Select4’:異国の調味料
【選択肢】
▶︎異国の調味料
※共通シナリオも含まれています。
「これ……」
手に取った木箱の中には、粘度のありそうな薄茶色いペースト状のものが入っている。
私が木箱の中身をまじまじと見ていると、レドもそれに気がついた。
「……! それ、は……」
レドは驚いたようにそれを見ていた。
「レドもこれを知っているの? これ、〝味噌〟よね?」
「え……ご、ご存知なのですか……?」
「ええ、ヘリオドールでは珍しいものよね。ここよりずっと東の地───極東にしか分布していない特別な木から採れる樹液、だったかしら」
「何故この調味料のことを……?」
「私の家の遠い祖先が極東の出身なの。その事を知った私は、極東の国がどんな所なのか気になってしまって。小さい頃に母と極東料理を再現したことがあったの。その時に偶然、味噌を取り寄せることができたのよね」
「貴女には……極東の血が流れているのですか……?」
「ええ、そうね? だいぶ薄まってしまっているけれど」
「……ヘリオドール人で、貴女のような瞳の色は珍しいとは思っていましたが……そういう、ことでしたか……」
「瞳の色? ああ、そういえば……」
(極東人は赤い目の者が多いと誰かが言っていたような……ひいお爺様だったかしら)
「レドは極東の国に詳しいの?」
私が聞くと、レドはハッとした表情を浮かべたあと、視線を逸らし少しだけ俯いた。
「…………詳しい、と言うほどではありませんが」
何かを懐かしむような、悲しむような。
彼はそんな表情を浮かべている。
「……レド?」
「…………あぁ、すみません。極東は、私の……知り合いの故郷、なんです」
「え、そうなの?」
「……貴女の話を聞いて、少し……懐かしく思っていました。……もう二度と戻れない地。あの地の情景も、今はもう朧気になってしまいましたね」
(二度と戻れない……距離的な意味で言っているのかしら……?)
「とても遠いところにある国だけれど……海で続いているのだし、見上げた時に見る空も一緒。広く見たら同じ世界にある国なのだから、絶対に行けないってことはないんじゃない? シーラにもこうして極東産の味噌が売られているくらいだし。だから、きっと大丈夫。そのお知り合いにもきっとまた会えるわ」
「え……」
「……えっと、お知り合いの方に会えないことを寂しく思っていたのかと……そういうことではなかった?」
「知り合い……あぁいえ、そうですね。また会う機会はあるかもしれません」
「ええ、もし極東へ行く機会があったら、私も一緒に行きたいわ。また一緒に旅ができたらいいわね」
「……はい。いつか、貴女とまたこうして旅をする日が来ることを……切に願っています」
笑顔を返してくれた彼の表情には、切なさのようなものが混じっていた。
(極東の地に相当思い入れがあるのかしら……。これ以上踏み込んで聞くのは無粋ね)
手に持っていた木箱をそっと戻す。
※
一通り食材を揃えた私たちは、みんなの待つ海岸へと急ぐのだった。
レド 好感度+30




