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15 魔砲術の強化と拠点を求めて

『エルドアの宿屋』


大通りから離れ、下町にある近い古びた宿屋だ。

もともと奴隷階級だったオレ達からすれば、いつでも部屋が取れて、鍵のかかる丈夫なドアがあり、隣の部屋までの壁が厚い。周りから余計な干渉がないというだけで十分だが、世間一般では、そうでもないらしい。いつも閑散としている。

いつも受付で昼寝をしている奥さんと、部屋の掃除に片付けにと忙しく走り回る旦那の出るドアが経営している。そんな旦那だが、髭の編み込みを見ると結構身分が高いらしい。

宿屋の仕事というだけで、身分が一段上がるからそれでかもしれない。

子供が一人(新婚か?)。生意気な餓鬼だが、たまに母親と同じ格好、同じ顔で寝ていて微笑ましい。まあ、ロリとヒゲオヤジで事案発生。通報確定なんだがな。


そんな安宿だが、素泊まりで一泊銀貨3枚。ただし、ガラハドとドリスがいるので、追加に銀貨2枚の総計銀貨5枚。当然部屋で雑魚寝だ。食費が銀貨2枚に、雑費で銀貨一枚程度。一日の経費が約銀貨8枚。


一人で、布団に横になりながら本をめくる。

前の探索で見つけた本のうち何冊か確保していた。

題名は


『稼働機改造入門 ~あなただけの専用の稼働機~』


『わかりやすい』『図解入り』といった、カラフルなポップが踊っている。この辺は異世界でも一緒なんだな。

読んでわかるのは、なんだか自作パソコンみたいだ。ハードウェアとソフトウェアがあり、様々なパーツを取り付けて、それに専用アプリ(ドライバー?)を導入する。


なるほど、手先が器用で職人気質のドワーフが、いまだに稼働機を自作できないのはその為か。ハードウェアに関して現代のドワーフでも実用レベルに到達している。

問題はソフトウェアだ。

パーツについては様々なカスタマイズができるのだが、アプリに関しては『付属の専用アプリを導入してください』で説明も終わりだ。メーカーが潰れたからサポート終了。業界ごと潰れているので、既存品を使い続けるしかないって理論だ。

それ故に、ジャンク品の需要は尽きることなく、ジャンクの山は増える一方なわけだ。


トレハン組合のホリィお姉さんからの言葉で、いくつか準備が必要となった。

個人住宅跡の探索で、ある程度の余裕ができたら、より危険で価値のある施設の探索が必要となる。

そのために必要なのがチームの強化。

ガラハドとドリスはいい。騎士団に所属し戦う事の出来る二人は、装備を充実させれば十分な働きをするだろう。

問題はオレだ。

こと、戦闘に関してほとんど役に立ってはいない。


マテリアルに関してはまだいい。金で解決できる。

問題はオレの直接的な攻撃力。魔砲術だ。

オレの使う魔砲は、マテリアルのエネルギーを吐き出すだけの原始的な代物だ。制御もできないし、加減も効かない。しかし、それが魔砲術のすべてではない。

稼働機の魔砲術はより効率的、より効果的に、様々なバリエーションが存在する。

同じ原理であってもそれだけの差がある。

そこで、ドワーフ社会の魔砲使いは、一つの方法を編み出した。

稼働機を介在させることで、稼働機と同じレベルで効率的に魔砲を使うという方法だ。


寝っ転がったまま、手に持った本を部屋の隅に放り投げる。


「拠点がいるな」


稼働機を手に入れるとして、稼働機の構造はマテリアルよりも脆弱だ。メンテナンスをしなければ劣化するし、戦闘で負荷をかければより速く壊れるだろう。

それを避けるために、同系の修理用パーツを保管しておく必要がある。ジャンク屋めぐりから、遺跡内で回収した稼働機パーツの確保だ。

今の宿には荷物を預かるサービスはない。そもそも、一泊ごとに代金を払っており、チェックアウト時に荷物は全部持って出ている。余計なものを抱えられる余裕はない。


問題は、オレ達が奴隷出身の孤児であるという立場だ。

ドワーフ社会において、最低の単位は個人ではなく家族だ。孤児であるオレは個人であり、家族を持っていない。

トレジャーハンターとして借りる権利はあっても、不動産を売るかどうか、貸すかどうかは元の持ち主の判断だ。住所不定保証人なしの人間に家を貸す奴はいないという話だ。


手に入れる方法はないではない。一つは金を積む。札びらでほほを殴る方法だ。将来的にそんなことをしてみたいが、現段階では無理だ。

となると、もう一つの方法を進めるしかない。

ガラハドとドリスを結婚させる。二人が結婚すれば、ガラハド一家が出来上がる。不動産の売買も可能になる。そこに、オレという居候が住み着くのは、オレとガラハドとの問題だ。

その為には、二人を【銀階級】にあげて、市民階級に昇格させる必要がある。

市民階級の二人が結婚すれば、晴れて市民の家族となるからだ。問題なく、拠点を確保する事ができる。


ここまでしないと、オレの魔砲術を強化ができないのが残念すぎる。

とはいえ、コド=ハラクシャス遺跡の往復を考えると、オレの魔砲術は、最後の切り札だ。安易に探索で使った結果、遺跡の帰りに襲われて使えませんでは話にならない。

かといってマテリアルは、トレハン組合でも高価買取商品だ。二人の昇格の為には実績として売却するべきだ。

どっかに楽して稼げる遺跡はないものかねぇ。

禁止地域の向こうの遺跡探索も視野に入れて…




え?ガラハドとドリスがどこに行ったかって?

通報されに行ったよ。

せっかくの休日なので、銀貨10枚ほど渡して追い出した。

つまり、ここにいるのはオレ一人!

ヒャッハー。オレ一人の空間。オレだけのプゥ~ライベェ~トタァ~イムだ!


…ロリコンじゃないから寂しくなんかないもん!


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