62.ミュンミュンちゃん(=非常食)
Side:シン
魔族や人間を殺すのと、魔獣を殺すのとどう違うだろう?
魔族や人間とは会話ができる。……だが、高位の魔獣だって意思疎通ができる。
魔族や人間は俺たちと同じ姿かたちだ。……だが、血のつながりでいえば、俺たちは魔獣のほうに近い。
魔族や人間は悲鳴をあげる。……だから何だ?
俺たちの存在は、上のほうの魔族は知っていた。そいつらでよく、俺たちを異常に危険人物扱いする奴らがいた。目が合えば殺されるんじゃないだろうか、とか。俺たちは血や死体が大好きな奴らだろう、とか。
勘違いしてもらっては困るが、俺たちが狂うほどに求めているのは、「戦う」ことだ。それが目的であって、殺すことや殺されることはさして問題ではない。だが、あっさり死なれると戦っている気分がしない。虐殺っていうのも悪くはないが……それほど楽しくないな。殺されるのも困る。それ以上戦えなくなるじゃないか。
つまり、何かっていうと、だ。
「強ければ殺す。弱ければその場の気分。で、いいか?」
「いいよー!!」
ナグサから元気な返事が返ってきた。他の奴らも不満はなさそうだ。
だが、殺すことになる確率は高い。アメが発見したのが住人……魔族の形をしていたからだ。
俺たちの先祖は、魔族と魔獣が交わった。だが魔獣そのものが魔族と交わられるわけがなく、高位の魔獣は魔族の形をとっていたと考えられている。
ということは、だ。今回発見した住民たちが、魔獣が魔族の形をとったものならば、彼らは高位――限りなく強いに違いない。
正直に言う、わくわくしている。
Side:ナグサ
ということで、先住民の住む村への道中♪
今あたしたちは魔獣に乗っている。別に自分で走ってもいいんだけどね。だって今なら、馬と夜中ずっと並走してても、全然平気な気がするんだもん。
でも、出発するぞー!って時に、この魔獣を見つけたんだ。おっきい鳥さんの羽を鱗にした感じ。鱗の色が透き通った黄色ですごく綺麗。鱗があるけどドラゴン…じゃ、ないと思うんだよね。可愛いから、どっちでもいいけど!
最初は殺そうとしたんだけど、戦闘中にこの鳥さんの上に乗ってみたら、すっごく乗り心地がいいの!それで、殺さずに屈服させることにして、捕まえたのがこの6匹。
あたしが乗ってるのがミュンミュンちゃんね。ミュンミュンちゃんは最初にあたしが乗っかった子。乗っかったら大人しくなったんだけど、それまでが大変だった。だって凄く抵抗するんだもん。風を生み出す翼を両方とも切り落として、くちばしも殴って半壊させないと駄目だった。後からカエデちゃんとナグサちゃんに怒られたよぅ。
でももしお腹がすいたら解体して食べることもできるよね。あたしって頭いい!
「なあなあ、あれじゃねー?」
セドが遠くを指差す。目をこらすと、村みたいなのがあった。
「おそらくあれだな」
シンと相乗りしてるアメちゃんがこくりと頷く。
らぶらぶでいいよね。カエデちゃんとアケビちゃんは、まだ付き合ってない、って文句言ってたけど。よくわかんないや。
その村はよくある村だった。こっちから見えるのは門だけだから中は見えないけど、木でつくった簡素な杭に囲まれた村。あたしは人間界でも魔界でも色々町を見てきたけど、あんなぼろい村初めて!
本当にあの中に強い魔獣が暮らしてるのかな。
「よっし、レッツゴー!」
「あっ、ナグサ先行くなよッ」
ミュンミュンちゃんと一緒に風を切るのがとても気持ちいい。
なんだかね、あーいいなあ。自由だなぁ。そんな感じ。




