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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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52/311

52:ゾッとする

私達が訪問することが、伝わっていてからだろう。

厨房は誰にもいないのに、明かりがついていた。

廊下を歩いていても、厨房からの明かりが見えている。


入口に立ち、見渡すと。

厨房は、とても広かった。

きちんと片付けられていて、清潔感もある。


こんな場所に、ゴーストが出るのだろうか?


そう思ったまさにその時。

明かりが不安定に明滅する。

するといきなりガシャンという音がしたと思ったら。


「あぶない」


ミゲルが少し高音の声で短く叫び、剣を抜いた。

次の瞬間、剣に金属が当たる音が連続で聞こえる。

そしてカシャン、カシャンとさらに音が響き、床にスプーンやフォークが散乱した。


「食器棚から急に飛んできましたね」


ミゲルの言葉に食器棚を見ると、確かに引き出しが開いている。


ゴーストの仕業……?


正直、アズレークとゴースト退治をしていた時、ゴーストからこんな風に攻撃されることはなかった。ゴーストは、ただそこにフワフワと存在していると思っていたのに。


再び、ガシャン、ガシャンと音がして、ミゲルが剣を動かす。


金属音が響き、今度はナイフが床に何本も落下した。

ナイフが飛んできたと思うと、ゾッとする。


洗い場近くでフックに吊るされた鍋がゆれており、その辺りからナイフが飛んできたと理解する。


「スノー、何か見えている?」


「それが、オリビアさま、動きが早くて、とらえきれません」


「ただのゴースト? それともモンスターゴースト?」


「ただのゴーストだと思います。モンスターゴーストは、こんなに俊敏な動きはできないはずなので」


そう言った傍から何か飛んできて、ミゲルが対応してくれている。


本当にこの場にミゲルがいてくれて良かったと思いながら、対策を考える。


聖女の使う祈りの言葉は、そのままゴーストへダイレクトに影響をもたらす。その言葉は神の言葉であり、ゴーストはその言葉を聞いた瞬間、体が硬直する。


ならば。


「スノー、ゴーストの姿が見えたら教えて」

「は、はい」


金属音が響き渡る中、私は十字架の杖を構え、声を発する。


「悪しき者の名は朽ちる!」


私の声が厨房に響き渡る。


「見えました! 洗い場のところです!」


いる!

人型の通常のゴーストだ。


十字架の杖をゴーストに向け、「悪しき者の望みは絶える!」と叫ぶ。


だが。


光が到達する前に、その姿が見えなくなる。

そして今度は皿が飛んでくる。


「悪しき者の名は朽ちる!」


再び声を発すると。


いた!

石窯のところにゴーストの姿を捉えた。


「罪は悪しき者を倒す!」


杖の十字架に私の中の魔力が伝わり、十字架部分から光が、ゴーストに向けて放たれた。光は見事ゴーストに直撃し、その姿は一瞬で消える。


「オリビアさま、消えました!」


スノーが喜び、ミゲルが剣をおろそうとしたまさにその瞬間。


巨大な鍋が飛んできた。

慌ててミゲルを突き飛ばし、「悪しき者の名は朽ちる!」と叫ぶ。


調理台のところで固まっているゴーストがいる。

すかさず十字架のついた杖を向け、「悪を行う者には滅びである!」と一喝すると、すぐに光がゴーストに向けて放たれた。


光を受けたゴーストは、瞬時に姿が消える。


他にもいないか確認のために、再度、「悪しき者の名は朽ちる!」と叫ぶ。


「スノー、いないわよね?」

「はい、もう大丈夫です、オリビアさま」


その声に安堵し、立ち上がったミゲルに駆け寄り、体を折るようにして謝罪をする。


「すみません、ミゲルさま。咄嗟のこととはいえ、突き飛ばしてしまいました」


「どうして、あなたがあやまるのですか、聖女殿」


ミゲルは私の腕をつかみ、顔を上げるよう促す。


「咄嗟にあなたが突き飛ばしてくださらなければ、私には鍋が直撃していたでしょう」


「……ミゲルさま」


「あなたをお守りすると言っていたのに。逆に守られてしまうとは……」


ミゲルが申し訳なさそうな顔で私を見た。

こんな困り顔のミゲルは、ゲームでも見たことがない。

あまりのレアな表情に、スマホがあれば撮影するのにと、歯ぎしりしそうになるのを堪える。


「おや、小さなレディは働き者ですね」


スノーが、床に散乱する食器などを拾い集めている。


「こんなに散らかっていては朝、大変ですから」


スノーの言葉に、私とミゲルは顔を見合わせる。


「その通りですね」


ミゲルが輝くような笑みを見せ、私も頷き、すぐそばに落ちる鍋に手を伸ばした。



厨房の片付けタイムは、何気に楽しいものになった。

ミゲルが銀食器を布でふく姿は絵になったし、鍋をフックにかける姿でさえ、激レアショットに思えてしまう。沢山割れてしまった食器があったが、それはミゲルから領主に話をつけるから問題ないと言われた。


すべての片づけを終え、部屋まで送ってくれたミゲルは、去り際にこんなドキッとする言葉を残す。


「あなたが聖女でなければ。もし舞踏会で出会っていれば……叶わぬ夢を見てしまいます」


まさに吟遊詩人のような言葉を並べ、私の手をとり、甲にキスをされると……。


盛大な甘いため息が出てしまう。

この世界に来て、攻略対象からこんな風に接してもらえるのは初めてだ。


「オリビアさま、寝る準備をしましょう」


「そうね、スノー」


プラサナス城での初日が終わった。

このあともう1話公開します!

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