。

バリケードにあけた穴。ガラハドのマテリアル武器で、机にあけた20cm四方の穴が一つ。

そこに魔砲銃を突っ込み、マテリアルの起動ボタンを押す。


ドゴーーーン!!

「ハイホー!!」


大威力って歓声を上げたくなりますよね。

オレの魔砲銃からの光の奔流。荒い精度に短い射程。だが、稼働機のコントロールされた魔砲とは違い、その威力だけは、マテリアルの全エネルギーを1発で使い切る為、段違いだ。

きちんとコントロールすればその一発の威力もさらに跳ね上がるんだけどね…


まあ、数秒の光の奔流。

光の収まると、あれだけうるさかった稼働機の音も聞こえなくなっている。バリケードに突っ込んだ魔砲銃を引き抜く。


ゴーグルもどきを引き挙げて振り返ると、ガラハドとドリスがうずくまっていた。


「どうした?」

「目が…」

「目をつぶっておけって言ったろ?」

「言ってねぇよ!」


あれ?そうだったか?


「お前ら…」


後ろで呆れたようにリースが目頭を押さえていた。


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