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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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90/311

90:不服か? 不服です

バンとドアが開く音がするのと同時に、明かりが消えた。


足音と「おい……うぐっ」「何だ!?――うわっ」という悲鳴と鈍い音が響き、床に振動と何かがぶつかる音が連続で聞こえ――そして静寂が訪れた。


静寂の中に、息遣いを感じる。

何が起きているか、分からない。


先に手を出すなと言われていたのに、手を出そうとしたことで、仲間割れでも起きたのか!?


仲間割れをして相討ちになり、全員倒れているということ……?


唐突に明かりがついた。

眩しさに目を細めていると、足音が近づいて来る。

慌てて逃げようと床をはいずると……。


「パトリシア」


おへその下あたりがジンと熱くなる。

耳に心地よいテノールの声。

驚いて顔をあげると……。


漆黒の闇を思わせる黒髪と、意志の強そうな眉、長い睫毛に縁どられた黒曜石のような瞳。高い鼻筋に血色のいい唇。整った顔立ちに、張りのある肌。身にまとうものは――全て黒。


「ふぁふうーう(アズレーク)!」


布をかまされているので、ちゃんと名前を呼ぶことができない。

アズレークは私の体を抱き上げると、そばのベッドに寝かせ、うつ伏せにされる。


口にかまされた布が解かれた。


「……アズレーク」


久しぶり出した声は、かすれている。


「大丈夫だ。今、アルベルト達もここに向かっている」


ザクリという音がして、手足を結わくロープを、剣で切ったのだと理解する。


ゆっくり体を動かすと、アズレークは羽織っていたマントをとり、私の肩にかけてくれた。


森林を思わせる爽やかな香りを、マントから感じる。

これがアズレークの香りだと思った瞬間、胸が高鳴る。

おへその下辺りも、熱くてたまらない。


「怪我はないか?」


黒い瞳が心配そうに、私を見つめる。

久々に見たその瞳に、涙が出そうになる。


「怖かったのだろう。だがもう大丈夫だ」


私が頷くと、アズレークは優しく微笑み、私の両手首を見る。

ロープでこすれ、皮が裂け、血がにじんでいた。


「傷よ、癒えよ」


手首の傷が優しい光に包まれ、あっという間に塞がっていく。

足首も同じように癒してくれた。


「ありがとうございます、アズレークさま……いえ、魔術師レオナルドさま」


私の言葉に、アズレークはフッと笑みを漏らした。


「騙したことを、怒っているか?」


「怒るというより、驚きました」


「……そうか。でも結果としては、すべてが丸く収まっただろう?」


跪いていたアズレークが、立ち上がった。


「丸く……ですか」


棘のある言い方に、アズレークは驚いた顔になり、私を見た。


「不服か?」

「不服です」


即答するとアズレークは、絶句している。

間髪を入れず、私は告げる。


「王太子さまと私が相思相愛とか、なぜそのような嘘を?」


「違うのか……?」


アズレークは、声を絞り出すようにして尋ねる。

その顔を見て、即答する。


「はい。違います。王太子さまを好きだった時は、確かにありました。でも王太子さまがカロリーナさまを選んだ時点で、私の気持ちにもピリオドが打たれました。その後は修道院に入り、すっかり恋愛とは無縁になっていたのです。今さら王太子さまと結ばれると言われても……困ります」


「そう……だったのか。てっきり君は、まだ王太子のことを好きなのかと」


「それはアズレークさまの勘違いです」


キッパリ言い切ると、アズレークは再び絶句し、そして困ったような顔で尋ねる。


「では……王太子からのプロポーズは?」


「されていません」


するとアズレークは、さらに困惑顔になる。

その時だった。


「魔術師さま」「パトリシア」


アズレークと私の名を呼ぶ、いくつもの声が聞こえてきた。

すると。

アズレークの姿が、瞬時に変わっていた。


そう、私がよく知る『戦う公爵令嬢』の、魔術師レオナルドの姿に。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は本日12時に「面影はない」を公開します。


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