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10 アプリ導入とトレハンの問題点

ギリギリまで、高級宿泊施設を堪能した後チェックアウト。

その後、タペストリーを売却し、銀貨数十枚を手に入れる。奴隷のドリスでは買いたたかれる可能性があるために、オレ達3人での売却と買い出しだ。

前にも話したが、タペストリーや刺繍は女性の仕事だ。タペストリー売買の店にいるのは、当然そういった品を求める人たち。つまりドワーフの女性しかいない。

正直いたたまれません。ドリスさん。値段交渉はほどほどで切り上げてくれるとうれしいのですが…


前回の戦利品を売却し終わったところで、次の準備の為に買い出しに向かう。

さすがに、ドリスもガラハドも余計な物を購入したいとは言わなかった。

まあ、ドリスが洋服店で一時間ほど動かなかったり。

ガラハドが武具店で1時間ほど時間をつぶし。

オレがマテリアルギルドで数時間ほど時間を使った程度だ。


二人に引きずられるようにマテリアルギルドから出る。


マテリアルにアプリを入れるには、大型マテリアルを必要とする。その為、トレハン組合の隣にあるマテリアルギルドで代金を支払って導入するしかない。


さて、アプリの導入に関してだが、独占しているだけあって様々なアプリをマテリアルギルドは保持している。値段は銀貨数十枚から金貨数枚程度。

カタログを見ているだけでも(オレは)楽しいのだが、マテリアルギルドに保管できるアプリの数に限りがある為、汎用的なものが多い。

オレの持っているような特定地域への配送データの入った配達員アプリなんて限定的なものは存在しない。

同じような効果のある旧文明の警備組合の身分証アプリが金貨5枚。さすがに、ちょっと手が出ない。ちなみに、これは最低ランク。大規模施設用に対応したものだと値段は倍々ゲームである。

金貨200枚のアプリって、だれが払ってどうやって資金回収するのかなぞでしかない。

人造人間のヒューリーより高いじゃないか。


まあ、アプリを購入したところで、入れるマテリアルが小型一つしかない。小型のマテリアルに入れられるアプリは一つ。つまり、今あるアプリを消して導入するしかない。

もちろん新しいマテリアルを購入する事もできる。


その為に、マテリアルの販売も同ギルドで行っている。

マテリアルギルドの小型マテリアル販売額が金貨一枚だ。

ちなみに、トレハン組合の小型マテリアル買取は銀貨30枚。トレハン組合がマテリアルの買取を独占し、その隣のマテリアルギルドでマテリアルの販売を行う。何か色々思う所がないでもないが、ドワーフの文化的に”慣習”という事で深くは突っ込まない事にしよう。


とはいえ、安易にマテリアルを購入もできない。

マテリアルの最大の欠点が問題になるからだ。


マテリアルの最大の欠点。それは充電時間だ。

マテリアルの充電時間は、マテリアルの大きさ、そしてマテリアルの数で決まる。


さて、問題です。

小型マテリアルの平均充電時間は1日。中型マテリアルの平均充電時間は5日です。では、中型マテリアル一個と、小型のマテリアル三つを持つトレジャーハンターが、魔砲術で小型マテリアル一個を使い切りました。

さて、このマテリアルが充電されるのはいつですか?


答え:中型(5日)+小型(1日×3)で8日後。


つまり、複数のマテリアルと持つと充電期間はマテリアルの全充電時間の合計となる。使っていないマテリアルも、充電能力を浪費しているという見方だ。だから、マテリアルを大量に持てば解決するという話でもない。アプリにだって使用回数はあるし、使用すればマテリアルのエネルギーを消費する。予備を持っていけば、充電はさらに遅くなる。

悪循環だ。

まあ、3mも離せばいいのだが。個人で所持品をその距離だけ離して持つのは難しい。都市の外では分散させて持たせるくらいしか対処法がない。


まあ、だからこそ遺跡の中でもマテリアルを配置する場所は限られている。個人住宅に水のジェネレーターくらいしかないのも、他のジェネレーターを配置したら、充電が遅れて使えなくなるからだ。稼働機が個人住宅のような狭い空間に複数いない理由も、稼働機の近くに使用頻度の高いジェネレーターがないのも同じ理由である。


将来的に複数のマテリアルを持つことは確定するのだが、それは十分に吟味する必要がある。しっかり稼げる用意なれば、アプリなんてカードゲームのデッキ調整レベルで付けたり外したりできるんだけどな…


まあ、オレ自身の強化のためにも、まだまだ金が必要だ。

とりあえず、稼がないといけないわけだ。




「まず、重要なのは『広い道に出ない』だ」


買い物を終えて、今日の安宿に戻りながらガラハドが話す。


「広い道はデカイ奴がいる。狭い道には小さい奴しかいない。小さい道に入ろうとすれば体を低くする。デカイ奴が体を低くすれば頭が低くなる」

「なるほど」


天井が低ければ、酒場で話に聞く外の世界の怪物達。巨大な獣人トロールとか、なんでも飲み込む”大喰らい”といった大型の怪物と出会う事はない。巨大で強力な化け物であっても物理法則は無視できない。

逆に言えば、ドワーフが通れる程度の低い坑道なら、敵は前の時の獣人のような小さい弱い相手となる。まあ、その弱さを補うために数で襲い掛かってきたりと厄介な能力を持っているのだが、それは別の話だ。

どちらにしろ。オレ達のする事は決まっている。

いや、できる事は限られている。


「無理をしない。これが大前提だ。金は節約しているからまだある。危なくなれば引き返す。それはいいな」


オレの言葉に二人もうなずく。

コド=ハラクシャス遺跡を探索するための最大の問題は『場所がわからない』という事だ。この地方でも最大級の遺跡だが、安全なカザル=ボーダーを離れて、そんなところに行くのはトレジャーハンター位だ。当然、その安全な道というものも存在しない。

同業者のトレジャーハンターに聞いても、教えてくれるわけがない。安全な道というのはトレジャーハンターの命綱だ。トレハン組合だって、遺跡の情報を持っているわけではない。トレハン組合の仕事は遺物の管理であって遺跡の管理ではない。


オレ達は、その遺跡までの道を自分で探す必要がある。

調べ方はわかる。

旧時代の道しるべだ。コド=ハラクシャス遺跡はもともと、巨大地下都市の一つだった場所だ。いくつもの巨大地下道がそこにつながっている。

当然、大都市へ行く人の為に案内板などがあるのだろう。それを利用すれば、必ず遺跡へ到着する事ができる。


問題があると知れば、さっきのガラハドの言葉だ。

道しるべがあるような場所は、利用される頻度が多い道である。

そして、利用される頻度が多い道というのは、必然的に広い道という事だ。


つまり、大通りから付かず離れず進み、ある程度の頻度で大通りの道しるべを確認し、大型の怪物に合わないように進む。

そこまでして作った道も、落盤崩落でダメになるのが日常茶飯事。その都度新しい道を探す必要がある。


まあ、楽な仕事があるわけないか。


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