かくれんぼ。 part3
「ふざけんな!!!!!」
ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「ナギ君!」
「もう終わった。」
「ふざけんな!ふざけんなぁっ!!」
ザシュザシュ!ズバズバズバズバ!!
俺の家族を奪った魔物は。
あまりにも弱かった。
「ふざけん…なよぉ…」
こんな雑魚に殺られたのか?
俺の自宅近くに探知能力持ってる誰かがいれば守れた。
"便利"程度にしか思わなかった探知スキル。
俺が持ってたら?
守れたかもしれない。
こんな雑魚相手なら武器も要らない。
「あああああああああ!!!!」
((ビッグ・インパクト))
グジャァァ!
魔物は初撃で息の根を止めた。
その後はひたすら殴って、蹴って。
ヒカリさん達の声を無視して体を斬り続けた。
感情が収まらなくて、最後は思いっきり殴り潰した。
もっと強くあってほしかった。
レベル上げしすぎたプレイヤーに起こる出来事だ。
あっけなくラスボスを突破して迎える物語の果てに感動なんてあるわけない。
こんな雑魚を殺して復讐終わり?
家族の仇討ちがもう終わり?
ギュッ。
「ナギ君。」
ギュッ。
「…………。」
「俺はどうしたらいい?」
「生きるの。家族の分まで幸せに。」
…………………………………。
コツ…コツ…コツ…
「お待たせしました。」
「っは!最っ高に綺麗じゃねえか。」
「あなたは…ふふ。ありがとう。」
「この建物の中は知れてる。玄関まで、ほらよ。」
「少し…照れますね。」
「俺はいい気分だ。」
「シラユキ様。バガ様。行ってらっしゃいませ。」
…………。
「それで?どこから案内してくれるんだ?」
「そうですね…では、本来の意味での"花園"をご案内しましょう。車を。」
「はい。ただいま。」
「運転手ぐらいは連れても構いませんよね?」
「ああ。初デートだしな。」
「あの…手はずっと繋いだままでしょうか?」
「そのつもりだ。食事以外はな。」
「そうですか……。」
「耳が赤い。」
「………………ゴホン。」
スゥー……
「おいおい…車ってのはこんなに静かに動かねえだろ。」
「簡単なことです。"魔法"は戦うためだけに存在するわけではありませんから。」
「……なるほどな。」
「…?魔物がいます。」
「あん?そいつぁ邪魔だな。どこだ。すぐに潰してくる。」
「いえ。お兄さん達。」
ダダダダ…
「「はい!」」
「あなた達に持たせた装備は何のための物ですか?」
「申し訳ございません!」
「向こうの茂みに魔物がいます。2人で片付けてください。」
「「はい!」」
「っは!彼氏の手を汚させねえってか。」
「…まだ早いですよ?」
「なあに。もうすぐだろ?」
ガチャ。
「乗れよ。」
「あら。」
……………………。
「シラユキ様、デートの噂はガチだったな!」
「まさかあの大男だとは思わなかったよなー!あいつ、"開花"したらしいじゃん。」
「はぁ…俺達は開花どころか門番から一向に出世しないよな。」
「まぁ気楽でいいじゃん。魔物倒して今日は酒だ!俺が奢りで。」
「おお〜!さっすが!男だねぇ!」
「「あははははははは!」」
《クロロロロロロ…》
「出たぁっ!?」
「任せろ!風に乗れ!一番槍!!」
ザクッ!!
《クギャァァァアア!!》
…ブシュッ…ドサッ。
「あれ?…めちゃくちゃ弱い?」
「クリティカルだったんじゃないか?」
「いや、めちゃくちゃ弱いぞこの魔物。」
「見たことないよな…」
「一応、"花園"の受付に報告しよう。」
「よし…これ運ぶのはじゃんけんで。」
「分かった…せーの!」
「「萌えじゃん!萌えじゃん!萌えればいいじゃん!」」
……………………………………。
「トモた〜ん…今日も暑いよ…冷たいの飲みたい。」
「ジミーさんがそう言うと思って…はい、どーぞ!!」
「作っててくれたのー?嬉しいなー。いただきまーす。」
チュルルルル…
「チョコバナナマシュマロティックビッグバンシェイクです!」
チュルルルル…
「どうですか!美味しいですか!」
チュルルルル…
「黙々と…ゴクゴクと…!そんなに気に入ってくれたんですか!」
チュルルルル…
「ジミーさん、なんでミーをガン見するんですか?」
チュルルル…ズボボボボッ!
「っぷはあ。おかわり。チョコとマシュマロティックなんちゃら抜きで。」
「……それって普通のバナナシェイクじゃないですかー!」
ポコポコ!
「うひ。こう言えば茶番に発展すると思った。あの時ナギにオススメされた小説買って良かったー。」
「…?」
「何でもないよ。」
コンコン…ガチャ。
「ジミー様。魔物の討伐に出ていたチームBが未確認の魔物を発見しました。死体を確認していただきたいのですが。」
「未確認?でも今トモたんと日常イチャイチャ茶番で忙しいんだよなー。」
「早く行って済ませれば邪魔は無くなりますよ?ジミーさんいっつも夏休みの宿題やらないで最終日に慌てるんですから!」
「むむむ…じゃあ…見てくる。すぐだから!」
「バナナシェイク作って待ってまーす!」
…………。
「これ?恐竜じゃん。やば。」
「この魔物、あまりにも弱いのです。」
「そんなに?」
「威嚇程度の魔法一撃で死にました。」
「弱っ。やば。…ん?これ、メス?」
「…なんですか?」
「…ほら…ここ。お腹の所に。カンガルーみたいな有袋類なんじゃない?」
「…たしかに袋…ですね。」
「魔物の生態なんて気にしたことなかったね。戦闘技術を知るのが大事だし。」
「ジミー様。有袋類だとしたら。」
「…分かってきたね。こいつ、家族が居る。」
………………………………。
ギルドで一通り報告をした後、ヒカリさんの家に必要な荷物を持って移動した。
俺の家…ローンとかは無いし、住み続けることは可能なんだけどさ。
事故物件どころの騒ぎじゃないからね。
「うふふ。着替えよりも…コレクションの方が多いかしら。」
「服はあまり気にしたことなくて。ユーシャーズ読むと落ち着くし。」
「これは、何?」
「モモじゃ着れないな。グレイトマジシャンの衣装だ。」
「すごい…綺麗な装飾ね…」
「うん。ナナミさんが買ってくれたんだ。結界点だったかな?…なんだっけ…」
自分の記憶に自信が無い。
「ナギ君はこれ着たことは?」
「無いよ。買ってからそのまま。」
「…着てもいいかしら。」
ヒカリさんもユーシャーズ読者だし、ヒーロー物の映像作品やRPGも知識がある。
それに、皆は知らないだろうけど…結構色んな"服装"を披露してたりする。
……スク水の破壊力は鼻血の大量出血で死ぬレベル。
俺は無言で頷いた。
「モモ、本当によく食べるな。」
「ろーるけーき。美味しい。」
でしょうね。
濃厚なのにしつこくないクリーム、フレッシュな果物、おまけにカスタードクリーム。
溢れんばかりのそいつらをまとめあげたふんわりスポンジ。
1本3980円(税別)
ヒカリさんはナナミさんとは違ってモモに贅沢させてる。
デュークさん…経済面で苦労してそう。
ガチャ…
「どうかしら。」
「うわっ…」
グレイトマジシャンガールだ。
リセマラランキングで堂々1位。
能力も悪くないけど見た目が大正義っていうイセドラに風穴を開けた…どうでもいい?
「ナギ君…これ、どこで手に入れたの?」
「ん?特別な結界を守ってる店で売られてたんだ。」
「この衣装…ただ質が高いコスプレ衣装じゃないみたい。」
「………は?」
「…我こそ魔導の王、今ここに降臨す。」
グレイトマジシャンのセリフだ。
しかもこれは有名な声優のボイス入りなのに、ガチャで召喚した時にしか聞けない。
嘘だろ…!
ズウウウウウウウウ…
グレイトマジシャンは…ゲーム内の情報では…
「うふふ。マジックバリア。ナギ君、分かる?」
「ああ。グレイトバリアだ。基本4属性の魔法を半減する…」
「そんなにすごいのね…武器は無いのかしら。」
「そこのハードケース…」
カチャカチャ…
「開かないわ。」
「……は?」
慌てて確かめた。
「開かない…ヒカリさん、魔法で開いたり…」
「………。」
無いのか!不便!
((クリーナー・ビビ))
ボフン!
《きゅっきゅー!》
「なんで今ビビなの?」
「ビビ。そのケース、開けてほしいの。」
《きゅー!》
「いやいや、お掃除なら俺も安心して任せるけど…」
ビビは皆がイメージするスライムに近い。
顔とかないけど。
ケースの隙間に体を伸ばして入っていく…
ーきゅー!きゅー!
「中で鳴いてるけど…」
「見てて…」
パカッ!
《きゅーーっ!!》
「開いた…!」
「ありがとう。戻っていいわよ。」
チュ。
《きゅー…!》
ポフン!
「………うん。もう何も言うまいて。」
「その杖もいい?」
「うん。」
グッ…
改めて見ると衣装に"着られてない"のが分かる。
コスプレは…人を選ぶんだね。残酷だ。
「…私の予想ではこれも特別な物だと思ったんだけど…」
「え?このタイミングで?ロッドソードが何も無いの?わざわざそっちはハードケースなのに?」
「ええ。何も感じないわ。衣装はすごいの。着たらセリフが自然と…」
「ヒカリ。ごはんの時間。」
「え?もうこんな時間!ナギ君!脱ぐの手伝って!ご飯作って学校行かなきゃ!」
「うん!え?は!?いや、脱ぐの手伝うって…」
「遅れるわけにはいかないわ!早く!」
この衣装は両サイドに長めのファスナーがある。
「そ、その…ファスナー下げれないの?」
「バリアを発動してからファスナーに手をかけられないの!」
なんだその仕様。
「じゃあ…目は閉じるから!」
ヒカリさんの両脇に手を差し入れて…
あった。大丈夫、余計にサワサワしてないよ!
上から下に…
「よいしょ。」
ドサ。
「脱げた?」
「ええ。待ってね…」
「いや、俺反対向いて目閉じてるから!」
「もう大丈夫よ。」
「はやっ!」
………着てる。セーフ。
「うふふ。耳が赤いわよ?」
「ヒカリ。ごはん。」
「うん。ヒカリさん、ご飯。」
「もう。」
…………。
一瞬だけ。
最低な事を考えてた。
今回の被害者が、俺の家族じゃなかったら。
今の出来事でショックは帳消しだったんだろうなって。
俺は一生この深い傷と付き合っていかなきゃならない。
夏野 凪 は、家族を失った。




