第51話 今はただ謝りたい
「……姉さん。なんで……」
その一言だけで、胸が締めつけられた。
「ごめんね、ダイチ。
私は……近くにいたのに、守れなかった」
声が震える。
「怖かった。動けなかった。
それなのに……全部を、アレンに押しつけて……」
言い訳はしなかった。
正当化もしなかった。
ただ、事実だけを差し出す。
「……本当に、ごめんね」
「姉さん……俺の力で……
……植物に……」
「違う」
スミレは、はっきりと首を振った。
「助けてくれたの。お母さんが」
「……母さん?」
——その声は、直接響いたわけじゃない。
それでも、確かに“そこにあった”。
《ごめんね。
一緒にいられなくて》
《私が守れなかった分——
ダイチを、お願い》
それだけだった。
許しも、慰めも、与えなかった。
それで、十分だった。
「……ありがとう」
スミレは、目を逸らさない。
逃げない。
拒まれても、恨まれても。
「守れなかった。
でも——これからは、絶対に守る」
大地は、何も言わなかった。
それでも、抵抗もしなかった。
信じたかったのだ。
それだけが、はっきりと伝わってきた。
——よくやったよ、スミレ。
そう思った瞬間。
「ゴミ共が集まったところで、何も変わらない」
冷たい声が、空気を切り裂く。
「殺すだけだ」
——ここからは、俺の番だ。
アレンは、静かに一歩、前に出た。
もう、止まらない。
もう、譲らない。
「二度と、悲劇は繰り返させない」
怒りが、静かに燃え上がる。
「必ず殺す。
カルマ・クライン」




