第85話 どうすればいい...。
「アレン……俺は、どうすればいい……」
メルの瞳に、もう光はなかった。
「俺の気持ちは……全部、嘘だったのか。
作られたものだったのか……。
俺は、ただ暴れただけの……自分勝手な存在だったのか……」
「そうだ。お前は――」
その言葉を遮るように、
アレンは崩れ落ちたメルを、強く抱きしめた。
「そんなことない、メル。」
静かに、だがはっきりと。
「お前が良い奴だって、僕は知っている。
お前の優しさが、嘘なはずないだろ。」
メルの肩が、わずかに震える。
「トラシオンを助けようとした。
皆を助けた。
そして、絶望していた僕を……救ってくれた。」
「……だが、俺は……」
「もし過去がそうだったとして、
一度間違えたら、もう許されないのか?」
アレンの声が、熱を帯びる。
「誰だって間違える。
暴れたって? 母親を守るためだったんだろ。
結果は最悪だったかもしれない。
でも……その気持ちに、嘘があるはずない。」
そして、トラシオンをまっすぐに見据える。
「トラシオン。お前も、本当は分かってるんだろ。
母親を失う苦しみに耐えられなかった。
大切な人を守る手段が、それしか思いつかなかった。
……それは、そんなに悪いことなのか?」
「……アレン……」
メルは、縋るようにアレンにしがみついた。
「私は間違わない。私なら……」
「けれど、行動できなかったから、
メルの人格に委ねたんじゃないのか?」
「違う!! 違う違う違う!!!
私は、一人でも出来た!!!」
怒号が、空間を震わせる。
「誰かを失う悲しみは、僕にも分かる。
痛いほどに……」
アレンは、歯を食いしばりながら続けた。
「でも、他責にするのは、もうやめよう。
メルは、自分一人で、ずっと背負ってきた。
元は一人だったんだろ。
なら……支え合うべきじゃないのか。」
「お前には分からない!!!
私の悲しみなど!!!!」
トラシオンの魔力が、爆発的に膨れ上がる。
空気が、悲鳴を上げる。
「メル!!
エリスを、二人とも逃がしてくれ!!」
「だが……」
「守るんだろ!! 今度こそ!!」
「……ッ!! 分かった!!
逃がしたら、必ず戻る!!」
メルは二人のエリスを抱え、駆け出す。
「大丈夫だ。
トラシオンも、メルも……僕が守る。」
「私はお前とは違う!!!
私は強い!!
エリス一人で充分だ!!
私は、何もいらない!!!!」
怒りと悲しみが混じった絶叫。
「トラシオン。」
アレンは、一歩前に出る。
「お前の嫌いな……殴り合いだ。」
「黙れ。
一方的な――惨殺だ。」




