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現在のトウカの持ち物は昨日買った服とスマートフォンだけである。
ここ2日間はリビングのソファで客用の掛け布団に包まり、歯ブラシは南條の予備、歯磨き粉その他風呂用具は全て南條と共有という生活だった。
初めは「やっぱ嫌だろ?魔法で綺麗に出来るし俺は良いよ」と言うトウカだったが、
「そそここ問答無用!」(それはそれ、これはこれ、問答なんてしないんで風呂に入れ、の意)
「どういうこと!?」
という会話を経て南條から強制的に女の子のお風呂の入り方を叩き込まれてからは諦めて使っていた。
その時にトウカは、何故自分と一緒に入って平気なのかを聞いてみた。
「もし先輩が期間限定で女の子になるとか、もしかしたら戻るかもしれないって状況なら一緒に入りませんでしたよ」
「・・・ほんとに?」
「なに人のことを痴女みたいな目で見てるんですか。当たり前じゃないですか」
「じゃあもう俺が男に戻れないから?」
「ええ。もう完全に女の子になったのなら恥ずかしいとかありませんからね。むしろきちんと教えておかないとこれから困るでしょ?先輩が」
「お前・・・」
「まあ、私的には良いおもちゃが出来た感じもありますけど。いい歳した大人がお風呂で暴れることも無いでしょうし」
「おまえ・・・」
「やってみたかったんですよねぇ、わたし末なので。うわぁ、私の髪とは泡立ちが違う・・・!」
「・・・・・・何か、言葉出なくなったわ」
自分を想って行動してくれたと少し感動した所で少し汚れた本心を見せられて、呆れたような何とも言えない気分になったトウカであった。
しかしそれでも、南條がトウカのことをただ可愛い妹キャラではなく世話になった先輩と見ているのも事実。
なんだかんだで義理堅く彼女の恥ずかしい秘密を誰にも漏らさず、今度は自分が死んだにも関わらず人のために動こうとしてる彼に対して、南條は尊敬を持っていた。
そんな感情もあって、トウカをソファで寝させ続けるのは南條の本意ではなく、荷物置き場になっている部屋に簡易ベッドを置くことになったのだ。
「別にちゃんとしたベッドで良いんですよ?後で先輩に請求しますし」
「睡眠に関しては別に良いよ。たぶんこの体なら1週間徹夜でも問題ないから。俺的にはそれよりもあの家が1LKじゃなくて2LKだった点のほうが気になるんだけど」
「一応2LDKですよ。リビングとダイニングの区別付きませんけど」
「お前のお父さん、いくらのマンション契約したの・・・?」
トウカとしては可愛い娘のために都内の2LDKマンションの一室を借りるための金額が気になった。
東京でその大きさは、下手をすれば生前の彼の手取り月収の半分を持っていくと思ったからだ。
「・・・まあ、そこはいいじゃないですか。今は先輩のことを考える時間ですよ。布団とかも可愛いのを買わないとですよね!」
「いらねぇ!心まで少女にする気か!」
「でも地味なのだと男の子っぽいとか思われません?」
「呼ぶわけないだろ。居候が友達連れてくるとか非常識すぎるわ」
「私的には全然構わないんですけどね。家の掃除はメイドさんがやってくれるわけですし」
「だっ・・・、いや、だとしても。色々勘繰られる可能性があるから友達を連れてくることは無い。うん、絶対に」
つい「誰がメイドさんだ」と言いそうになったが、自分から家政婦になったことをすぐに思い出し誤魔化す。
そして今度はトウカの方から気になる点を尋ねる。
「だいたい、あの物置になってる部屋の片付けはどうするんだ?」
「それは先輩のお力を」
「俺が分別して捨てるってことか?無理だろ」
ある程度の付き合いがあるとはいえそこまで趣味嗜好に詳しいわけでも無いので、所持品の分別に困るトウカ。
それに対して南條が返したのは予想外の提案だった。
「いえ、先輩の魔法で四次元ポケットみたいなのに仕舞ってもらえれば。必要になったら出してもらうんで」
「・・・は?」
「ですから何でも中に入る四次元ポケットですよ。最近のアニメとかだと空間魔法とか収納スキルみたいなやつです」
「・・・俺がそれを使えると?」
「魔法を司るってくらいだから簡単でしょ?ね?ね?」
まさかの魔法頼りな考えをしていた後輩に頭を痛ませつつ、出来るかどうかを探る。
「・・・まあ、出来なくは、無いか」
「さっすが魔法少女!私の現実に欲しい能力トップ3の一つなんですよね、空間魔法って!」
「けど、何かしらの袋は必要だぞ。それこそポケットのように」
「あれ?空間に穴を開けるみたいなのは出来ないんですか?ポケットでも良いですけど」
「今の俺だと本当に空間に穴を開けてそこからやばい事態になりそうだからしたくない」
「先輩がそう言うならそうしましょう」
ちなみにトウカが自分の手が通るサイズの穴を開けた場合、その穴を塞ぐために穴周辺が歪み、マンションが崩壊するまでは確定である。
「じゃあまず先に魔法に使うための大きなバッグでも見に行きましょうか」
「いや別にそこまで大きくなくても良いぞ?」
「え?でも入口部分が大きく無いと駄目じゃないですか?」
「それも魔法で伸ばせばいいし、『伸縮』」
自分の服の布を素材の限界以上に伸び縮みさせるトウカ。
それを見て、
「あ、本当に魔法って万能ですね・・・」
と呟く南條であった。




