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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第八章 帰界準備編

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第341話 拠点第一号完成

 拠点の防衛を固め終わった後は、具体的な形や材料を決めていく事にした。



「やはりここはツクヨミさんの造りだす竜水晶を使って、全面水晶にしてはどうでしょう。

 それならソウタ君が間違って体を当ててしまっても、壊れる事も無いはずです」

「確かにあの巨体だからな。尻尾の先が意図せず当たったとか有ってもおかしくないな」

「それに水晶のおうちってかっこよくない? さすがにスケスケ過ぎても困るけど」

「部屋ごとの壁などは、擦りガラス状に加工したり間に別の材料を挟めば問題ないかと」

「それなら安心だね。電気付けたら丸見えってのは、ちょっとねえ?」

「だなぁ」



 子供たちには教育上よろしくない事を二人でする時に、それではさすがに困るのだ。

 その辺りも解決できるのなら、竜水晶を使うと言う案は非常に望ましいものであった。

 なにせとんでもなく硬く頑丈で、物理はもちろん魔法攻撃などもある程度反射する性質まで持たせられる。

 なので水晶の部屋の中にいれば常に結界を張っているに等しく、外から解魔法の魔力を室内に侵入させることも無いとセキュリティーも万全。

 デメリットと言えば加工し辛いくらいであろう。

 けれどそれも月読なら《竜水晶制御》で細かな装飾はまだ無理でも、大まかな形を作るくらいならLv.5でもできる。

 それら全部を加味した結果、反対意見も出ることなくリアの意見が通った。


 建材が決まった所で、今度は外観を決めていく。



「最初だし可愛い奴がいいよね」

「なんで最初だと可愛いのかは解らないが、可愛いなあ。

 そもそも可愛い建築物ってなんだ?」

「んー……なんだろね? それじゃあ、かっこいいのでもいいよ」

「とりあえず見ためがかっこいいか、可愛ければいいと」



 竜郎と愛衣がそんな話をしている間にも、皆どんな形がいいのかと頭を悩ませていた。

 そこで竜郎も考えてみる。愛衣も気に入りそうで、自分も好ましいと思える建物の形を。

 まず竜郎が可愛いと言われて真っ先に思い浮かべるのは愛衣だ。



(けどいくら好きだからって、自分の彼女の形をした家に住みたいかと言われれば、さすがの俺もNOだ。

 んーどっかに可愛くてかっこいいモチーフが転がっていないものか──ん?)



 そこで竜郎はある物が目に留まり、それを提案すると皆乗り気になった。

 そうしてそのまま話し合い、竜郎の提案した形にすることに決まった。

 後はどれくらいの大きさにするのか、また外壁の高さ、庭の広さ。などなどトントン拍子に決まっていき、さっそく着工に乗りかかった。

 竜郎は天照と共にエネルギー供給と補助をし、月読の竜水晶の生成と形状制御を手助けし、リアが引いた図面通りになる様に指示を受けながら作っていく。


 そうして極夜の日もまたぎ、立ち退かない竜郎達に焦れて襲い掛かってくる魔物を排除しながら四日も掛けて──と言ってもあり得ない速度だが、形や内装、部屋などを作り終えた。

 後の細かい所は竜郎達では難しいので簡単な補助以外はリアに任せ、彼女の気が済むまで拠点造りは続き、さらに五日の時が過ぎ──。



「出来ました!」



 最後に豪華な意匠のこらした玄関扉を取り付けたリアが、達成感に包まれながらこちらに振り向いた。

 そして皆に見守られながら笑顔で駆けてきた。

 リアも合流し、皆で出来上がったそれを見上げる。



「おー、こうして出来上がったところ見ると壮観だねー!」

「ああ。結構大変だったが、遂に完成だ。俺達の拠点第一号──カルディナ城が」

「ピュィイイイーーー!」



 そう。あの時竜郎が提案したモチーフは、カルディナだった。

 そこは数日前には何もなかった草原だった場所。だが今竜郎達の目の前にはカルディナが《真体化》した時の竜鱗を纏うグリフォンの姿で、四足を折り曲げて地に腹をつけ、頭をきりっとした表情で上げて海の方を真っすぐ見ている──という構図の水晶で出来た城が出来上がっていた。

 城──というからには大きさも相当で、《真体化》した体長12メートルのジャンヌが並んでも小さく見えるほどだった。

 そしてカルディナ城を囲むように、海の方だけあけたコの字型で、登って来れない様に表面をツルツルにした竜水晶の外壁で覆われていた。

 これで海から以外の外敵は、空でも飛べない限り入って来れないだろう。



「次に拠点を作る時はジャンヌだからな」

「ヒヒーーン!」



 もし次に拠点を建てる事になった時も、こうしてカルディナ達をモチーフにしていけば、迷う事も無く一石二鳥。

 まだまだ土地は有り余っているのだから、等間隔にオブジェ感覚でつくっても面白いかもしれない。というのが竜郎の考えである。


 先ほど取り付けた表玄関は胸の辺りにあり、他にも四足の足と背中の部分などにも入り口が設けてある。

 もちろん全て施錠魔法で頑強なロックがかかっているので、竜郎から鍵を受け取った人間以外開ける事は出来ない。


 内装は一階にはキッチン付きの広いリビング。リアの巨大な工房。作業などで汚れたら直ぐに入れる普通の大浴場。食糧庫や巨大冷蔵庫、物置。

 そしてシャワー風呂トイレ付のリアの部屋と奈々の部屋がある。それでもまだまだ場所は余っているが、今の所使い道は未定。


 階段かエレベーターを上った二階には竜郎と愛衣、ジャンヌ、アテナ、そして天照と月読が希望したアスレチック場。


 三階は完全に遊技場になっており、ボーリング、卓球、スケートリンク、バスケットコートにビリヤードにバッティングセンター。射撃場にルーレットなどなど、スペースは有り余っているので、やった事も無いないものまで何でもかんでも作りまくって設置した。


 四階は室内プールや様々なお風呂が楽しめる巨大浴場。ここにジャンヌのスチーム爆弾風呂も防音、密閉を施した区画を用意し、奈々のウォータースライダーも巨大な物が設置してある。

 これで雨が降って海に入れなくても、水遊びができるようになっている。

 といっても水温は低いので、リアではどの道海に入るのは難しいのだが。


 それより上の階は従魔たちにでも使って貰う事にして、カルディナでいう背中の部分──屋上に出てくる。

 そこへ出ると、首の後ろ側に付いた梯子が見える。

 首の中を通っているエレベーターで行く事も出来るが、その先には頭の部分にある展望台へと続いている。


 屋上中心部である背中の真ん中あたりからは一本の塔がはるか上へと伸びており、中ほど辺りでは従魔たちの監視用の場所が。

 そしてその天辺にある豪華な鳥かごの様な形をした大部屋が、カルディナの望んだ高い場所にある部屋である。



「ちょっと殺風景だが、とりあえず帰界してのんびりして、またこっちに来た時にでも整えていこう」

「だね。私たちの時間は馬鹿みたいにあるんだし、ゆっくり充実させていけばいいよね」

「ああ」



 こうしてざっと内部の見学終えた竜郎達は、今回この拠点を建てるのにあたって、最優先で作ることを決めていた、界と界を行き来するときに安心して転移してこられる場所に向かっていく。

 入り口は一階廊下、城の中心に位置する場所に、床の水晶に埋め込むようにして設置されている、カルディナの金の彫刻が目印だ。

 そこを中心点におき、本当に良く見ないと解らない様に偽装した直径六メートル程の丸い溝があり、金の彫刻に鍵をかざすとボコッと音を立てて、ゆっくりと下へ下がっていく。

 そして地下へとやってくると、人が来たのを感知して自動で部屋が明るくなる。

 ガコンと音を立てて、円形の溝に竜郎達が乗ってきた床が嵌る。

 降りるとまた自動的に上に上がっていき、一階廊下の床に戻って行った。

 これは地下にあるスイッチを押せばまた降りてきてくれる仕組みになっている。


 そうして地下へ降りてくると何となくそれっぽく見えるからと、意味は無いが複雑な魔方陣風の模様が刻まれた床が広がっているだだっ広いだけの空間が広がっている。

 けれど壁面の水晶にはプリズム加工してあるので、天井の光を浴びてキラキラ輝き、無駄に豪華な印象を来る者に与えていた。



「前も思ったっすけど派手っすね~」

「それはそうですけれど、わたくしは特殊な空間という感じがして好きですの」

「悪乗りして加工しまくった自分が言うのもなんですが、実は私も気に入ってます」

「あははっ。でも解るよ、その気持ち」



 そしてこの部屋の中心部の床には、ヘルダムド基準の年号と日付と曜日を表示する時計が二つ埋め込まれていた。

 これはここで転移魔法をすると片方の時間が止まった状態で記憶され、もし異世界転移で時差が産まれても、もう片方と比べる事で直ぐ解る様になっていた。


 それらを確認しながら軽く見回り、一階に戻ると今度は外へと出る。

 まず正面には海が広がっている。そちらに壁は無いので、こちらからは魔物は入りたい放題だ。

 なので蒼太やワニワニ隊にはここを重点的に守って貰う事に決めている。

 現に竜郎達が奥に引っ込んだと解るや否や、手足の生えた魚の様な魔物が既に湧いていた。

 それらをさくっと片づけて《無限アイテムフィールド》にしまい、カルディナ城を取り囲む外壁をぐるっと一周して不備は無いか確かめていく。



「この辺の庭にはお花畑とか庭園を作りたいな」

「噴水とかもあったら面白そうですの」

「あと従魔たちが飢えない様に、畑を作って世話をさせたり収穫させたりするのもいいかもしれませんよ」

「だな。あいつらはカルディナ達と違って食事が必要だし、とりあえず食糧庫や巨大冷蔵庫に食べられそうな物は突っ込んどいたが、自分たちで食糧を生産できるのならそれに越したことはないし」



 蒼太やワニワニ隊は大食漢らしく、牧場内にいる間の餌代という名の魔力がいい感じに徴収されている。

 もちろん倒した魔物を食べて貰う予定だが、そちらの食料も多少は確保しておきたいので、城内管理をして貰う魔物達には食糧生産を手伝って貰うのは助かる。

 ということで、畑を適当に竜郎が作っておくことにした。

 魔法で土を耕し、樹魔法の竜力をたっぷり混ぜて栄養満点の土へと変える。

 そして野菜の種を風魔法でばら撒けば、三分もかからずに立派な野菜畑の完成である。

 後は放っておいても徐々に時間をかけて成長し、数日後には収穫もできるだろう。



「これなら管理は適当でもいいから、魔物達でも世話できるだろう」

「魔法で畑を作ると楽でいいね。でも地面に壁はないからワームとか来そうじゃない?」

「壁は地中深くまで埋めてありますが、もっと深くから侵入してくることもありそうですからね。確かに何か対策した方がいいかも知れません」



 空は蒼太が巡回してくれるので問題なく、地上にはワニワニ隊もいるので安心だ。

 けれど土の中までは失念していた。そこでどうしたものかと竜郎が考えていると、奈々が提案をしてくれた。



「なら目には目を。ワームにはワームをぶつけると言うのはどうですの?」

「一匹でもスピード特化型にして地上におびき寄せるくらいの事が出来れば、あとは他の連中が処理してくれそうっすし、いいかもしれないっす」

「それもそうだな。見た目が気持ち悪いと言っても、取れる手があるのならやっておくか」



 思い立ったが吉日。ワームの素材を《復元魔法》で直したりして数を用意すると、《魔卵錬成》。

 白茶色の水晶球の魔卵が出来上がった。



「等級はいかほど?」

「3だな。──ん、けど4に近い3.9だ。実力の割に結構高かったんだな」



 地中で漁夫の利を狙っていたため大したことは無いだろうと思いきや、意外と高めで竜郎は目を丸くした。



「ならもう一個ワームの卵を作って合成すれば、4にできそう?」

「そしたら蟻蜂女王と同格になりますね。虫同士で相性はいいかもしれませんよ」

「それは言えてるな。ハチはともかくアリの方は地属性もそれなりに入ってそうだったし、ワームは魔卵を作る時にかなりの比率が地属性だったしな。面白い化学反応が起こるかもしれない」



 そう言いながらさっそくもう一つワームの卵を作って合成。

 等級は4.1になっていた。シミュレーターで見る限りでは、一回り大きくなり、歯が太くなった程度の進化だった。

 そして同じ等級4の蟻蜂女王の卵を複製した物を出すと、それとワーム×2の魔卵を合成した。

 すると薄茶色の拳大ほどの水晶球が出来上がった。



「等級は5か。6への二段階アップは流石に無理だったみたいだな」

「それでも等級3のワームには後れを取る事はなさそうですの」



 さっそく複製してから《強化改造牧場》に入れて、シミュレーターを起動させる。

 そうしてこのまま孵化させた場合の映像が視界に入ってきた。



「蟻成分が多めってとこか? 蜂も蟻も似ているからよく解らないが」

「けど後ろの方を見ると、ワーム成分も結構あるっすよ」



 そこには蟻もしくは蜂の頭部と上半身を持つが、はねと六本の足は無くなっていた。

 下半身はワーム成分が幅を利かせ、長く細長いミミズのようになっていた。

 そして足の代わりに鯨の様なヒレがワーム部分に四つ付いていた。

 さらにお尻の末端にはワームの口があり、頭にもお尻にも顔があると言う奇妙な魔物になっていた。



「しっかしキモいねー。蟻とか蜂ならまだ見れるんだけど、ワームの下半身がヤバいよコレ」

「けど等級5なら大よそ亜竜や下級竜よりは上くらいなはずですし、そこは目を瞑りましょうよ姉さん」

「うーん。なら形を改造しちゃうとかどお?」

「けどなぁ。多分これは地中に適した形なんだろうし、形を変えてその特性を殺すのももったいない。このままの方が任せる仕事的にも適しているはずだ」

「そっかあ。なら仕方ないね」

「ああ。しかしそうなると、どんなタイプがいいと思う?」



 竜郎がレーダーチャートを出すと筋力、耐久、速力の物理系がそれぞれ高めで、魔法系はやや低めと言った性能がデフォルトになっていた。



「地中の敵はワームだけって事は無いかもだし、魔法系も多少ステをふっといたほうがよくない?」

「ならいっそ、ワニワニ隊みたいに数を増やすって言う手もあるっすよ。

 それなら魔法対策用の一匹を入れるだけで、大分変ってきそうっす」

「ワーム地中防衛隊編成か。胸やけを起こしそうだな……けど地中っていう特殊な環境だし、三体くらいで巡回させれば事足りそうだ」



 という事で竜郎は新たに二つ増やして物理タイプ、魔法タイプ、万能タイプの三体を作る。

 それから神力を数字で言うと5くらい混ぜて孵化させると、さっそく表に出してみた。

 そうして現れたのは下半身──ワーム部分のみだったお尻の先端には口ではなくドリルのような白金色の大きな針が飛び出していた。

 そうなるとワームの口は無くなったのかと思うだろうが、下半身部分の背中側に口が移動しているだけで、しっかりと健在であった。



「うーん。まあ、パッと見はもとよりマシだな。それじゃあ、これから頼むな。えーと……」

「ムー一号、二号、三号でいいんじゃない?」

「豆太や蒼太との違いが著しいな……。ワニ達もそうだから別にいいんだが。

 それじゃあ。ムー一号、二号、三号。これから訓練し、それが終わったらここの地下の防衛を頼んだぞ」

「ジジジジジジーーーーー」



 呼称などには興味などなく、ただ盲目に一声鳴くと、《強化改造牧場》内へと戻り仮想の敵相手に訓練を始めたのであった。

おそらく今週中に今章は終わる見込みです。

それと現在進行形でリアルでいくつか厄介事が舞い込んできたので、

八章終わりから最長で一週間ほど休ませてもらうかもしれません。

九章開始の更新日の確定情報は日曜更新分でお知らせいたします。

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