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エピローグ
とある大会にて。
スタートの合図を待つ一瞬、見物客の中に航を見た気がした。走破後に、すぐに観覧席に駆け込むが、誰もいない。あてもなく彷徨いていると、係員から、観客からの差し入れが入った紙袋を渡された。ふと、係員が持つ段ボール箱の方が気になった。
「それは……?」
「廃棄か、中身の確認が必要なものですよ。基本、手作りの食品は禁止なので」
雑多な袋や小箱に混じり、瓶詰めされたレモンの蜂蜜漬け。なぜか目が吸い寄せられた。誠也は思わず手を伸ばす。
『冷所保存。賞味期限〇〇年◯月 取り出し時、乾燥した清潔なスプーンを使用すること』
生真面目なその文字に。誠也は瓶の蓋を外すと、胸いっぱいに香りを吸い込んだ。懐かしくて甘酸っぱい。
「元気にしてるか?」
誰もいなくなった観覧席に向かって、誠也はぽつりと問いかけた。




