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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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15/311

15:もしかして、指フェチなの、私!?

「聖女が使うアイテムとして、この国で知られているものを用意した。まずは十字架のペンダント、十字架が掲げられた杖、聖杯、聖書」


中庭には大理石のテーブルがあり、そこにアズレークは用意したアイテムを並べた。


目を引くのは、陽の光を受け、輝きを放つ聖杯。

聖杯というが、もちろん本物の聖杯ではない。

聖水を入れるために使われる、聖なる盃だ。


「十字架のペンダントは首から下げて。杖は手に。聖杯は魔法で隠してあるが、使う時に取り出すようにする。聖書は小型サイズだからポケットに入る」


言われた通り、ペンダントを身に着け、杖を持ち、聖書をしまう。


「聖杯は、この腰のリボンに挟んでおく。そして必要に応じて取り出す」


大理石のテーブルから聖杯を手に取ったアズレークは、静かに話を続ける。


「この聖杯は、魔法で隠す必要がある。なにせ金で作られている。盗むような悪いやからもいるから。隠すための魔法の呪文は何でもいい。魔力さえ動けば、聖杯は術者以外には見えなくなるから」


「アズレークさまは、何かを隠す時の呪文は、どのようなものをお使いなのですか?」


アズレークは私の腰のリボンに聖杯を収めながら答える。


「ハイド・アンド・シークだ」


「かくれんぼう?」


「そう。隠す時も、取り出す時も、たいがい急いでいることが多い。だから長ったらしく詠唱している暇はない」


『戦う公爵令嬢』というゲームにおいて。

魔法を使える者は、えてしてカッコつけたがる。

だから勿体ぶった呪文を長々と詠唱をする者も多いが……。

アズレークは合理主義者のようだ。無駄がない。


「私も、ハイド・アンド・シークにします」


「では手を聖杯に向け、集中させて。頭の中に自分なりの魔力をイメージし、それを聖杯に向ける。そして聖杯が他の人の目から見えないような状態を、さらにイメージする。透明になるとか、何かに包まれ見えなくなるとか、そこは自由だ。最後に呪文を声に出す」


「分かりました。やってみます」


アズレークが腰のリボンに収めた聖杯に左手を添える。

ゆっくり目を閉じる。

魔力のイメージ。

魔力という言葉で思い浮かぶのは……。

!!

口から魔力を、アズレークに送り込まれている時の姿を思い浮かべてしまった。


だ、ダメ。そんなのを想像しては。


頭を振り、浮かんだ光景を忘れようとする。


だが。


魔力が送り込まれている最中に、うっすら目を開けると……。

アズレークの整った顔が、すぐ目の前にあった。

閉じられた瞼に、サラサラの黒い前髪がかかっていた。

あの姿は、とても艶っぽかった……。


違う!


だからそうではない。

魔力のイメージを。

そう温かい熱のような塊。

え、熱のような塊って何……?


「パトリシア」


アズレークの呼びかけに、驚いて目を開ける。


「何か雑念があるようだ。魔力を使い、魔法を使う時は集中力が必要。私は自分の指先を、魔法を使いたい対象に向けることで、集中しているが……。君も体のどこかに、集中するための起点を作った方がよさそうだ」


「で、では、私も指に集中したいと思います」


「……その指に集中しようとして、雑念が混じっていたように思うが……。いいだろう、もう一度やってみよう」


頷いた私は、再び左手の指を、腰にある聖杯に向ける。

指に、集中。指に。

ゆっくり目を閉じる。

指……。

魔力を送り終えた後、私の火照る頬を冷ますために。

アズレークは両手を頬に添えてくれる。

その時、まず一番細くて長い中指が、頬に触れる。


武器を扱う指とは思えないぐらい美しい指で、爪は桜貝のような色をしている。

形も整っていて……。


違う!

なんでアズレークの指のことなんか考えているの、私!?

もしかして、指フェチなの、私!?


「パトリシア」


再び名前を呼ばれ、体を震わせ目を開ける。


「君の場合、指に集中は向いていないようだ。……起点を作ろう。魔法を使うためには訓練が必要で、集中ができない者は多い。だから起点を設けることは、何も特別なことではない。そして君の場合は……」


すっと伸びたアズレークの手が私のおへその下を指差した。


「ここだな。このおへその下。ここに起点を作ろう」


「こ、ここですか!?」

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は本日12時に「人に見せ触れさせる場所ではない」を公開します。

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