第18話 退屈な日常
午前の授業は座学だった。
魔物の生態、危険度分類、ネビュラの5属性適性について。
黒板に書かれる文字を、サーレはぼんやりと目で追っていた。
――理解はできる。
――全部。
だからといって、面白いわけじゃない。
理解しても、心は動かない。
普通だ。
あまりにも普通すぎて、退屈だった。
斜め前の席のアレンは、真面目に板書を取っている。
相変わらず表情は硬い。
……なんでそんな真剣なんだろ
任務中に聞いてみようかな...
そんなことを考えているうちに、午前の授業は終わった。
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午後は武器訓練場。
木剣を握り、模擬戦形式での実習が始まる。
相手は――コウキ。
「チッ……よりによってかよ」
コウキは露骨に舌打ちした。
「安心して。手加減はするよ」
「その余裕が気に食わねぇんだよ」
開始の合図と同時に、コウキが踏み込んでくる。
力任せで、荒い。
サーレは最小限の動きで受け流した。
避けて、いなして、距離を取る。
「逃げてばっかだな!」
「無駄にぶつかる方が、効率悪いだろ」
コウキの攻撃が空を切る。
だが、最後に一撃、無理やり踏み込まれ、肩をかすめた。
「……チッ」
「今の、まぁ当たってたら多分倒れてたよ」
サーレは淡々と言う。
勝ち負けに、感情はない。
「ムカつく野郎だな……」
「そう?」
コウキはそれ以上何も言わず、木剣を下ろした。
――やっぱり、何も感じない。
勝っても、負けても。
相手が怒っても。
空っぽだった。
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放課後。
教室に集められた三人を見て、ベルダ先生が腕を組む。
「さて。急で悪いが、任務だ」
軽い口調とは裏腹に、教室の空気が締まる。
「最近、学園近くの村で被害が出ている。
月の出る夜に現れる、狼型の魔物だ」
――月。
サーレの胸の奥で、何かが微かに揺れた。
「数は不明。だが、単独ではない可能性が高い。
明日の朝、現地へ向かってもらう」
「明日かよ」
「文句言うな、コウキ」
ベルダ先生はふっと笑った。
「ちょうどいい組み合わせだろ?
3人とも全く違う価値観を持っている。」
視線が、順に三人をなぞる。
「命を預け合う任務だ。
……仲良くやれよ」
教室を出た後、コウキが小さく呟いた。
「……月夜の狼、か」
「嫌そうだね」
「嫌に決まってんだろ」
アレンは何も言わず、夕焼けの空を見上げていた。
その横顔を、サーレは見つめる。
相変わらず、重たい顔だ。
なのに、目は前を向いている。
……本当に、変わってる。
明日の任務で、
少しは分かるだろうか。
アレンくんが何を抱えているのか。
そして――
なぜ、それでも前に進めるのか。




