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お助け『魔女』になりまして  作者: ふつうのひと
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ほのかに逃走を警戒しているらしき悠美に片腕をガッチリ掴まれながら住宅街にやってきた桃香達は「佐々木」と表札が掛かった立派な一軒家に入った。


「桃香いらっしゃい!」

「お邪魔します・・・あれ、ご両親は?」

「ママはちょっと用事があるから外出していて、パパはお仕事。こっちが私の部屋よ!」


桃香としては東京都内に一軒家を持てるパパの仕事が非常に気になるがそんなことを聞けるわけも無く。

悠美に引っ張られるまま2階に上がって部屋に入ると、可愛らしい内装だった。

全体的に明るい暖色系でまとまった家具に、ぬいぐるみや人形が置いてある。


(あれはっ!)


その中でも桃香の目を惹いたのは、シルバニアファミリーであった。

一度集め始めると青天井に予算がかかる女の子垂涎の人形群。

ちなみに男の子向け青天井はミニカーかプラレールだと桃香は思っている。


「あら?桃香、シルバニアが気になるの?」

「ううん。ただ、立派なお家だなって」


かつて妹が親にねだっていた頃の記憶がある桃香は、朧げではあるが飾られている豪邸とピクニックの一式で五万は行ってそうだな、と考えた。


悲しいかな、美しく可愛らしい姿になっても内面の小市民はまだ変われない。


部屋にコートとランドセルを置いた二人はリビングに降り、手洗いうがいを済ませた。

あまりその習慣が無かった桃香は、悠美の両親の教育ぶりに感心するのだった。


そしてその足で食器棚に向かい、その中のお菓子が保管されている棚を探る。棚にはポテトチップスやクッキーなどの常温保管可能な物が入っていた。


「桃香はどんなお菓子が好き?私はチョコレート系が好きなんだけど」

「私も好きだから悠美の好きなのでいいよ」


チョコ菓子で良いと聞いた悠美は棚を閉めて冷蔵庫からポッキーなどを取り出す。


「紅茶とオレンジジュースどっちがいい?やっぱり紅茶?」

「オレンジジュースでお願い」


どこかで見たことがある100%オレンジジュースを二つ用意した悠美とお菓子を持った桃香はテーブルに座っておやつを食べ始める。

桃香は部屋に持っていかない品の良さにまた感心しつつ、久々のお菓子を楽しむ。


「桃香はいつも何食べてるの?」

「それはおやつの話?」

「うん」

「そうだなぁ」


過去を振り返って自分のおやつ歴を辿ってみる。

・・・が、ここ数年はおやつなどほとんど食べていないと気づいた。

お昼(12時)、夕飯(19時)の間にある15時のおやつは大学生になってから意識したことはなく、デスクワークを主としていた社会人の時でもお菓子というよりも眠気覚ましのガムやアメ、ラムネが精々である。

休みの日の場合は、趣味にかまけておやつどころか昼か夕ご飯を抜いてしまうことすらあった駄目社会人であった。


「あー」

「桃香?」

「あっ、うん。まあ、飴とかガムとかかな?」

「えっ、それで十分なの?」

「まあ、お夕飯の準備をしていたらすぐに夕飯になっちゃうから」


とりあえず仕事中に摘んでいたものを答えたが案の定、悠美に驚かれてしまう。

それに対して軽く答えて話を終わらせようとした桃香だったが、その答えは悠美にとって軽くはなかった。


「お夕飯の準備?え、桃香ってお家で料理してるの?というか毎日夕ご飯の準備をしているの?」

「まあ」

「すごい!私にも教えて!!」

「えっ??」


予想外の食いつきに困惑する桃香。

なぜそこまで興味津々なのか気になって尋ねる。


「そんな大層なものを作ってる訳じゃないんだけど、そんなに?」

「だって私まだ料理させてもらえないんだもん。火とか包丁とか危ないものだらけだって」

「学校の家庭科とかは?」

「調理実習は5年生からよ。あ、でも3学期はきな粉餅を作って終わるって先生が言ってたわね」


きな粉餅と聞いてまず思ったのは、作るってどこから?であった。

餅つきからする場合火や包丁の比じゃない危険が待っているんじゃ、と思った桃香だったがふとネットで昔見かけた自動餅つき機を思い出して(私立学校だしそっちかな?)と納得する。


「でももう桃香は包丁とか火とか慣れてるんでしょ?」

「まあ、そうだね」

「桃香がやってるって言えばママもやらせてくれるかもだし、それに私も桃香みたいに出来るようになりたいから教えて欲しいの!あとバレンタインも近いし!」


桃香、雷霆落ちる。


いつもであれば多少気にしているが、ここ最近は流石に意識することが無かった6文字である。


「ばれん、たいん」

「桃香にもちゃんとあげるからね!」

「あ、うん。ばれんたいん・・・」

(もしかして、準備しなきゃ、駄目?)


かつての彼はバレンタインから遠すぎず近すぎずな人生を送っていた。

まったく貰えないわけではないが貰えるのは義理チョコのみ。

しかし貰ったからには返さなければと世間の3倍返しを真に受けて少し良いチョコを返す。

そんな受け身な男だった桃香に、自分でチョコを用意するのは現状困難である。

チョコ、クッキー、飴、マシュマロ、etc...

どれが良いのかすら判断つかないのだから。


(南條に頼るしか無いか・・・)

「そっか。桃香は料理できるってことはチョコも凄いの?」

「えっ!いや、たぶん普通かな、うん。わたし製菓とかは全然だから、うん!」

「そっか。じゃあ一緒に勉強しようね、桃香!」

「そうだね、ははは・・・」


危うくハードルを上げられそうになるのを必死で否定して、しかしバレンタインの準備からは逃れられないと内心不安になる。

結局、人外になっても人からの期待を裏切りたくないという小市民ぶりが変わらない桃香である。



おやつを食べ終えた二人は2階の部屋に戻った。

そしてファッションが苦手と言っていた桃香に対して教えてあげると意気込む悠美の押しに負け、気づけば無限に悠美の服を着せ替えさせられたのはまた別の話である。


ただ桃香の精神がバレンタインの話題以上に疲弊したのは間違いなかった。


(おしゃれ好きな女子小学生はつよい・・・)

「次はこのスカートとー、」

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