13:不思議な関係
あの後。
初めてアズレークから魔力を送りこまれ、しばらくは彼の手の冷たさ感じていた。でも気づけば瞼を閉じ、そのまま意識を失ったのか、眠ったのか。とにかく気づくと部屋は暗く、カーテンも閉じられていた。
私はカウチソファに横になったままで、ブランケットが掛けられていた。アズレークの気遣いに、思わず頬が緩む。とても恐ろしい取引をした相手なのに。
するとそこにスノーがやってきて「パトリシアさま、夕食の時間ですよ!」と告げられる。
起き上がり、そのままスノーに案内された部屋に行くと……。そこには既にアズレークがいて、私を見ると笑顔になる。
眩しいほどの笑顔に見惚れてしまう。
席に座ると、スノー以外にも給仕をするメイドが現れ、料理がテーブルに並べられていく。アズレークは私に体調の確認を行い、問題ないと分かると、とても安心した顔になっている。
夕食が始まると、アズレークは魔力について教えてくれた。
やはり魔力の譲与をできる者は限られ、かつ誰にでも与えることができるわけではなく、相性もあるようだ。さらに魔力耐性がないと、魔力は体になじまず、定着せずに消えてしまうという。
魔力の話を終えると、アズレークは普通の話を始めた。
つまりは私が今いるこの屋敷がある場所、プラサナスという地についてだ。
プラサナスは小麦の産地であり、この屋敷から少し離れた場所には、小麦畑が広がっていること。畜産も盛んで、沢山の牛や羊、豚が飼育されているという。そしてこのプラサナスにはアズレークが子供の頃、一時的に住んでいたこともある場所だった。
だがこの屋敷は、子供の頃に住んでいた屋敷というわけではない。本来の持ち主は貿易関係の仕事をしており、二年間この屋敷をあけることになった。それを偶然知ったアズレークは、この屋敷を、使用人を含め、借り受けることにしたという。
そんな話を聞いていると、自分がどんな立場でここにいるのかを忘れそうになる。
アズレークと私は取引を交わし、それが成立しているから、今は命を取られることはない。だがアズレークにとって、私は標的であり、廃太子計画に必要な駒に過ぎない。決して友人などではない。
ただ、アズレークを見て、会話をしていると、そのことをすぐに忘れそうになってしまう。
それでも。
自分の立場を気づかされる瞬間がある。
スノーの先導で自室に戻る時、曲がるところを曲がらず直進しようとすると。いつの間にそこに現れたのか、警備をしている騎士に声をかけられた。
スノーと私の運命は、一心同体だと分かっている。それに取引は成立している。だから逃げるつもりはない。それでも監視されているのだと思うと……。
改めてアズレークと私がどんな関係であるのかを、認識せずにはいられなかった。
お読みいただき、ありがとうございます!
引き続きお楽しみください☆



























































