17:わざわざ私のために……
翌日。
スッキリと目覚め、着替えのためにクローゼットへ向かう。
コタルディは二着しか用意されておらず、初日に着たものは洗濯され戻ってきているが……。連続で同じものばかり着ていると、生地が傷みそうだ。
「あ、修道服がある!」
着慣れたグレーの修道服を見つけ、それに手を伸ばそうとした時。
ドアをノックする音と、スノーの声が聞こえる。
そのままドアへ向かう。
「パトリシアさま、おはようございます!」
「おはよう、スノー」
スノーはメイド服を用意してもらったようで、黒のワンピースに白のエプロンという姿なのだが。とてもよく似合って可愛らしい。
「どうしたの、スノー……」
そう声をかけたが。
スノーが両手で、何着もの服を抱えていることに気づいた。
「アズレークさまが、パトリシアさまのために用意くださいました」
スノーが部屋に入りながら、嬉しそうに微笑む。
カウチソファに置かれたのは、色とりどりのコタルディだ。
「こんなに沢山!?」
「はい。パトリシアさまが二日連続でコタルディをお召しになっているのを見て、シンプルなドレスが好きなのだろうと言うことで、ご用意くださったようですよ」
スノーは手早くクローゼットに、コタルディを片付けていく。
「そうなのね……。わざわざ私のために……」
アズレークの細やかな気配りに、胸がじーんと熱くなる。
廃太子計画なんていう、恐ろしいことを考える人なのに。
どうしてもアズレークが、悪い人には思えない……。
そこでふと気が付く。
私はここを出て、プラサナス城に向かい、そこで廃太子計画を遂行する。それが終わったら、どうなるのだろう? 安全を保障する、とは言われている。でもどこに帰るのか、それを教えてもらっていない。
修道院に戻ることになるのか。それとも……。
この屋敷に戻って来られる……?
……それはないか。用が済んだ私を、いつまでもここに置いておく意味などない。きっと修道院に戻されるのだろう。そうなるとスノーは、ミニブタの姿に戻されるのだろうか……。
「さあ、片付きました。パトリシアさま、今日はどのコタルディにしますか?」
「ありがとう、スノー。そうね……今日は、このローズピンクにしようかしら」
「! 優しい色でいいですね。袖や裾のシルバーのラインに、腰の銀細工のベルトもオシャレです!」
スノーにも絶賛され、私はご機嫌で着替えを行った。やはりパトリシアはスタイルがいいから、コタルディはよく似合う。
「パトリシアさま、いつも髪をおろしていらっしゃいますが、今日はまとめてみてはいかがですか?」
「そうね。たまにはそれも、いいかも……」
修道院にいる時、髪はベールで隠すようにしていたから、髪型を気にすることは少なくなっていた。そういえば、聖女の服ってどうするのだろう?
そんなことを思いながら。
髪を左側で束ね、編み込みにして、コタルディと同色のリボンでとめた。
「わあ、素敵です! これまでと雰囲気が変わりました。アズレークさまも驚きますよ!」
スノーの言葉に「そ、そうかしら」となんだか緊張してきた。
「さあ、朝食ですよ、パトリシアさま」
スノーに促され、部屋を出た。
このあともう1話公開します!



























































