第334話 それぞれの王様
史上最高ランクの冒険者へと至った竜郎達はギルド長と、細々とした追加説明を求められた際に、風山をどうするかも聞いてみた。
けれど話し合った結果、また妙な魔物が産まれても困るからという事で化石は全部竜郎達が保有しておくことに落ち着いた。
それから一日過ぎた次の日。現在、竜郎達はカサピスティの王城の宝物庫にいた。
依頼達成の報酬選びで、全依頼達成の報酬なので一人一点ずつ選べる。
なので皆気に入った物は無いかと、目録を見て現物を見て品定めしている最中だ。
それぞれ歩き回るメンバーの近くでは管理している人が付きしたがっていて、質問をすれば答えてくれるらしい。
目録の中で竜郎は気になった物が有ったので、さっそく質問してみる事にした。
「この《復元魔法》のスキルカードとか、名前からしてかなり便利そうなのに誰も使わずに取ってあるんですね」
「え? ああ、それですか。確かに何やら便利そうではあるのですが、誰がインストールしようとしても出来ないのです。
何か条件があるようなのですが、それも解らず……でもスキル的には聞いたことも無いほど珍しいので、とりあえず宝物へ──と言った具合でして」
「条件ですか。そういうのが必要な物もあるのですね」
「スキルカードも万能ではない。という事ですね」
そこで竜郎は実際に見たいと言って案内して貰うと、ダンジョンで景品として貰った時のものと似た形状の白いカードが、透明なケースの中にしまわれていた。
解魔法で何か解らないかケースを土魔法ですり抜け探ってみると、施錠魔法に似たようなロックがかかっている事が判明した。
どうやらこれが先に言われていた条件なのだろう。
(これって……もしや)
「すこし手に取らせてもらう事は出来ませんか?」
「ええ。いいですよ。ですけどもし万が一、インストールしてしまった場合。それが貴方の報酬という事になりますが、よろしいですか?」
「かまいません」
了承すると直ぐにケースのカギを管理者が開けて手渡してくれた。
それを軽く頭を下げながら受け取り右手でカードを持つと、そこへ《時空魔法》の魔力を少し流し込んでみた。
すると一瞬ピカッと光を発しはじめた。
「──な、何をなさっているのですか!?」
「……っと、すいません。僕はこれにすることにします」
「えっと……、もしやインストールできそうなのですか?」
「はい。出来ると思います」
「いっ、いったい何が条件だったのでしょうかっ?」
「それは秘密です」
「えー……」
長年謎のまま放置されていた謎が解き明かされたと言うのに、それを教えて貰えず残念そうに管理者は項垂れた。
少し可哀そうだとは思ったが、その条件は《時空魔法》を取得しているかどうかである。
そうそう教えるわけにはいかないだろう。
(どうせ俺ぐらいしか使えないんだから、有難く貰っておこう)
そうして竜郎は新たに《復元魔法》のスキルカードを手に入れることとなった。
一方、愛衣は愛衣で目ぼしい物を見つけていた。
「あ、これかっこいい! これがいいかもっ! 私の勘が囁くの!」
「変わったモノを選びますね」
愛衣が指差したのは、見た目的には金色のラブリュス──つまり対称形の両刃斧と言ったところだろうか。
だがこれは一本の柄を中心線として置かれる対称の刃の背の部分に、獣の牙の様な突起が大中小の三本ずつ両方についていた。
そこは気力で操作することによって刃を横に動かし、《かみつく》が出来る様な構造になっていた。
つまり《斧術》と《獣術》両方が使える武器という事になる。
更にこれは天装で、気力を込める事によって特殊な事象を引き起こす。
「どんな効果があるの?」
「これはもう長い事使い手が見つからず放置されていたものです。
聞くところによれば、大量の気力を与えることにより物を吸いよせる力があるそうです」
「掃除機みたいな物かな。まあ、いいや。これくーださいな」
そうして愛衣は新たな天装を手に入れた。
他のメンバーもそれぞれ気に入った物を選んでいき、カルディナは魔砲という筒状の杖で、あらゆる魔法を撃ち出す事が出来、尚且つ魔弾持ちだとさらに補正がかかる物。
ジャンヌは《風閃斬存》という、風魔法が使える武術系クラスの人間が扱えるという、武術、魔法両方を修める事の難しい中、使われる事なく残っていたスキルカード。
奈々はカエル君杖の更なる改修に使えそうだとリアに言われた、漆黒の宝石。
リアは頭の中に描いたものを、魔力で造りだした紙に映し出す水晶玉。
アテナは今使ってる鎌の改修に使えそうだとリアに言われた、黄色く透けた鉱物の原石。
そして最後に天照と月読はと言えば──。
「本当にそれでいいのか? 二人とも」
二人のコアが同時にピカピカと輝いて、それでいいと訴えかけてきた。
それは『開花の石』と呼ばれるレベル49の人間を強制的に壁越えさせ、レベル50へと押し上げる赤と青が混じりあい、不思議な光を常に発している五センチほどの石だった。
だが天照と月読なら、時間をかければ自力でのレベルキャップ突破も出来るはずだ。
そう考えた竜郎は、もったいないのではないかと言う意味で確認した。
けれど二人は早く姉たちに追いつきたいらしく、また今の自分たちの壁がいつ現れるかと言われれば想像もできない。
皆強くなりすぎて大抵の事はやってのけてしまうからだ。
なのでこの機会にサクッとあげてしまいたいらしい。
「現在は6個もあるので、そうは思われないかもしれませんが、我が国が建国以来、四千年以上かけて少しずつ集まってきた貴重な石です。
ですからその石を発見するということが、一つの壁の様な物だとも言われています」
「そう言う考えかたもありますか。まあ、天照や月読自身がいいと言うのならかまわないんだ、それにしよう」
天照、月読のコアが光り輝き二人のモノも決まったのだった。
そうして全員が選び終わると、宝物庫からそれらだけを各々が持ち出して再び厳重な鍵が掛けられた。
後は勲章授与と土地の権利書を貰って、今回の報酬を全て受け取った事になる。
なので次は廊下を案内されるがままに歩いていき、王の謁見の間へと通された。
そこへ入って行くと、おそらく国の重鎮であろう人たちが十五人ほど両脇に整列しており、一斉に竜郎達へと視線を向けられた。
けれどそれは好奇心や羨望の眼差しで、嫌な視線を送って来るものは誰一人としていなかった。
そんな大人達に見守られながら、玉座までの真っすぐな道のりを皆でとことこ歩いていく。
そして段になって少し見上げる様な高い位置に座っていた王に、会話が出来る程度の距離まで近付いた所で、先導してくれた人が止まるように指示して自身はささっと壁側の脇へと去って行った。
王の両脇には以前一緒に来ていたファードルハと呼ばれていた男と、もう二人いたエルフのうちの一人が控えていた。
竜郎達が静止し、周囲の大人達の空気も落ち着いてきたところで王──ハウル・ルイサーチ・カサピスティが口を開いた。
「此度は略式であるが故、この様に簡素な形になってしまったが許してほしい。
今からでも我が国の貴族になると言うのなら、盛大なパレードも用意できるのだが──」
「──いえ、それは結構です!」
「そうか。残念だ」
口にした言葉とは裏腹に、断られるのが解っていたのだろう。ハウルは全く残念そうな顔をするでもなく、そんな物をされてたまるかと慌てる竜郎に対して少し茶目っ気のある笑みを浮かべていた。
「では、これよりハイアルヴァ勲章の授与を執り行う」
ハウルはフランクな表情から一転、一気に引き締まった凛々しい相貌に切り替え、略式ながら感謝の言葉や竜郎達の功績などをつらつらと述べた後に、ようやく竜郎達の前に勲章が出てきた。
ただ竜郎や愛衣は、映画やアニメに出てくるようなバッジタイプを想像していたのが、小さな台に乗せられうやうやしく側近の人が出してきたのは、紫色にカサピスティの国章が薄らと刻まれたプレートだった。
そしてそれを竜郎達を含め、カルディナや天照達も受け取り、手にしっかりと持つように言われたのでその通りにした。
「ハウル・ルイサーチ・カサピスティの名において、この者達九名に、ハイアルヴァ勲章を授与する!」
王がその発言をするのがキーワードだったのか、そう言った瞬間に竜郎達の持っていた紫のプレートが粒子となってそれぞれの体に吸い込まれていった。
「これで君たちのシステムに登録されたはずだ。確認してみるといい」
「では、さっそく」
竜郎達が自分のシステムを立ち上げると、システムの立ち上げ画面──ステータス、所持金、パーティ、スキル、マップ、アイテムボックス、冒険者ギルド、ヘルプの項目の他に、カサピスティという名が追加されていた。
試しにその項目を開くとハイアルヴァ勲章という項目があり、そこをさらに開くと立派な勲章の模様と、それがどういう勲章なのかという説明文が出てきた。
それを見せれば何処の国でも、カサピスティという国で功績を立てて、貴族位クラスの身分を持っているのだと理解させられる様だ。
それを見終ると順次システムを切っていき、再びハウルに視線を戻した。
「しっかりと受け取れていました」
「であろう。そして次は土地の権利書だな。これは代表者一人にしか渡すことは出来ないが、誰が受け取る?」
「えっと────じゃあ、僕でお願いします」
竜郎が他に目線をやるとどーぞどーぞと、誰も前に出る気配も無くこちらを見てきたので、自ら名乗り出た。
すると今度は同じように紫色のプレートだが、形が六角形で国章の刻まれた物をさし出された。
それを竜郎が受け取るのを確認すると、再びハウルがキーワードらしき文言を口にする。
「ハウル・ルイサーチ・カサピスティの名において、この者に、ソルルメシア。ソルルレシフ。その両方を授けることとする!」
先と同じようにハウルの言をきっかけに粒子と化して、竜郎の体に吸い込まれていった。
その後また確認するように言われたので、竜郎はシステム起動。カサピスティの項目を開くと、ハイアルヴァ勲章の下に、ソルルメシアとソルルレシフという二つの名が追加され、そこをさらに開けば領土を示す地図と、誰の所有かなどが細かく書かれた物が表示された。
「はい。確かに受け取りました」
「うむ。これにて授与式を終える」
そうして竜郎達は、正式に勲章と土地を王から貰ったのだった。
その後は他の国の重鎮──貴族らしき人達に食事に誘われたり、アテナに一目惚れして結婚を申し込んできた者がいたりと散々であったが、それらを何とか躱して竜郎達はハウルとその取り巻きと言えば良いのか、以前いた四人を合わせた人たちと別室で幾つか話し合いをした。
内容はララネストの肉の受け渡し方法や、竜郎達が貰った土地の管理についてのお願い(強制ではない)など細々とした事を話した。
受け渡し方法は森と草原側──ソルルレシフから一番近い町に倉庫を設け、そこへハウルが選定した商人を向かわせるというものだった。
しかしその方法ではせっかくの肉が劣化してしまうのではと言ったら、倉庫は魔道具によって巨大冷凍庫にするらしい。
また運ぶ時も冷凍魔車(冷凍庫を積んだ巨大な車で、魔物に運ばせるものを指す)で、品質を出来る限り保ったまま王都まで運べると豪語していたので、それでお願いした。
正直竜郎が時を止めた《無限アイテムフィールド》に入れた状態で、王都に運び入れた方が品質も冷凍物より高くなりそうだが、わざわざそれを言う必要もないし、そちらの方が適当にできそうなので黙って了承した。
また土地の管理でのお願いでは、魔物を出来る限り町の方へは行かない様にしてほしい。というものと、適度に間引きをしてほしい。というものが主だった。
竜郎達もいつまでもそこに詰めている訳ではないので、常時は無理だとはその場では言っておいた。だが一つ考えていることは有るので、まあ大丈夫だろうなとは思った。
後は税金関連のもろもろの話だが、基本的に広大な土地や、そこに今後建てる施設などにかかる固定資産税は英雄特権的なもので完全免除してくれるらしい。
けれどララネストなどの水産資源や、森などで取れる森林資源。未開拓の土地でとれるかもしれない鉱物資源。それらを売りに出したとき、また内部で何らかのお店を開き、お金を稼いだのなら何割か国に税を落としてくれないかと言われた。
そこは他の商売人たちとの折り合いをつける為にも必要なのだそうだ。
『ララネストはともかく、他は今の所興味ないしな』
『だね。他にも美味しい魔物がいるなら考えるけど』
別にお金には困っていないし最低限の徴収しかしないらしいので、それで構わないと答えておいた。
自分たちのプライベートビーチと、美味しい海産物以外にはあまり興味のない二人には問題ないのだ。
そうして特に荒れる事も無く、終始穏やかな雰囲気でハウル達との話し合いを終えた。
この国の王たちにゾロゾロと歩いてついてこられても座りが悪いので、見送りは丁重に断って客間らしき豪華な一室から退席した。
扉が閉まり終り、その後ろ姿が見えなくなり、メイドに案内されて城外へと向かう竜郎達を確認したハウルと四人の男たち。
その中で以前竜郎達が広大な土地を持つことに反対していたファードルハと呼ばれていた男が口を開いた。
「まさか以前、私が口にした冗談が通るとは思いもよりませんでした」
「え? どういう事ですかファードルハ様?」
この場にいる唯一の人種の男が、言葉の意味を捉えきれずに疑問をていした。
それにファードルハではなく、ハウル自らが答えてくれた。
「なに。彼らにお勧めの土地を聞かれたら、どの町を紹介するかという話をファードルハとしていてな。
そのときこいつは、ふざけてソルルメシアとソルルレシフのどちらかを与えて、治めて貰ったらどうかと言ったのだ」
「え? ですがあの時、真っ先に反対なされていたではありませんか?」
「確かに驚いたと言うのもある。だがあそこですんなりいきすぎては、変に警戒されてしまうかもしれないではないか。
だから反対意見もあったという事実を見せておきたかったのだ」
ハウルに続いてファードルハ本人が、人種の男の疑問に応えた。
「けれどあの時ファードルハ様が仰っていた事も、もっともだと思いましたが。
国民でもない人間にそこまで気を許しても構わないのですか?」
「あの者達なら大丈夫だ、レス。私の目には、悪い感情は映らなかった」
「ヨーギさんがいうのなら、確かに信用はおけそうですね」
魚人種のヨーギは相手の感情を観るスキルをもっている。これにより、相手が嘘をついているのか、悪い感情を心の底で抱いているのかなど、色で観ることが出来るのだ。
それで納得したように人種の男レスは頷いた。
「だがそれだけではないぞ、レスよ。私の耳には、あの者達は武神と魔神の御使い様であるという情報が入っているのだ」
「──っ!? それは本当ですか、陛下!?」
「嘘を言う理由などないであろう。そしてそんな二人なら、人柄はその大神二柱が保証してくれるという事だ。
それにだ──もしお前が他国の人間だとして、御使い様が広大な土地を所有する国には、どう対応する?」
「そりゃあ、解りやすい所で言えば絶対に戦争行為は起こせませんね。万が一にでも、御使い様の邪魔をして──って、そう言う事ですか」
「その通りだ。あの二人は、ただそこに土地を持っていると言うだけで、他国への牽制となる。
また我々が危険域を指定したわけでもなく、向こうから熱望してきたのだから、そこへ付け入る隙もない。
国を救って貰ったばかりか、危険域の管理もしてくれるというのだから、これからはこちらも最大限便宜を図る用意をせねばならん。貰ってばかりでは、良いように使っていると誤解されて神に怒られてしまいかねん」
「それならば、美味しい食材関連の情報を集めて渡すのはいかがでしょう。
あちらも相当食好きの様でしたし」
「それはいいな、ジネディーヌ。手配を頼む」
「はっ」
そうしてジネディーヌと呼ばれたエルフの男とファードルハの文官二人は、仕事に戻るべく部屋を出て行く。それを横目で見送ったヨーギが一言。
「陛下。ララネストの肉が手に入ったのなら、私にも是非」
「解っておる。お前も好きだな」
「陛下には負けます」
「ははっ。そうか」
などと言い合う二人を見つめ、一人話に入り損ねたレスは、他国への牽制うんぬんよりも、そちらの方がむしろメインだったのではと、先輩と王相手には言えない疑問を密かに呑みこんだのだった。
竜郎達について情報を集めていたヘルダムド国の王に、カサピスティで広大な土地を与えられたと言う一報が舞い込んできた。
「なんだと! くそ、先にやられたかっ。
なんとしてでも他国の王より先に懇意な関係を築きたかったのだが……。して何処を与えられたのだ?」
「ソルルメシアとソルルレシフだそうです」
これ以上自国に失礼があってはならないと情報収集を買って出ていた魔法十二衆が一人、樹魔法のアシルが、部下から受け取った情報をそのまま伝えた。
「ソルルメシアとソルルレシフだと!? ハウル王は二柱の御使いを、良いように使おうとでもいうのか? 愚かな男よ、遂に狂ったか」
「いえ、情報によれば自分達からそこが欲しいと所望してきたそうです。
さらにそこで取れる水産資源の取引まで密かに結び、関係はとても良好だと」
「自ら希望して来た? …………それも何かの啓示でもあったのか。
どうせならわが国でも良かっただろうに…………。神よ。何故、我が国に先にお越しになったのに御使いを余所へやってしまったのですか」
ヘルダムド王は、四十過ぎの人種の男にしては若若しい顔を悔しそうに歪め、ションボリしながら天井に向かってそう呟いた。
「やはり慎重を期さずに、ドンをもっと早く処しておくべきだったと言う事でしょうか」
「かもしれん。はぁ……後はリャダスの領主に、何とか縁を繋いでもらう他ないのかもしれんな」
「彼女は現在とても多忙ですよ。確かに御使い様と友好を結ぶのも大切ですが、あちらもこれからの我が国の行く末を大きく担っているのですから」
「それもそうだ。だがもしリャダス領主に会いに来るようなことがあったら、直ぐに私に連絡を入れるように頼んでおいてくれ。何処にいようと私が飛んでいくと」
「御意に」
そうしてその他の情報にも耳を傾け、時に目を見張り、時に首を傾げ竜郎達の英雄譚を耳にすればするほど、血涙を流すのではないかと言うほど悔しがった。
何を隠そう。このヘルダムド王は英雄というものに長年憧れを抱いていた。
幼少時に祖父に建国の英雄にして自分の祖である人物の御伽噺を聞いてから、ずっとである。
まずは自分がなろうとした。けれどスキルにそこまで愛されずに挫折した。
ならば他者でもいい。と思い強き者を探せど、そうそう都合よく英雄と呼ばれるほどの人間は見つかるわけがない。
そして彼が思いついたのは、若き才能を見出し全力でバックアップして早期育成し、英雄を生み出そうとまでする事だった。
そんな時に現れた二人の英雄。しかも武神や魔神の御使いなど、聞いたことすらない。
英雄フリークを患っている彼からしたら、スーパースターなのだ。
そんな彼の心情を察しつつ、全てを話し終えたアシルは引き続き竜郎達の情報収集に向かうため去って行った。
一人残され玉座に座ったまま項垂れるへルダムド王──。
「会いたかった……。でなくてもサインや手形が欲しかった」
そう誰に言うでもなく、ポツリと力なく言葉を漏らしたのであった。
これにて、第七章の終了です。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。




