17 討伐とマテリアル武器
「構え!!」
「ハイホー!ハイホー!ハイホー!」
号令一家、盾を構えた屈強なドワーフが4人。坑道に密集する。お互いがお互いをかばうように並べた盾で、坑道がふさがれる。
「気合を入れろ!」
「ハイホー!」
ズガン!!ベキベキ!!
大きな音ともに、粘土の盾が砕ける音がする。坑道をふさいでいたドワーフが数歩後ろに押されるが、そこで止まる。
「開け!!!!!!」
「ハイホー!」
命令の元、扉が開くように敵を抑えていたドワーフが、後ろに下がって左右にずれる。
ドワーフの盾と、同族の後続に押しつぶされた獣人と、その後ろで挟まれた後続の獣人たちが、支えを失って零れ落ちる。
「行っけぇ!!」
「ハイホォーー!!」
両手斧や戦槌を持ったドワーフが、その空いた隙間から殺到する。倒れこんでいた獣人は容赦なく踏み殺され、後ろからこちらに来ようとした獣人たちは容赦なく粉砕されていった。
「団長。43匹です」
「ふむ。少ないが、こんなものか」
これで少ない方なのか…
こちらの数はオレ達を抜いて12名。うち、3人が斥候に出ていたので、実質戦闘9人。これで43匹仕留めたうえで死者はゼロ。さすがに傷は負ったので、現在治療中だ。
「ん?そりゃ、ここは一段高いが、他でもこんなもんだぞ」
オレの疑問にガラハドが答える。そうか、これが普通なのか。ドワーフの戦闘能力甘く見ていたわ。
「もう少し周辺を片付けて、囲い込んでから壊滅させたかったが、今日の目的は別だからな。まあ、こんなものだろう」
リーフは、そのまま負傷者の状況を確認すると、こっちに向かって顎をしゃくる。
「よし、進むぞ。遺跡までもう少しだ。そこで休憩する」
リーフがこちらを見る。
わかっているよ。そっからはこっちの仕事だ。
リーフの騎士団が止まったのは分かれ道の一角だ。地面は舗装されており、遺跡の一角であることがうかがえる。
しばらく歩くと、目的のドアが見えてくる。洞窟に住居や施設を抱えるドワーフ社会において、門構えは、その規模や権勢を誇る唯一にして絶対のステータスだ。基本的に外観が土に埋もれている以上、いかに門構えを立派にするかが、建物の規模かを知らしめる基準となる。
そういう意味で見ると、片開きの1ドアは一般市民の個人住宅のデフォルトの扉といえるだろう。
そして、二枚扉の両開き。しかも、数段の階段まで作って高台に扉を置くその場所は、まさしく旧時代の会社施設。
まあ、扉の大きさと、この坑道の大きさから考えれば、中小企業だろう。
個人住居ではない。施設への探索。
なし崩し的に始まったような気もするが、行き帰りの安全が確保されるという条件としては悪くない。
施設探索という事で、万全とは言わないができる限りの準備はしている。
オレとドリスは革製のコートを購入。さらに、ドリスは鉄製の小手。ガラハドは鉄製のブーツに、鉄の小手。さらに鉄の兜をかぶっている。
胴鎧と盾は相変わらずの粘土製だ。損傷が激しくなることがわかるので、経費節減である。
ついでに、ガラハドの腰には円形の刃の付いた奇妙な装置がぶら下がっている。
例の稼働機についていた加熱するチェーンソーだ。
切り取られた尾のパーツに即席の取っ手をつけて、簡易的な武器にした。円盤を回転させる機能は本体依存のため作動しないが、加熱した刃で押し切ることはできる。
【マテリアル武器】
ようするにこの世界でいう魔法の武器だ。マテリアルによる追加効果を付与した稼働機は、メジャーな強化方法の一つだ。炎や電撃を纏わせたり、衝撃を集約させて硬い岩盤をも砕いてみたりと多岐にわたる。
ただ、これらの技術に関しても、現代ドワーフは遺失している。現在使用されるマテリアル武器も、オレたちのように旧時代の流用でしかない。
何せ、マテリアル武器の根幹がマテリアルに入っているアプリだからだ。このアプリがなかなかめんどくさい作りになっており、例えば、ガラハドの持つマテリアル武器のアプリは“円盤を加熱する”アプリであって、マテリアルが過熱してそれを円盤に伝絶ちさせているわけではない。つまり、このアプリを別の武器につけても、効果を発揮しない。
だから、これを武器にしようとしたら、加熱させた円盤の熱を武器に伝えて加熱させるという面倒な手順が必要になる。
そして最後が、オレのベルトから伸びた新しい皮紐。
新しいマテリアルと、新しいアプリだ。総計で金貨二枚。前の探索のほぼ半分だ。
前のマテリアルはすでに魔砲に接続して、いつでも撃てるようにしている。
施設への初探索。できる限りの準備はした。
だたし、予算内でである。
「で、監視役で誰が付いてくるんだ?」
足りない準備を数で補う。騎士団の人間なら何人だって大歓迎だ。何せ、取り分は決まっている。多かろうと少なかろうと、払う額は一緒だ。
さあ、どんどん来てくれ。
「あん。そんなのアタシ一人に決まってんだろ」
そういうと、鉄兜のリースはうれしそうに笑う。
「はあ?」
「こんな事に部下を巻き込むわけにはいかないだろう。アタシ一人で十分さ」
「いや、そうじゃない。アンタ騎士団長だろ。遺跡の中で何かあったらどうするんだよ。」
「大丈夫さ。なんせ、アタシは監視役だからね。危険に対処するのはお前たちの仕事だろ」
そういって、楽しそうにこっちを見下ろす。
ああ、この目は全部お見通しって目だ。
追加戦力はナシか。




