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RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第二章 〜仲間〜

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活動拠点

 


 廊下に出ると───


(おせ)ぇ」


 同じくダイヤ生である狼獣人のシェナが不機嫌そうにしている。

 どうやら彼もルデンやレドと共に来ていたらしく、彼は廊下で待っていたようだ。

 シェナの鋭く光る金色の瞳が私の姿を一瞥したが、その視線はすぐにルデンへと向けられた。


「待たせて悪かったね。それじゃあ行こうか」


「…………チッ」


 シェナは舌打ちだけすると、さっさと歩いて行ってしまう。


(王子に舌打ちできるなんて、彼の度胸は大したものね……)


 どうやらシェナも、私より先にルデンたちに回収されてきたらしい。

 残る2人のメンバーにはすでに話がいっていて、彼らももう向かっているそうだ。


 講義室を出てからしばらくは学生の注目の的(主に私以外)になっていたが、講義の予鈴が鳴るとそれも落ち着き、職員棟に近付いてからは学生の姿もなくなっていった。


 シェナ、ルデン、レドに次いで歩いていると、気づけば理事長室へ続く道からどんどんと逸れていく。


(あれ……今日は理事長室ではないのね)


 そんな私の考えを見透かしたかのように、横を歩くレドがクスッと笑う。


「今日から時計塔上の部屋を活動拠点に使っていいそうですよ」


(時計塔って、あの大きな鐘がついている塔よね?)


 ちなみに先程の予鈴も時計塔の鐘が鳴らしたものだ。


(時計塔に部屋なんてあったのね)


 時計塔は学生の立ち入りを禁止している。

 そのため、限られた者しか知らない部屋があったのかもしれない。

 にしても、あんなに大きな鐘が真上で鳴ったら、その下の部屋はうるさいなんてものじゃない。


(あとでこっそり防音魔法を耳にかけておこう……)



 職員棟を抜け、目的の時計塔へと到着する。

 緩く螺旋状に作られた木の階段を上がると、魔法陣式の扉にたどり着く。

 手をかざすと魔法陣が作動し扉が開くという仕組みのようだ。


 扉を開くと、中にはすでに到着していた2人の姿があった。

 そのうちの1人は、私の姿を確認するとパァっと顔を明るくした。


「待ってたよ〜! リルちゃん♪」


 部屋に入って早々ふわりと手を引かれ、私を〝リルちゃん〟と呼ぶ男の腕の中にすっぽりと収まる。

 このとても軽い感じの男はセシアン・モルガナイト。そう、桃色髪の彼だ。

 見上げると、彼のエメラルドグリーンの瞳が柔らかく細くなる。

 目元の泣きぼくろが印象的だった。


(確か、モルガナイト伯爵家の長男、だったわよね)


 ところで…………、


「…………リルちゃん???」


 リルとは私のことだろうか……。

 私の記憶が正しければ、彼と会ったのは顔合わせの日以来なのだが。


「おい、つっこむのはそこじゃないだろう。セシアン、女を口説くのは結構だが他所(よそ)でやれ。風紀が乱れる」


 そう言うと、彼、ラルド・アメシスはその長い指で眼鏡をクイッと上げ直し、足を組む。

 黒縁眼鏡の奥に見える彼の瞳は鋭く切れ長で、ラベンダー色をしている。

 そんな彼の瞳が、セシアンに軽蔑の眼差しを向けた。

 セシアンとは対照的に、ラルドにはとても知的な印象を持った。

 ……あ、いえ、決してセシアンの頭が弱く見えるという話ではなくてね、ええ。


「リルちゃん今すげー失礼なこと考えてない?」


「…………」


(…………私ってやっぱり顔に出やすいのかしら??)


 セシアンの腕の中からそっと抜け出し、部屋の中をぐるりと見渡す。


「ずいぶん広いのね……」


(……でも待って? 時計塔の造りからして、中にこんな空間があるのはおかしいんじゃ……)


 この部屋に6人もいるのに、全く狭さを感じないどころか、スペースが余っている。


(ちゃっかり2階まであるし……)


「これは……空間魔法が施されていますね。それもとても強力な」


 辺りを軽く見回したレドがそう言葉にすると、それに補足する形でラルドが口を開いた。


「この床下に魔法陣の設置を確認した。恐らくそれだろう」


「へぇ〜見ただけで種類まで分かんのね。相変わらず詳し〜い!」


「……フン。少なくとも貴様よりは出来がいいんでね」


「うわっ、ひど!」


 ラルドの棘のある言葉も、セシアンが気にしている様子は全くない。

 ラルドとセシアンは互いに軽口を叩き合える仲のようだ。


(2人は前から面識があったのかしら?)


 余計なことを考えて、ハッとする。


(……まぁ、どうでもいい話ね)


 彼らは依頼をこなす時だけの、形だけの仲間。

 長くても一年だけの付き合いなのだから、深く踏み込まない方がいいだろう。


 ラルドの話によると、空間魔法の他に、この塔全体に防音魔法もかけられているらしい。

 なのでこの塔の中で鼓膜が破裂する心配はなさそうだ。




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