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手紙の返信中

 しばらく領地経営の勉強やら何やらをしているとまた手紙が来た。

 相手は例の女の子。

 その内容は……ちょっと重かった。


 女の子は神様から贈り物をもらう事が出来なかったそうだ。

 そのため家族も残念がっていたが、その周囲はチャンスと思い色々動いている気配がするらしい。

 それでも礼儀作法、知識は十分あるのですぐにどうこうという事はないらしいがキナ臭い感じがするそうだ。

 なので出来るだけ早く婚約者を見つけ、嫁入りする形で保護してくれる相手を探すそうだ。


 もう王族である事を隠していないように見えるが……貴族でも十分あり得る内容か。

 兄弟が多い貴族だと跡取り合戦が起こるなんて聞くし、ギリギリ貴族の会話と言えるのかもしれない。


 あと王族についてだが、陛下には5人の妻が居て去年会った殿下と今手紙をやり取りしている女の子は正室の子。

 側室達も子供を産んでいるようなのでどうしても将来どの存在に仕えるか色々予想し合っている。

 もちろん最も大きな派閥がこの間会った殿下な訳だが、順調に行けば殿下が次の王様だ。

 だが例の贈り物によってはそのランク付けも変わるかもしれないのが厄介なところだ。


 実際贈り物をもらったかどうかで判断する存在もいるそうだ。

 だから贈り物をもらった方が王にふさわしいと言い出す貴族もいると聞く。


 そう考えると家は俺もリリアも贈り物をもらったのだから本当に運がいい。

 それにしてもこんな事まで書いて本当に大丈夫なのか?


「それは何だ?マスター」


 手紙の返事を考えているとシルフィードがクッキー片手に現れた。


「手紙だよ。文通してるんだ」

「それはつまり……婚約者か」

「そうじゃない。友達だよ友達。前の社交界で会って仲良くなっただけ。そこまでの感情はないよ」

「そういうわりには随分気にかけているようだし、その方もマスターに心を許している。心を許した相手でなければ弱みなど見せないだろう」

「まぁそれはそうだろうけどさ。それでも婚約してるわけでもなければ何度も会ってる訳でもない。手紙のやり取りをする程度の間柄なんだよ」

「私から見れば十分脈ありとみるが……もしやマスターは鈍感か?」

「鈍感……って訳でもないさ。そりゃ俺が王族かもしれない子に好意を持たれてるのは嬉しくない訳じゃないけど、養う能力が無ければ婚約もへったくれもないだろ」

「……マスターにとって女性はどう思っている?結婚したくはないのか?」

「結婚はいつかしたいさ。でも今じゃない。ただそれだけ」


 本当に深い考えの様な物はない。

 ただ結婚する相手を養うと考えるとまだうまく金を稼ぐ方法もないのに結婚なんて無責任な事は出来ないというだけだ。

 かと言って口約束の様に気楽に婚約を結ぶような物でもないし、結婚できるとすればその辺をしっかりと整えた後だろう。


「……相手が結婚に積極的だったらどうするんだ?」

「積極的って……まぁそういう人もいるだろうけど、俺みたいな甲斐性のない奴にホイホイついてこようとする奴なんていないだろ。それにここは辺境だし、魔物の事だってある。王都から遠いというだけで嫌がる娘もいるだろ」

「そうなのか?そんな事ないと思うが」

「それじゃ例えば……王都に住んでいればいつでも美味いクッキーが食える、しかし辺境に引っ越したらそう簡単に買えないから気軽にクッキーが食べられない。これで伝わるか?」

「なるほど……人間は我々風の精霊のように動けないからな……だからいつでもクッキーが食べれる場所にいたがるっという事か」

「そういう事。だから不便でも構わないって娘でないと結婚できん。辺境だからやっぱりヤダとかあとから言われたら困る」

「むむ。人間とは面倒だな。好いているのであれば多少の環境変化など受け入れるべきだろうに」


 精霊と人間では種族として違う分受け取り方も違うんだろう。

 とにかく結婚するなら辺境でも構わないと思ってくれる人でないとダメだ。

 もちろん散財しないとか、浮気をしないとか最低限の事は守ってくれれば後は別にいい。


 それにまぁ……多分あの子も俺に助けて欲しいからこんな内容を書いたのだろう。

 かなり家の問題みたいなのを暴露してるし、本当にただの友達で済ませたいと思っていたら不安にさせるような内容は書かない。

 助けて欲しいから暴露していると俺は考えている。

 だから……まぁ……


「それでその手紙はいつ出すんだ?」

「出来るだけ早く書いてすぐ送るさ。そうじゃないと時間かかるし」

「時間がかかる?」

「人間が運ぶとなるとどうしても時間がかかるの。歩いていくから」

「それなら私が届けようか?」

「いや無理でしょ。会った事もない相手にどうやって手紙届ける気だよ?」

「住所は書いてあるんだろ?王都の……城か。そこでアレックスからの手紙だと叫べば出てくるんじゃないか?」

「その前に騎士達が何事かって出てくるからやめなさい。全くもう」


 そう言いながら手紙を書き終えた。

 一応シルフィードと言う精霊を召喚する事に成功し、今は護衛としてクッキー3枚で雇っていると書いておいた。

 冗談みたいな内容なので本気にしない可能性の方が高いかな?

 だが結婚の話で少し気になった事がある。


「なぁシルフィード。俺はお前の知り合いを召喚する事ってできるか?」

「?当然だろ。魔方陣を描き、魔力を流せば誰だってできる。難しいのは維持するための魔力の問題だ」

「そうじゃなくてさ、農作業とかに役立つ精霊を召喚する事は可能なのか聞いておきたかった」

「農作業か……人間の様に草木を手にする力はないが、土いじりが得意な精霊なら知っている。しかし彼らを召喚してどうするつもりだ?戦力にはならんぞ」

「戦力にする気はないって。ただそういう存在が増えれば野菜の収穫量が増えたり、色々できそうじゃん。だから聞いてみたかったんだよ」

「自然のバランスを保つのは精霊本来の役目だ。出来るだろうが……この土地だけを優遇するような事は出来ないぞ。その場合他の土地から魔力を搾り取ってしまう事に繋がりかねない」

「そこまでは頼まないさ。ただ畑の土が良くなるみたいな、そういう効果だけで良い。そこから先は人間が自分で頑張らないとダメだろうよ」

「それなら問題ない。地脈をいじる訳ではないから微々たる変化のはずだ」

「よし。それじゃ今度そいつらも召喚して少しでも収穫量が増えるかどうかやってみるか」


 精霊を使った農業政策。

 どこまで通じるか分からないがやって少しでも金になればいいな。

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