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13 遺跡群と中型稼働機

遺跡までの距離も道もわかった。往復で3~4日。1週間分の食料があれば何とかなるだろう。

食料の買い出しを行い、ガラハドのケガも癒え、そろそろ本格的に残金が危なくなってきた。

そんなわけで、クド=ハラクシャス遺跡群へと向かう。




「シッ…」


柱の陰に隠れる。

枯れた住宅地をいくつか回り、半日かけて見つけた住宅地で、面倒な相手と遭遇した。




シュイーーーーーン!!


圧倒的な速度で向かってくる物から姿を隠す。

それは、特に止まる事もなく、移動速度を維持したまま道をまっすぐ進んで見えなくなった。時速30km位はでていたか?

中型の稼動機だ。ルークタイプとよばれ、本体の大きさはワンボックスカー程度はある。さらに6本の車輪のついた脚をもち、アメンボのように見えなくもない。問題は分厚い装甲をまとう脚の上に砲塔が並んでいる点だ。もちろん同時発射はお手の物。防御も堅く、機動力も高い。厄介極まりない相手だ。間違いなくオレ達には荷が重い敵だ。

出会ってしまったら、あの速度だ。ドワーフの足では逃げられない。

まあ、体が大きい分、狭い通路に入れない弊害はある。どうやって逃げ込むかがネックだな。


「行ったな」

「よし、ここを漁るぞ」

「…大丈夫なのか?」


理由はある。あの稼動機いるという事は、このあたりはまだ漁られていない可能性が高い。そして、脅威となる稼働機はあの巨体だ。個人住宅の入り口から入るのは物理的に不可能だ。枝道から家に入れれば脅威にはならない。


「とりあえず、あの稼動機が次にどれ位かけてここに来るかを調べる。それからだ」




数時間後に同じと思われる稼働機が変わらぬ速度で走り抜けていった。

その姿が見えなくなってから、大通りに出て最初の枝道から個人住宅に入る。


案の定、中は荒らされていないようだ。玄関が廊下になっているわけではなく、そのまま広い広間になっており、その一角が玄関という間取りのようだ。壁は刺繍やタペストリーで飾られている。部屋の奥には二階への階段。さらに、別室に続く通路があるようだ。広間の中央にあるのはゴミの山。テーブルの残骸か何かだろう。


周囲を警戒しつつ中に入ろうとした所で、天井から四角い箱が落ちてきた。

落盤ではない。それは空中で変形すると、箱の両脇から6本の虫のような足が生える。さらに、地上に降りたところで、上の部分が解かれる様に一本のアームに代わる。

さらに、箱の下から二本の鉄の棒のようなものが飛び出てくる。穴虫のようにあれで相手をつかむのだろう。

見方を変えると、サソリのようだ。


ヒュウン!!


稼働機のアーム部分が大きく横に振るわれる。

それは、伸縮性を持っていたのか、予想以上に伸びてこちらに襲いかかる。ほんとに尻尾だなあれは。

飛びのいたガラハドに押されるように後ろに下がる。

見ると、稼働機の尾の先端には鋭い円盤が付いており、当たれば痛いじゃすまないだろう。


相手は一機、場所は広い部屋だ。ドリスが後ろに回り込もうとする。

しかし、カサカサと6本の脚で左右に小刻みに移動して、こちらをけん制すると、尻尾を伸ばして攻撃してくる。


「おっと!」


しかし、何度目かの攻撃はガラハドの掲げた盾に突き刺さった。


「フンッ!」


素早くガラハドは、突き刺さった尾を片手でつかんで引っ張る。稼働機の方も、多脚の足を床にさして対抗する。


「ぬうう…」


力比べだ。ガラハドの肩の筋肉が盛り上がり、喰いしばった歯の間から荒い息が漏れる。だが、それでも稼働機の足はしっかりと床に食い込んで離れない。


「やああ!!」


その隙に駆け付けたドリスが、斧で稼働機の伸びた尾を叩き切る。尾は伸縮性を持たせたために、伸びた際に装甲に隙間ができていた。そこを狙って振り下ろしたドリスの斧が、一撃で稼働機の主武器を切り離す。


「ドベッ!?」

「グヘ!」


力を込めていたガラハドが、突然抵抗を亡くしたせいで尻餅をつく。

オレを巻き込んで。

違うんだ、ガラハドの力比べに手を貸そうと近づいていただけなんだ。


言い訳はともかく、こちらの被害以上に向こうの方が被害は甚大だ。

最大の武器を失った稼働機は、カサカサ動いているが、足を狙う向こうの攻撃にさえ注意すればいい話である。3人で周りを囲んで叩く。

簡単な作業だ。


…あれ?オレ今回何もしてなくないか?

いや、オレの仕事はこれからだ。そう思う事にしよう。




「今回は楽だったな」

「…それはどうかな?」


オレの答えにいぶかしむガラハド。

ガラハドの盾に刺さったままの稼働機の尾を外す。円盤状の部分を手で回すとガリガリと擦れる嫌な音を立てながらかすかに回転する。

この円盤はただの鋭い刃ではない。チェーンソーンおように回転して切り裂くためのものだ。

さらに、円盤の付け根。半分むき出しの小型マテリアルを外す。表面をなぞってアプリを起動させ、そのまま元の位置にはめ込むと、マテリアルの稼働音とともに、シューという音ともに円盤が赤く変色する。円盤を地面に押し付けると、驚くほど軽い抵抗で、地面に刃がもぐりこむ。そして、何かが焦げるようなにおいが漂う。

目をむくガラハド。

灼熱化したチェーンソー。この稼働機の必殺の武器といえただろう。もし、きちんと稼働していたら、ガラハドも「楽だった」などといは言えなかったはずだ。

長い年月が、この稼働機の精密すぎる武器を劣化させたのだ。


「まあ、何事も悪い事ばかりではないという事さ」


マテリアルを外して、稼働機の解体に入る。


「どうせ、巡回する稼働機がいなくなってから戻るんだ。ゆっくり調べていいぞ」


前回と違って、今回の探索は時間制限はない。きっちり漁ることができる。

どっかと腰を下ろして稼働機の解体を始めた。




「…なんでいるんだ?」

「さあ?」


回収を終え、さあ帰ろうとドアを開けた先にルークタイプの稼働機が陣取っている。

他に出口はない。


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