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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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89:ここでパニックを起こしてはいけない

樽ごとどこかへ運ばれていると分かったが、どうすることもできない。

ただ、声は聞こえるので、男達の会話に耳をそばだてる。


「まったく。あの三人を始末したところで、もはやドルレアン家はお終いだ。何の意味があるのか」


「まあ、金さえ手に入れば、意味なんて関係ない」


「思うに、あの三人の始末がおまけで、こっちの方がメインなんじゃないか?」


ドルレアン家……。

ここでこの名を聞くことになるとは。

この期に及んでまだ、悪あがきをしていたのか。


「まあ、そうだろうな。ドルレアン家の娘は、この樽の中の娘と、王太子の婚約者の座を争っていた。だから始末した騎士より、この娘への恨みの方が、強いのだろうな」


「なるほど。そうなると、ただ殺すのでは勿体ないな。婚約者になるために、相当磨き込んだはずだ。普通なら手が届かない、上玉の元公爵家の令嬢だ。しかも王太子の婚約者に返り咲くという噂がある。つまり手垢はついていないと」


「我々は殺しが専門。だが、その美しい花を摘んでも構わないと、言われている。男を知らないお嬢さんを、好きにしていいと。そう言われたらな。どうせ後で始末する。たっぷり可愛がってやろう」


とんでもない会話を聞いてしまった。

そしてドルレアン家が出した指示が、とても卑劣であると理解する。


表向きは、ドルレアン家の息がかかっている騎士を、口封じで始末しろ。ついでにベラスケス家の令嬢を好きにした後、闇に葬れと。


でも本当はこの下衆な男達の言う通り、私を貶め、始末するがメインなのだろう。


どうしてこんなヒドイことができる?

これではカロリーナが、悪役令嬢なのでは?


これからとんでもない目に遭うと分かっていたが、私の腹は据わっていた。


なぜなら。


魔法が使えると、判明したからだ。


難しい魔法は、無理だろう。

でもこれまでやることができた魔法なら。

例えばゴーストに向けて放った光。

あの光を、直接目を狙って放てば、動きを封じることができるはず。


大丈夫。

ここでパニックを起こしてはいけない。


そう分かっていたが。


体は小刻みに震えている。


大丈夫だから。落ち着いて、私。


ガンッ。

ガンッ、ガン、ガンッ。


突然の音に驚いていると、木くずが落ちてきて、唐突に光が差し込む。


目が眩んで固まっていると。


「おい、おい、おい。こいつ、起きてやがるぞ?」


「何? 眠りの香りをかがせたんだぞ」


「信じられないな。まあ、いい。起こす手間が省けた」


そんなことを口々に言っている間にも、樽が揺れる。ようやく目が慣れてきたのに、今度は焦点があわないと思ったら。


樽が倒れ、床に転がり出た。


なんて乱暴なのだろう。


樽がどかされ、三人の男達の姿が目に入る。


その姿に恐怖で鳥肌が立つ。


三人とも屈強な体をしている。

まるでレスラーのようだ。

腕力ではまず100%敵わない相手だと分かる。

しかも三人とも髭を蓄え、そのせいで威圧感がある。


「そういえば、ハコブとホエルは? フリアンもまだ来ないのか?」


「確かに何しているんだ? 俺達はこの樽を運んでいたが、奴らは手ぶらだろう?」


男の一人がドアに向かい、そして振り返る。


「おい、お前ら二人だけで、先に始めるなよ」


「だが、六人で同時は無理だろう。先に始めてもいいだろうが」


「誰が一番かは、全員揃ってから決める」


そう捨て台詞を言うと、男は部屋を出た。


部屋から一人減った。

だからといって、この二人の男にかなう気は……全くしない。


でも魔法を使えれば、まだチャンスはある。

布を外したくて、口を動かそうとすると。


「おい、何をしようとしている?」


男の腕が伸びてきて、首を掴まれた。

恐怖で全身がすくみ、悲鳴をあげることすらできない。

濁った魚のような目で見られ、血の気が引きそうになる。


「しかし、確かにこれは上玉だ」


ガウンは羽織っていない。

薄手の綿で作られた、白いネグリジェしか着ていない。

男がゴクリと息を飲む。

全身に悪寒が走る。


「なあ、俺達二人で先に始めようぜ」


そばに立つ男に目配せすると。


「そうだな。早い者勝ちだ」


もう一人の男も近づいてきた。

そのまま首をつかまれ、床に押し倒された瞬間。

魔法を唱えることもできず、身動きも取れず、もうダメだと絶望した。


脳裏にアズレークの顔が浮かんだ。

おへその下あたりが、とんでもなく熱く感じる。


助けて……。

お読みいただき、ありがとうございます。

このあともう1話公開します。

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