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第4章4(上)

 どうやら私は、十一月十八日の顛末を警察から隠し通せたらしい。

 それでは、次が最後の話だ。

 私がアリスと過ごし、彼女の日記を読み続けた一週間の話をしよう。


 十一月十八日、アリスの家から帰ってきた。私はレジ袋からプリンを取り出して2個とも冷蔵庫に入れた。

 一通り明日の準備を済ませ、アリスの日記を広げた。早く読みたい。逸る気持ちが抑えられない。

 そうして最初のページから読み始めた。


 五月十五日


 今日初めて日記を買いました。

 日記を書き始めるには、中途半端なタイミングなのはわかっているけど、どうしても残しておきたいことがあって書くことを決めました。

 まずは自己紹介を書こうと思います。

 私の名前は白石アリス、15歳。

 凛のことが好きです。初恋です!

 書く順番を間違えましたね。でもこの文章は消したくないのでこのまま書きます。


 好きなことは実はあんまりなくて、ウィンドウショッピングとお菓子を食べることくらいです。

 特技はクッキーくらいの簡単なお菓子を作ることです。最近は簡単に作れるチーズケーキとかあるみたいなので興味があります。

 苦手なことは、友達を作ることです。

 声をかけられることは多いんだけど、それは見た目とか名前とかだけで、今の時期になると大抵飽きられてます。

 もともと決まった仲のいい人を作らないタイプなので、割と一人ぼっちに耐性があります! 慣れっこです!

 でも今年は違うみたいです。凛がいます!

 凛はかっこいいです。私が困ったときに助けてくれました! それも入学初日、その次の日と2日連続で!

 クラスの自己紹介のときから、すごい美人だなって思いながら見ていました。もしかしたらそのときに一目惚れしたのかもしれません。じゃないとすぐ名前を覚えたりできません。それに名字でなるべく呼ばないでほしいっていう人は初めて見ました。最初に助けてもらったとき思いました。私も早く、「凛」って呼びたいなって。

 初めて「凛」って呼んだら、「アリス」って呼ぶって言われちゃいました。すっごい嬉しくて笑っちゃったけどいま思い出すと恥ずかしいな?

 だけどそれから凛と話すことはあまりありませんでした。

 凛は話しかけられれば話すけど、基本的に一人が好きみたいです。自分で言ってたから間違いないです!

 そういうことを知るともう声をかけられないです。

 だから私は作戦を立てました。

 実は私と凛の駅は近いです。だから方向も同じ。だったら待ち伏せをすればいいのでは?

 これは実はストーカーなのでは? と後から気づきました。でも効果は抜群でした!

 最初は長続きしなかった会話もしばらくしたら続くようになりました。

 それにそれに教室で今日帰れる? って聞いてくれるようになりました! もう有頂天です!

 いまでは凛が図書館に寄らないときは一緒に帰ります。

 それと今日は凛が土曜日なのに会ってくれました! 本が好きなのは知ってたけど、本屋にすっごい長くいます。私のことは忘れたのかななんて思ったり。でも凛の様子を見てたら私も読書をしないとって思いました。図書館を使うようになりましたがまだまだです。がんばって読書しようと思います!

 最初だからって長く書きすぎました。最後に一つだけ書きたいと思います。

 私は凛に会うまで人に恋をするっていうのがわかりませんでした。男子のかっこよさとかわかりません。それに恋はきっと、美醜で決まるものじゃないと思いますし。

 それで凛に会って、好きになって、思いました。私って女の子が好きな人だったの? って。

 この疑問はたぶん答えがわかってます。凛だから好きになったんだって。

 今日はこれで終わりにします。


 アリスと駅のホームでよく会うなと思ってたけど、こういうことだったのか。生きてる時に聞きたかったなと思った。


 十一月十九日はひどく憂鬱だった。アリスがいないと分かってる学校に向かうのだ。これまで経験がないわけじゃない。でもアリスが休みの日は連絡をくれていた。いまでは「あ」なんてメールすら届かない。

 声も気持ちももう届かない。

 学校はいつも通りだ。担任も変わった様子はない。桐谷が話しかけてきた。


「白石、今日来てないんだな」

 桐谷が前の席に腰を下ろした。

「そうだね」

「連絡あった?」

「ないよ」

「さみしいだろ」

「うん」

 私は正直に答えた。そして、桐谷はそれ以上、深く聞かなかった。

 放課後、リュックを背負ってアリスの家へ向かった。門柱の郵便受けから鍵を取り出し、玄関を開ける。

「ただいま」そのままアリスの部屋へ。

 ここまでは流れ作業だ。何をしようか?

「アリス、来たよ」

 アリスは死んでいる。

 私は読書。テレビはつけたまま。

 しばらくアリスのそばで過ごしたあと、帰りに施錠し、鍵を郵便受けへ戻した。そして私は家へ帰った。

 夜、昨日と同じように日記を開いた。


 六月八日


 今日は凛の話をします。

 いつもしてるって? しょうがないんです。好きなんだもん。日記なんて私の自己満足なんだから、開き直って好きなことを書いていきます。

 まずは名前は凛です。このまま名字がないと猫の名前みたいですね。もちろん名字はあります。でも凛はすごく嫌いみたいです。名字も、家のことも。凛の家のことは、周りの人からそれとなく耳にしています。すごく大きな家で、お金持ちだって。

 凛はそんな態度一つも取らないけど、凛が主人公だったら似合いすぎて笑っちゃうと思います! 孤高なお嬢様! かっこよすぎる! でもそんな雰囲気をまとってたら、仲良くならなかったかもなあ。惹かれなかったかも。だから今の凛がちょうどいいです。唯一残念なのは凛の家に遊びに行けないことです。凛が来てほしくないそうです。凛の部屋、見てみたかったなあ。

 話が飛んじゃいました。とにかく名字は無しで、凛です!

 凛は私より少し背が高くて、髪の長さは同じくらい。でも姿勢がいいから身長以上に高く見えます。

 あととても頭がいいです。テストで95点を切ることはないです。隠れて努力しているのでしょうか。かっこいいです。

 頭がいいのはテストだけじゃないです。クラスで何かをやるとき、どんな役割が必要で、それには何人必要で、どれくらいの時間が必要か、そんなことをすぐに言い当てます。あと記憶力がものすごくいいです。知識もすごいです。本人はなんでもは知らないって言います。普段は忘れたふりをしたり、知ってても相手を立てたりしてます。そんな優しくて、飾らないところが好きです。

 あと凛は結構冗談を言ったり、変なツッコミを入れてきたりします。きれいな横顔からは、変なことを考えているようには全く見えません。

 他にも変なことがあります。凛は今度iPhone 4に機種変するそうです。スマートフォンなんてほとんどの人がまだ持ってないのに、なんでiPhoneにするの? と聞くと、かっこいいからと答えました。かっこいいからかー。私には理解できないけど、同じものに機種変したいなって思ってしまいます。でもそれはわざとらしいかな?

 凛の一番重要なことを話していませんでした。

 それは、凛が尋常じゃなくモテるということです!

 中学2年生から高校3年生まで、いろんな学年の人が凛に告白してきます! 中高一貫校だから生徒数が多いっていうのはあるけど、それでもおかしいです! 凛は学校で一番の美人です。だからって告白する人が多いのはわかります。嫌だけど。でもなんで同じ人が2回目も来るんですか? 1回で諦めてください! たぶん何回アタックしても凛は揺れないと思います。

 それと凛は女子にもモテます! 私はこっちの方が大問題だと思っています……。凛が女の人を好きだったら、告白してきた人の中から選ぶかもしれません! こう言ってはなんですが、私はそれなりには見た目に自信があります。金髪も目立ちますし。親に感謝です。だから好きになるなら私でいいんじゃないの? そんなことを思います。そうですよね? でも凛の先輩や後輩のほうが、私より凛との付き合いが長いのは事実です。私のことはポッと出の金髪と思われているかもしれません。でも負けません! 初恋は成就しないと言いますが、私は違うということを見せつけてやります!

 またすごく長くなってしまいました。また凛のことを書くと思います。

 今日はここで終わりにします。


 アリスは私のことをよく見てるなと思った。でも私のことをこの頃はまだちゃんと理解してなかったんだ。多分私がアリスに惹かれ始めていたことに。


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