13
聞いてほしい事がある。今日、俺は誕生日なんだ………13歳の………
そんな日にさ、そんな日に俺が何してるかって言うとさ………
「構えぇぇぇ!!!!撃ええぇぇぇぇ!!!!」
鉄砲持って、戦争してます。
只今、1561年。去年の秋辺りだったかな。大隅を拠点にしてた肝付さん家がね。廻城っていうお城をね、占拠したの。そしたらね、そのお城がねとっても大事な場所にあってね。家のトップのね、貴久様がね「戦争するよ」ってね、言ったの。だからね、今ね、戦争してるの!
………まぁ、現実逃避に幼児退行しても何も変んないんですがね。
「盛敦隊、抜刀!!!」
「抜刀!!!!」
「抜刀ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺の合図に続き、部下達が抜刀する。
「かかれぇぇぇぇ!!!」
怒号。悲鳴。金属音。散発的な発砲音をアクセントに、戦場の音が紡がれてゆく。戦闘狂なんかは、これを音楽の様だと楽しめるのだろう。だが、俺はそんなイカレた感性なんて持ち合わせてはいない。ただ………
今回のは、岩剣よりましだね。
そんな感想を持っただけだ。
実際、敵のやる気が無いのか、はてまた島津の兵が強いのか。俺の担当している東側では、始終味方が押している。
とは言え、13になりたてのこの幼い躰に最前線はかなりきついものがある訳でして。
「ぐっ………うわ!?」
名も知らぬ肝付の雑兵と、鍔迫り合いになったかと思ったとたんに押し倒される。
「っ!!」
カタカタとお互いの鍔が鳴り、じりじりと欠けた刃が迫る。体感時間がじりじりと引き延ばされて行き、延々とこの時間が続くかも知れないなんて、あり得ない考えがちらりと脳裏をよぎったが、終わりはあっさり訪れた。
スパン。そう、スパンという音と共に急に視界が開けた。飛び込んでくるのは、青空を背景にした赤い奔流。俺を押し倒していた相手の、首から上が消えた。迸る鮮血に顔を濡らして呆けている俺に、声が掛けられる。
「頭、御無事で?」
「あ、ああ。矢次郎。ありがとう。」
「しっかりしてくだせぇ。」
「13の餓鬼に無茶苦茶言うなぁ。」
「………そういやぁ、そうでしたねっ!!」
言いながら突っ込んできた敵を切り伏せる矢次郎。か………かっけぇ!!!
「俺も負けて」
そこまで言いかけた所で
「盛敦どん!盛敦どんは居かぁ!?」
「へ?義久様!?」
本来なら、もっと後ろに居る筈の義久様に呼ばれた。
「おお!!生きちょったか!!」
「は、はぁ。お陰さまで。」
「良かった、良かった………て、違ごかち。一旦、退っど!?」
「うぇ!?な、何でです!?今こっちが勝って」
「西んが崩れもした!!忠将ん叔父が討たれちょっど!!!」
「は!?」
忠将様って、確か貴久様の弟………
「兎に角、一旦下がっど!!」
………都合良く、敵も後退を始めている。このタイミングなら、追撃を受ける可能性も低そうだ。
「盛敦隊、退け!!退けぇぇぇ!!!」
いまいち状況が呑みこめないが、兎に角撤退しなきゃ。そうして俺と俺の隊は、前線を後にした。