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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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12/311

12:思わず悲鳴が漏れてしまった

驚き、声は出ず、ただ立ち上がり、アズレークの手を押さえていた。


「これは驚いた。君は運動神経もいいようだ」


短剣スティレットは心臓に刺さったままなのに、アズレークは微笑を浮かべている。


顔を引きつらせ、アズレークを見ると……。


「心配ない」


アズレークが私の手をゆっくり掴み、そして一気に心臓から短剣スティレットを抜いた。


「きゃっ」


思わず悲鳴が漏れてしまった。

血が吹き出すと思い、目も閉じていた。


すると。


温かい手が頬に触れた。

恐る恐る目を開けると、そこには先ほどと何一つ変わらない姿のアズレークがそこにいる。黒いシャツが、血で汚れていることはない。短剣スティレットにも、血は一滴もついていない。


「魔法が発動した状態で使えば、肉体に一切の傷はつかない。心臓には、魔力の源となる核がある。その魔力の核を、私の魔力で破壊し、王太子から魔力を奪う。それだけだ。だから大丈夫」


「そう、なのですね……」


ようやく言葉を出すことができた。

ゆっくり立ち上がり、カウチソファに座りなおす。


「この短剣スティレット自体にも魔法をかけるから、携帯していても、気づかれることはない」


剣を鞘に納め、テーブルに置くと。

アズレークは呪文を唱える。

短剣スティレットは見えなくなった。


「次に魔法の件だが……。これは今見た通りだ。さっきは私が呪文を詠唱したが、実際は君がこの短剣スティレットを手にすることで、君の中の魔力が反応し、魔法が発動する形になる。そして短剣スティレットに君の中の魔力が集まる。魔力が集まった短剣スティレットを心臓に穿つことで、王太子の魔力の核は破壊され、彼からは魔力が失われる。もちろん王太子は死ぬことはない。そこは安心していい。それで魔力の件だが……」


アズレークの目線がドアの方へ向けられた。

丁度スノーがトレンチにティーカップやティーポットなどをのせ、部屋を出て行くところだった。


その姿を見送り、アズレークの方に視線を戻すと、彼は私を見ている。


「!」


黒曜石を思わせるその瞳にじっと見つめられると、なんだか落ち着かない。心拍数が上がり、おへその下辺りが熱くなる。


「先ほど言った通り、君に私の魔力を送りこむ必要がある。それを始めてもいいか?」


その言葉に我に返り、慌てて頷きながら尋ねる。


「あ、はい。でもどうやって……?」


魔力を送りこむなんて、本当に初めて聞いた。

『戦う公爵令嬢』をプレイしていた時も、当然だが、そんなことをやったことがなければ、やるようなシーンはなかった。


「まずは君が今座っているカウチソファに、寄りかかってもらえるか。脚も乗せてしまっていい。リラックスして、体を楽にして欲しい」


アズレークに言われるまま、カウチソファの背もたれに身を預け、脚をソファの上にのせる。


「魔力は口から送り込むことになる」


えっ、口!?


そう思った瞬間、アズレークが顎を持ち上げ、親指でそのまま下顎をグイと引いた。


口を開けた状態になると、アズレークの顔が近づいてきた。


う、嘘、キ、キスされる!?


思わず両手で、アズレークの手を掴もうとする。

だがその手の動きは、アズレークの左手で封じられてしまう。

口を閉じようとするが、親指の力は存外に強く、ピクリとも動かせない。


……!


唇は……触れていない。


でも、開いている口の中に、熱の塊が流れ込んできた。

熱い息なのか、魔力なのか、ともかく何かが唇や歯に触れているのが分かる。


口腔内に入り込んだ熱の塊は、喉の奥へと伝っていく。

心臓がドクドクと大きな音を立てている。

体がじんわりと温かくなっていく。

どんどん体温が上昇していき、口の中も喉も、温かくなる。

おへその下あたりが、脈打つように熱く感じる。


これが魔力……?


うっすら目を開けると、アズレークの整った顔が、すぐ目の前にある。閉じられた瞼にサラサラの黒い前髪がかかっている。


美しい……。


半ば強引に魔力を送りこまれているというのに。

それをしているアズレークを、美しいと感じてしまうなんて。

自分の精神状態を疑いたくなる。


でも、本能的に美しいと感じてしまっている。

それに……。

キスをしているわけではない。

それなのにこれだけ心臓が高鳴り、体が熱くなると……。


まるでキスをして胸を高鳴らせ、全身が火照っているようだ。特におへその下辺りは、より熱を感じる。


ようやく顔をはなし、顎から手をはなしたアズレークは、私を見下ろし……。


黒い瞳に激情を感じ、息を飲む。

狂おしいほどの熱がその瞳から伝わり、魔力を送られていた以上に心臓が激しく鼓動し、おへその下辺りがジンジンとする。


ハッとしてアズレークが私から視線を逸らし、窓の外を見つめる。よく見るとアズレークの頬は高揚していたが、次第にそれが落ち着いて行くのが分かる。


一方の私は、もう魔力は送られてきていないが……。口の中も喉も、頬も火照っているし、全身が熱い。体は動かそうと思えば動くだろうが、だるくて動きたくない。


そんな状態だ。


そして沈黙の時間が流れる。


「……意識を保てたのか」


静寂を破るように、アズレークのテノールの美しい声が響く。


「意識も保てているなら、30分もしないで魔力が落ち着くはずだ。どこか、苦しいところはないか?」


気遣うような優しい眼差しで、アズレークが私を見る。

慈しむようなその瞳に胸がキュンとして、泣きそうになってしまう。


「どこか、具合が悪いか?」


目を閉じ、なんとか首を振ると、アズレークの手が私の頬に触れた。

その手は、ヒンヤリとして心地いい。


「ベッドで横になるか?」


再び首を振り、このままでいいということを示す。


「ではブランケットを取って来ようか」


立ち上がろうとするアズレークを止めるように、頬を包んでいた手を懸命に掴んだ。


そんな私にアズレークは驚き、そしてまるで……。

愛しい相手を見るように。

輝く黒曜石のような瞳を、私に向けた。

心臓がドクンと反応する。

おへその下辺りが、またも熱くなる。


「……手の冷たさが心地いい、ということか?」


こくりと頷くと。

アズレークは両手で私の頬を包み込んでくれた。

ヒンヤリとして気持ちいい。


自然と瞼が閉じた。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は明日8時に「不思議な関係」を公開します♪


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