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家に帰ってきたタケルは自室にカバンを置いて、そのままベッドに倒れ込んだ。
「あー・・・」
「どうしたの?タケル」
「いや、うん」
「彼女のこと?」
相棒に正解を当てられたタケルは相棒から目を背けるように寝返りを打った。
「すごい子が転校してきたよね。内側にいる僕にはタケルの緊張が直で伝わってきたよ」
「直に言われると恥ずかしいからやめて!いやでもしょうがないじゃん!あんなに可愛いとさぁ!」
タケルが桃園桃香を見て最初に思ったのは、綺麗という二文字であった。
まるで漫画やアニメキャラのような綺麗さに見惚れ、同時に住んでる世界が違うと感じて高嶺の花に見えた。
友達ともそんな話をしていたのだが、休み時間の度に女子から絡まれ、弄られて困ったような雰囲気を出しながらも優しそうに笑う姿に親近感を覚えて、もしかしたらお付き合い出来るかも?と思うようになった。
そうしてその姿を目で追い続けて一日が終わる頃には、気になる子ランキング一位になっていたのだった。
「告白するのかい?」
「僕がしても無理だよ・・・」
「でもずっと目で追ってるじゃないか。それに今のタケルなら行けるかもしれないよ?」
「そうかな?」
「毎日頑張って戦闘訓練してるし、3回も実戦を経験して度胸だって付いた!ぶつかってみたら行けるかもしれないよ?」
「・・・いやいやいや、変身した時はノーカンだって!あれはああいうものっていうか、日常であの度胸が出るわけじゃないし」
「でも球技大会の代表にも選ばれたじゃないか!」
「それはそうだけど・・・」
実際にタケルの能力はここ数週間で大きく上がっていた。
身体能力はそこまで変わっていないが、戦闘訓練などを経て発揮できる能力が大きく上がった。
クラスメイト達の間でもそれは認知されており、それもあって今回推薦が入ったのだった。
ただ本人の気性もあって、それを鼻に掛けて調子に乗り切るのは出来ないのであった。
タケルと相棒は告白する/しないで言い争っていたが、母親の声で中断されて結論は流れたのだった。
その相棒の言葉がタケルの欲望を代弁したものだと気づくのがいつになるかは誰にも分からない。
お風呂上がりにジュースを仰ぐ橘はパソコンデスクの椅子に勢いよく腰を下ろした。
「はぁー・・・なんで私のクラスなのかなぁ」
思うのは自分が担当するクラスに編入された規格外の女の子である。
桃園桃香。
先週、突然編入されることが決まり、それも自分のクラスに編入されると知った時には「はぁ!?」と教頭に言いかけた。
今いる生徒達を纏めて目を配るだけでもいっぱいいっぱいな新米教師に新しい転校生も任せるなんて本気なのかと聞きたかったものである。
しかしそれをしたら教師生活が終わると分かっている彼女は一度は受け入れた。
だがその生徒の詳細を聞いた時、その憤りが再燃した。せざるをえなかった。
「元孤児の養子で義務教育もちゃんと受けたことが無いのに成績は優秀っておかしいでしょう!!」
編入を受け入れる際に行ったテストでは、国語と算数は完璧で英語と理科も優秀、社会は少し劣っていたが十分問題無しという結果だった。
どこでそこまで学んだのかが一切不明なだけでも不気味なのだが、面接を行った校長と教頭からは非常に良い子だからきっと大丈夫と念を押されたせいで恐怖すら感じている。
「更にあんなに綺麗で、運動も出来て、見る限り人当たりも良くて・・・漫画ならやばい性質を隠し持ってたりする展開よね」
大人視点でも化け物クラスのポテンシャルを発揮している桃香に、最早現実逃避気味な疑いすら持ち始めている。
教師としての力と経験が劣っていると自覚しているが故に、危険そうな生徒は最初から監視しなければいけないと思っているのだ。
だが、もちろん良心はそれを否定する。
「・・・でも漫画と現実は違うから。いや、たまに現実が漫画超えるけど。それなら桃園さんは綺麗で頭が良くて運動が得意で心優しい女の子の可能性も・・・?完璧超人すぎて信じられんー」
酔ってもいないのに独り言を溢しながら付き合い方を考える。
(もし本当にそんな完璧超人だったら、それこそクラスの大黒柱として私が楽を出来るかもしれないけど・・・そうじゃなかったらの場合。どういう場面で爆弾になるかを分かってないと対策を組めない。どうにか探らないとなぁ、バレないかな・・・)
性善説の希望を持ちつつも、事件を予防するための調査を行うことにした。
ただ、それが上手くいくビジョンはまったく思い浮かばないのだった。
佐々木悠美は考えていた。
桃園桃香と対等になる方法。
どんなことに対しても表情を崩さず、自分が得意としているソフトテニスでさえ惨敗した。
勉学で負け、運動で負け、容姿でも負けている。
中学生が学ぶ内容ならと思い姉の教科書を借りたが、あまり頭に入ってこず。
ソフトテニス以外のスポーツを学びそれで挑めば、と考えたが先の勝負を考えると一度勝っても次からは負ける気しかしない。
そして容姿を美しさや可愛さがそう簡単に上げられるものではないと分かっているし、それでもなお彼女と同レベルになれる自信は無い。
佐々木の持ち前の向上心が上に伸びようとするが、桃香への劣等感に蓋をされ、それでもどうにか伸びようとした結果、彼女の向上心は曲がった。
「・・・私が駄目なら、彼女を落とせばいい」
相手を下げることで自分が伸びているように見せる手法を考え、しかし道徳の理性がそれを批判するが強い劣等感に阻まれて自浄することは出来なかった。
(頭の良さを無くすことは出来ない。運動神経の良さを失くすことも出来ない。彼女なら少しの怪我でもきっと私を越える。なら・・・少しくらい、いいよね)
貶すものを決めた彼女は2つのものを準備する。
一つは火。一つは刃。
これらでも意味が無いかもしれないと考える佐々木にとって、これらを使うことに対する躊躇は生まれない。
彼女が受けた衝撃と劣等感は(一部)本物よりも強大な虚像を作り上げていたのである。
むずかし




