闘病履歴71
人事を尽くして天命を待ての境地?
拓郎君が真華にヒーリングを施しながら言う。
「夢見術もあちらの世界の法則性にがんじがらめにされているのならば、やはり必要なのは、表層意識を堅牢に保つというか、意思の力と情けが肝心と言う事なのか」
真華が言う。
「この局面では、彼女の救出が一番肝心だから、それを損なう行いは慎むべきなのよね。例えば私が慣れない幽体離脱をして彼女に憑依、そこで向こうの法則性に壊されて情けをキープ出来ず、私が悪霊になって、彼女を狂わせ、彼女を絶望の果てに自殺させてしまう可能性もあるだろうしね」
拓郎君が言う。
「それならばあちらの摂理に則って、憑依して来る生き霊と協調態勢を作り、生き霊に彼女の夢見を生きる希望に誘う形を、慣れた手腕で従来通りに作って貰い、出来る限りそれを励ます形を取った方が、彼女の心は壊れないで済むだろうしね」
真華が言う。
「暗中模索しているから、私達は混乱しているのよ。とにかく振り出しに戻った感が強いし。いずれにしろ彼女を助け、私が助かる事の原形は何も変わらないしね」
拓郎君が言う。
「と言うか、安全策であろうマカロンの夢の中での説得も、それが一つの夢見術を為しており、曖昧模糊とした夢の中で、マカロンが生き霊き言った事が、生き霊を通してどのように、彼女の夢の中で作用するのかも分からないしね」
真華が頷き言う。
「そうそう。向こうの法則性には人間社会の論理性なんか通用しないしね。私が言った情け溢れる言葉も、逆に悪霊の小道具にされてしまう可能性だってあるだろうし。曖昧模糊としているから、絶対の決め手は無いのよ」
拓郎君がいみじくも言う。
「いずれにしても、霊媒師の先生の言う通り、誠心誠意情けを尽くすしか無いのか」
真華が頷いた。
「人事を尽くして天命を待ての境地かもね」




