51:心のこもった優しい言葉
20時前に、ミゲルが部屋にやってきてくれた。
スノーと三人で部屋を出て歩き出し、改めて気づく。
「あ、あの、ミゲルさま……」
「どうしました、聖女殿」
「その、厨房の場所を覚えていなくて……」
困り顔の私に、ミゲルは優しく微笑む。
なんて神々しい微笑み……。思わず見惚れる。
「大丈夫ですよ。厨房の場所は、私の方でも確認しておきましたから」
「……そうなのですね!」
さすがです。ミゲルさま。
感動しながら再び歩き出し、今度はミゲルの脚の長さに驚嘆する。
同じ人間とは思えない。
「聖女殿は、この薄暗い廊下を歩くことに、恐怖はないのですか?」
不意にミゲルに尋ねられ、慌ててガン見していた脚から視線を逸らす。
「そ、そうですね。怖くないと言ったら、嘘になると思います。ただ、ゴーストを退治する方法が分かっているので……。そこら辺のご令嬢とは違うと思います」
「さすが聖女殿。お強いですね。あ、失礼しました。女性に対する褒め言葉ではなかったですね」
「いえ。そんなことはありません。実際私はゴーストを退治するという、荒っぽいことをしていますから」
私の言葉にミゲルは、眩しそうにこちらへ視線を向ける。
「ゴーストと対峙するのは、本当に恐ろしいことでしょう。でも聖女殿は立場上、怖いとは言っていられない。とても必死な想いで、戦っているのだと思います。尊敬しますよ」
心のこもったミゲルらしい優しい言葉だ。
だからつい、本音が漏れる。
「本当に、モンスターゴーストと対峙した時、最初の頃は体が動きませんでした。あまりの不気味さに、体が固まりました。でも何度も何度も練習を積んで。なんとか倒せるようになりました」
するとミゲルが突然立ち止まった。
どうしたのかと思い、私は数歩後退し、ミゲルの元へ向かう。
「か弱き女性が、騎士でもひるむようなゴーストを退治する……。なんて過酷なことでしょう。聖女殿、あなたと過ごせるのは、この城に滞在するごくごく短い時間です。でも、共にここにある間は、可能な限り、あなたのこともお守りしましょう。一人の騎士として」
そう言ったミゲルは私の手をとり、忠誠を誓うよう、甲に唇を当てた。
初めて会った時も。
同じように恭しく扱ってくれて……。
本当にミゲルは騎士らしいし、素敵過ぎる。
「えー、オリビアさまだけ、こんなに素敵な騎士様に守られるなんていいなー」
私の腰の辺りから顔をのぞかせたスノーが、可愛らしく抗議すると。
「小さき姫君。あなたのことも、勿論、お守りしますよ」
ミゲルはスノーの手をとり、私にしたのと同じように甲へとキスをする。
途端にスノーは「うわあああ」と可愛らしく驚き、顔を赤くする。
「さて。こんなところでノロノロしている場合ではないですね。厨房へ行きましょう」
ミゲルがスノーからゆっくり手をはなして微笑んだ。
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