エピローグ 私たちの島は常に無風(むふう)
「これで二十人目が完成っと。慣れてくるとキャラ作成もスムーズに行くわぁ」
今日も私は、休日に一人でトモコレをプレイしている。夜になったら彼女と長電話をする予定で(すでにメッセージで約束はしている)、ゲーム内で起こった光景を面白おかしく話せるよう、一心不乱にプレイを続けていた。
私も彼女も、ゲーム内に自分を模したキャラを入れることはない。ゲームの中で自分が結婚をしても、却って現実世界の私たちが惨めになる気がするのだ。それよりは推しキャラの幸せを観察するほうが楽しいのだった。遊びかたは人それぞれなので、他の方々のプレイに口出しをするつもりはない。
見るともなく、テレビをつける。意識は携帯機のゲーム画面に向いていて、テレビのニュース音声が耳から入ってきた。奨学金の金利が上がったとか、上がるとか。私より若い学生たちの世代は大変なのかな。ちょっと個人的にはピンと来なくて、こんなことだから、私と彼女の同性婚に世間がピンと来ないのも無理はないのだろう。関心は人それぞれである。
『日経平均株価が、初の六万五千円台を突破しました……』、『円安を止められるかが、今後の焦点と……』、『停戦が今後も続くかという見通しは……』、『戦争は四年を経過した現在も続いています……』。
私が遊んでいるトモコレで、結婚したカップルは、まだ最初の一組だけだ。あとは恋人カップルが何組かいる。結婚した夫婦(女性同士だけど)に、まだ子どもは生まれていない。遠距離恋愛の相手である彼女のほうは、トモコレのなかで出産があったと私は聞いている。
ゲームのなかで失恋イベントは何度も発生してて、だけどキャラは割と簡単に立ち直るので、海外ドラマみたいな展開だなぁと気軽に楽しんでいる。もし神さまが、私たちの現実世界を天から眺めていたら、こんなふうに世界を捉えているのかもしれない。
「え! 来週のプリキュア、ゲストにコナン君が出るの⁉」
ニュースからアニメに番組が変わって、その予告内容が耳と目に入ってきて、ちょっとビックリした。へー、アニメ同士のコラボ企画なんだ。コナン君のほうは最近、声優さんが亡くなってしまって私もショックを受けている。やはり私は、現実よりもアニメに関心が行くような、救いがたいオタクなのであった。
人間には寿命があるけれど、キャラクターの存在は永遠である。私たちが、この世を去った後にも残る、価値あるものに私は惹かれる。私は未練を残したまま死んでいくかもしれない。多くの人間も同様なのかも。だけど、その後にも残る輝かしい光景があれば──大げさに言えば、私の魂は救われる気がするのだ。
今日も私のトモコレは、大勢のキャラクターが泣いたり笑ったりしている。現実世界も、きっと同様だ。私が遊んでいるゲーム内の島はスケールが小さくて、災害や現実世界の荒波とも無縁で。そこには私の人生と関係なく幸せに暮らしているキャラクターたちがいて────だから私は、幸福な気分だ。




