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20:夏休みの課題?

いつものアラームの音で目を覚ます。

「ん……夏休みだっちゅうの」

画面をスワイプしてまた目を閉じる。

違うアラームの音がなる。

「何の間違いだよ……」

再度スワイプして横になる。

ウトウトしたところで今度は離れたところにある目覚まし時計が鳴る。

「うるさいっ……なんで机の上に置いてあるっちゃ」

仕方なく起きてアラームを止める。

「あ、ヤバ、バイトだ、逸乃にラブコールするんだった」

目覚まし時計の横に置いてあるメモで思い出した。

コールする予定の時間まで15分ある。

落ち着いてかけようと、先にトイレを済ませることにした。

ついでに洗面所で口をゆすいで、鏡の前で自分の顔を見てニヤつく。

「逸心よ、夏休みの計画を遂行せよ」

自分で言って照れくさくなったが、言い聞かせも大事なのだ……

部屋に戻って、目覚まし時計の秒針を目で追いながらスマホに手をかける。

今だ……画面をタップしてコールする。

呼び出し音がなる。

ワクワクと嬉しさで口がふにゃふにゃになってる感。

・・・ん?出ないな……逸乃?

仕方なくかけ直した。

……あれ?……爆睡してるのか?

「……ん」

「逸乃っ、逸乃っ……」

プツっと途絶える。

逸乃め、寝ぼけてるな。

再度呼び出す。

……逸乃、起きてくれ。

朝一番の逸乃の声を聞かせてくれよぅ。

寝ぼけていようが俺はテンションが上がっていく。

「……はい」

「あっ、逸乃っ、おはよっ、逸乃、起きた?」

ドキドキしながらカンペを見るのも忘れて喋りだす俺。

「あぁ、逸ちゃん?ごめんね、逸乃なかなか起きなくて、おばちゃんが責任もって起こしておくから、悪いけど時間通り迎えにきたってね」

……おばさんかよ。

今のドキドキ返してくれよ。

テンションが下がるも準備を始めて、洗面所で歯磨きして、ワックスで髪に流れを付け、鏡でチェックしてから台所に入る。

「あれ、母さんも起きたと?」

今日は遅番ときいてて、菓子パン食べるから起きなくていいと言っとったのに。

「逸が何回もアラーム鳴らすき、起きんワケないっちゃ」

「ごめん……」

母さんは呆れた表情でゆで卵とホットココアをだしてくれた。

「初バイトやし、遅刻せんとよ」

暑いのにホットココアって……と思いつつ、俺が好きだからだろう。

ゆで卵は「俺革命」の頃からの朝食に欠かせないタンパク源になっている。

「ありがとう母さん」

「コップは水につけといて。母ちゃん寝るわ」

時計を見ながら朝食を済ませて、準備物をカバンに入れて外に出る。

5時すぎでも、もう外は明るい。

予定通り、逸乃の家に向かう。

「逸乃、おはよ」

玄関で靴を履いている逸乃に声をかける。

「逸……おはよ」

顔を上げた逸乃はやはり眠そうな顔をしている。

寝ぼけた顔も可愛い。こんな顔見れるの俺くらいだろ。

「逸ちゃん、ごめんね、頼んだわね」

おばさんが逸乃の後ろで両手を合わせて小さく頭を下げた。

「はい、行ってきます」

俺も小さく頭を下げる。

口数少ない逸乃を横からみて赤痣が無い頬もほんのり赤いのが気になった。

「逸乃、どうした?なんか頬が赤いっちゃ」

挿絵(By みてみん)

無意識に逸乃の頬に触れていた。

……心臓が跳ねた。

「あ、悪い……」

「ん……母ちゃまにつねられたんよ」

どんな場面だよ……想像したら笑えた。

「逸乃はホントに朝が弱いな」

「今に始まったことじゃないと」

俺が触れた頬に逸乃も撫でながら言った。

笑えるけど、キュンとくる。

「今度は携帯に逸乃が出ろよ」

「わかってるっちゃ……何かおもしろいこと言ってね」

え……なんでそうなるん。

俺はラブコールの予定なんだが。

「おぉ、おはよう、時間通りに来たな」

おじさんとおばさんが待ち合わせの車庫で待っていた。

「若い子が手伝ってくれるの嬉しいっちゃが」

おばさんが車の後部座席のドアを開けて、乗るように促した。

ところどころぶつけて、凹んだり塗装がはがれてる白い軽のバンだった。

乗ると土と草の匂いがする。

逸乃は動きが鈍く、座っても奥に行ききれずに俺と腕が接触したままだ。

車で15分くらい走ったところでビニールハウスが並ぶところに到着。

アスファルトでも凸凹が多く、そのおかげで逸乃も目が覚めたようだった。

「降りたら、みんなと軽く体動かしてから作業に入るからね」

数人おばさん(お婆さん?)が待機しており、集まりだした。

「あら、若い子って原田さんとこの……」

「あぁ、逸乃ちゃんと逸心くんか」

やはり近所の人っぽい。

「いつも通り体操してから始めるよ~」

(ほこり)がついたスピーカーからラジオ体操が流れ始めた。

みんな真面目に体操しているが、微妙にちがう動きに俺は笑うのをこらえていた。

横で正しい動きの逸乃を見ると、また可愛らしい。

キュウリだろうがトマトだろうが、一緒のバイトで良かったっちゃ。

「二人とも今日は慣らしじゃから、少しずつ手ぇ出したら良いよ。」

おばさんが先導してビニールハウスに向かう。

「汗が噴き出るからタオル首にかけんね」

帽子を深くかぶったお婆さんが俺と逸乃に言った。

「それぞれ先輩について教えてもらっちょって。水分とってからね、20分くらいで一旦休憩入れるっちゃが」

「先輩やて」「こき使われるわぁ」「私は優しいとよ」どよどよと高齢女子が言っている。

緊張感がどっかいったままだ。

ビニールハウスの入り口に立っただけで熱気を感じた。

「逸心くん、今日はキュウリな」

軍手(ぐんて)(はさみ)を受け取り、おばさんが入っていく後ろについていく。

「うわ……」

俺の声におばさんは期待通りという表情で笑ったのが見えた。

めっちゃ暑い……俺サウナとか入ることないけど、これ……サウナやな。

「見て、こうやるとよ」

土と緑の匂いが濃い。

奥まで入って、手本をみせられた。

「持つとこ気を付けて、切るのはこのへん、サイズはこれくらい、収穫し忘れると次の日、()()デカくなり過ぎるき、急がんでいい、取り忘れしんようにしてほしいがよ」

なれた手つきでつぎつぎと収穫するおばさん。

「してみ」

言われた通り一つ収穫してみる。

「難しいことないっちゃが」

「はい」

「今日はゆっくりでいいっちゃが」

おばさんは俺が収穫した後をチェックしながらということで横についてくれている。

「痛っ」

「ほれ、言うたっちゃ、慌てんでいい、そこは持ったらいかんちゃ」

びっくりする痛さに驚く。

キュウリの分際(ぶんざい)でするどい(トゲ)がついとる。

軍手してても刺さるって……。

汗が噴き出す。

「血はでとらん?鋏の()の部分や切り口汚さんでよ」

「はい」

その後黙々と作業する。20分なんてあっという間に過ぎた。

「ぷはぁ」

再度みんな集合して水分補給をする。

「逸、ほら」

「ぎゃっ」

逸乃が俺の首に冷えたペットボトルをあてた。笑いが発生する。

凍らせた“塩日向夏水”だった。逸乃の配慮が嬉しい。

「おっきいなっても仲が良いの変わらんっちゃ」

俺たちを知ってるらしいお婆さんが冷やかした。

「そおっちゃよ。私も逸も変わらんとよ」

肯定する逸乃にジワる俺。

「もう夫婦じゃね」

口々に好きなこという高齢女子。

おうよ……そうなる予定っちゃ。

まずは彼氏になるっちゃ。

居心地のよい場所だった。

汗は噴き出るものの、穏やかな空気。

「さあて、続きするっちゃよ」

二度目に入るビニールハウスは更に温度が上がってる気がした。

こまめな休憩もあり、あっという間の3時間だった。

「初日じゃからこんな感じ。大丈夫じゃろ?」

車に乗り込むとおじさんがそう言ってきた。

「はい、大丈夫かなって」

問題は逸乃の起きることだけ。

毎回つねられたらさすがにキツいだろ。

「次は4時間でも大丈夫っちゃろ?草刈りもあるで、帽子もかぶってこいな」

車から降りるとさっそくキュウリの入った袋を渡される。

「曲がってて出荷できんやつやからええんよ、じゃ明後日やね」

2人は次の作業があるといって俺と逸乃は家に向かって歩き出した。

「逸乃はどうやったと?大丈夫やった?」

「思ったより楽しかったっちゃ、ただ、暑いぃ」

暑さより逸乃は起床が辛いだろ、と内心でツッコむ。

「もー今日は疲れたからシャワー浴びたら、見ようと思ってた海外ドラマみて昼寝するっちゃ」

子どもの夏休みじゃん……と思いながら俺もそうなると思う。

「海外ドラマって何見るっちゃ?」

「タクがね“Lie to me”っていうドラマにハマってるって言うちょったが」

……またタクかよ。

「それって恋愛ドラマなん?」

「違うっちゃ、なんか相手のしぐさや表情見て、心理を読む?的な……タクが面白いって言うから夏休みに見ようと思って」

タクっぽいな、これから見るなら俺も話題に入りたいっちゃ。

「それってネトフリ?ディズニープラス?」

忘れんようにメモっとこ。スマホをだす。

「うん、両方、Amazonプライムでもみれるって。逸も見ると?」

「ふーん、逸乃は韓ドラとか見んと?」

恋愛ドラマ見ろよ……と思いつつ。

「あぁ、“未成年裁判”は良かったっちゃ。逸なら“ムーブ・トゥ・ヘブン”見たら泣きそう」

逸乃の嬉しそうな()()に、いい話題に持ってった、と嬉しくなる。

泣いてやるぜ、それは感動する恋愛もんなんかな?スマホにメモる。

タクに話題もっていかれてばっかじゃな。

「明日はどうしてるん?」

「明日はカナと会う約束してるっちゃ」

またカナか。仕方ない明後日のバイトだな。

「んじゃ、明後日だな、目覚ましコール、出ろよ」

「わかったっちゃ、逸、期待してるっちゃ」

笑う逸乃にキュン(さつ)されそうになる。

まさに“アオハル”充実しそうっちゃが。

帰宅してシャワー浴びて、作り置きのチャーハンを食べながら、テレビ画面で検索する。

タイトルの「ムーブ・トゥ・ヘブン」をだした。


「逸、食べたら下げて水にくらいつけちょってよ、だらしなかね」

寝ていたらしい。すぐに意識飛んだのか……まだ全然見れてない。

あさってまでにどれかは制覇したいっちゃ……。

逸乃がどんな恋愛ドラマ見て、どんな感想があるか聞きたい。

晩飯(ばんめし)(あと)に、母さんとそのドラマを見た。

2人してティッシュを何枚も消費した。

3話までで、母さんがストップをかけた。

続きは明日にして、との命令が下された。

「幼馴染」要素がある……まさか、逸乃と俺もこんな感じなんか……。

……あいつ、俺のことこう見てるんやろか。

これはあるな……と期待を抱いて明日に持ち越した。


翌日、母さんが一緒に見る、ときかないので仕方なく「未成年裁判」を日中に見る。

・・・衝撃すぎる。こんなのあの二人は見てるんだ。

感情が追い付かずに疲れたので、半分の5話で見るのを止めた。

晩飯時(ばんめしどき)に母さんは韓ドラにまたハマりそう、とご機嫌だった。

俺は「未成年裁判」で少しテンションが落ちてしまったが。

「ムーブトゥヘブン」の続きを二人でタオルハンカチを準備して見る。

恋愛ドラマだよな?最終で展開変わるのか?

残り3話を残して母さんストップがかかった。

しぶしぶ鼻水をすすりながらテレビを消す。

「逸、明日の朝早いとやろ」

真っ赤な目をした母さんが風呂に入ってさっさと寝ろと俺を()かした。

風呂から上がり、前日と同じようにアラームを3つにわけてセットする。

「逸乃に何を言えば……」

勧められたドラマが衝撃過ぎて、面白いこと言えって……思いつかん。

なんか、夏休みの課題増えちょる……。

夏休みは始まったばかりだ……。


私の嗜好をいれてすいません わからない人すいません 気なったらドラマ見てみてね 私もかなり前に見たからうろ覚えだけど面白かった 挿絵、また雰囲気変わった?チャッピーが……チャッピーが(なすける)……次回の投稿も金曜日です 7月17日です パラ中は火曜日(また今の地点で真っ白だよ)

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