表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モスキート少女と狼少年  作者: 杏里
2/12

血の味

狼の尻尾を自慢気に撫でながら、ラルフは言う。

「僕のお父さん、狼男だったんだっ!」

尻尾の毛並みは素人の私にも分かるくらい上質だ。

まじまじと尻尾を見つめる。

「触ってみる?」

私は少し躊躇いながらも触れる。

ずっとこうしていたくなる程気持ちいい感触。

暫く触れたままでいると、ファサッと尻尾が揺れて驚く。

「くすぐったいよ、ふーちゃん」

ふーちゃんって私?

まあ、いいけど。

「ふーちゃんは僕が狼って知っても化け物とか罵らないんだぁ」

「私だって、血を舐めるんだから化け物の分類に入るよ」

軽く笑い飛ばすと、ラルフは今までと違う優しい笑顔を見せた。

「血、今欲しい?」

私は首を横に振った。

「でも、あの味が癖になっちゃって。また欲しくなるんじゃないかな」

推測のように話したけど、これは絶対だ。

私はいつか、必ず血が恋しくなる。

「そーいやラルフ、殺しの後片付け依頼した?」

悠斗が言う。

沈黙が流れる。

ラルフがテレビをつけた。

丁度私の両親のニュースが。

[この殺害現場は不可解なことがいくつも見つかっており、この家に住む神崎風梨さんが行方不明になっていることから、警察は神崎風梨さんが犯人として捜査しています]

え、私犯人扱いされてるの?

「忘れてたっ!ごめん、ふーちゃん」

謝って済む問題か?

画面には私の家が大きく映し出されており、警察が沢山立っている。

「私、犯人じゃないのに…」

「あーあ。どうするんだよ、これ」

警察に私は犯人じゃないって殴り込む?

逆に捕まりそう。

「僕、こうなること想定して証拠残さないからなぁ。ふーちゃんが殺った証拠もないから大丈夫だとは思うけど」

警察に見つかれば、間違いなく事情を聞かれるだろう。

コソコソと生活しなきゃいけないのか?

耐えられない。

「どうする?海外逃げる?」

「それも一つの手だな」

「私、パスポート持ってないんだけど」

海外なんて行ったことない。

「偽造したらいいんじゃなぁい?」

それって犯罪じゃ…

顔を引きつらせる。

でも、この人達殺人鬼なんだし、やりかねない。

「私、犯罪犯したくない」

「何言ってるの?ふーちゃん殺し屋するんだよぉ?」

あれ、やるって言ったっけ。

でも血を飲めるなら構わない。

いやいや、構わなくないだろう。

でも血を飲みたいし…

ああ、もう。どうにでもなれ!!

「最近ラルフ、仕事やってないから金ないぞ」

仕事って、殺しだよね。

「あれ、でも私の両親を…」

「あれは摂取。僕、殺戮中毒(キリングジャンキー)だからだよっ!」

それは自慢ではない。

「殺しのお仕事、しよっか。ふーちゃん」

え、私が?

「そうだな。とりあえず練習ってことで簡単な仕事探してやる」

よろしく、とラルフが言う。

決定事項らしい。

悠斗が部屋から出て行ってしまう。

「来て!」

ラルフが手招きしている。

部屋を出て、隣の部屋に移動。

その部屋には大量の武器が。

「拳銃は威力で腕が外れちゃうから、ナイフ選んでねぇ」

ラルフは満面の笑顔で告げる。

ナイフの種類を教えてくれた。

ククリナイフにバタフライナイフ、ボウイナイフなどの中から私は二本えらぶ。

ダガーとハンティングナイフだ。

ダガーは投げるのに向いているらしい。

ハンティングナイフは鋭い切れ味と丈夫さを見込んで選んだ。

血が飛び散る光景を想像するだけで、わくわくする。

そんな私は狂っている。

ダガーを試しに投げたりしている間に、悠斗は仕事を見つけたらしく、パソコンを持ってラルフのところに来た。

私には教えてくれないのか。

画面を覗きこもうとしても、ことごとく避けられる。

私の仕事なのに。

「明日の夕方、仕事ねっ!」

ラルフに無邪気に言われる。

「内容、何故教えてくれないの?」

ふくれっ面をして聞いてみる。

「可愛いっ!!」

ラルフに抱きつかれた。

私の顔は急速に赤く染まる。

「照れたふーちゃん可愛い!」

悠斗にも抱きつかれる。

「っ離れて!」

持っていたナイフで引き剥がそうとしたが、その手を抑えられる。

「全身の血を吸いつくしてやる」

少しだけ腕の力が緩んだ途端逃走。

ナイフを向けて威嚇するが、ノーダメージ。

私はさっきいた部屋に戻って鍵をかける。

もう夜だ。

このベッドで寝よう。

でも、ラルフのだっけ。まあいいや。

眠気に負けて眠った。

翌日。

「きゃむぐっ!?」

悲鳴をあげようとすれば口を手で塞がれた。

何故悲鳴をあげようとしたかというと、朝起きたら悠斗が横で寝ていたからだ。

ジタバタしていると、ようやく口から手が外れる。

ぷはっと息を吐き出す。

「何で一緒に寝ていたの!?私部屋に鍵かけたよね?」

悠斗が欠伸しながら答えた。

「ふぁ…ピッキングした。さっきまでラルフも居たけど、ご飯作りに台所行った」

料理、できるんだ。

台所へ行くと、いい匂いがした。

「おっはよー!ちょーどご飯出来たよ」

エプロンをして笑うラルフに少しキュンとした。

美味しそうなご飯。

いただきます、と小さく呟いて食べ始めた。

「おいしい…」

悠斗とラルフは凄い勢いで食べていた。

「そういや、ふーちゃん料理できる?」

悠斗が食べる手を止めてきく。

「少しくらいは」

多分できる。レシピをみれば。

「たべたいな、ふーちゃんの手料理」

ラルフはまた無邪気に笑う。

いつかは作ろう。

ちょっと面倒だけど。

食べてからは暇だったので昼寝していた。

気付いたらもう夕方で、ラルフが起こしてくれたようだった。

昼ご飯食べ損ねた。

「仕事行くよー」

ああ、仕事あるんだ。忘れてた。

ぶかぶかのコートをラルフが貸してくれた。

コートの裏には大量のポケット。

ここにナイフを入れるのかな?

と思っていると、ラルフがにこにこしながら教えてくれた。

何がそんなに楽しいんだろう。

そんなこんなで仕事場として連れて来られたのは、お屋敷。

入りづらい。

「僕は裏からガードマン潰していくからターゲットよろしくー!」

ちなみにターゲットの顔は写真で見せてもらった。

私は頷き、屋敷に入る。

ここからはラルフと別行動。

注意しないと。

そっとターゲットの部屋に侵入する。

ここまで誰にも会わなかった。

ラルフが潰したんだろうな。

私はしっかり狙ってターゲットの心臓にダガーを投げる。

命中、ターゲットは即死。

溢れ出す血液を、我慢できずに飲む。

ん、不味い。うえ。

なんで、こんな不味いんだろう。

お陰で全然満たされた気持ちになれない。

口の周りはおそらく紅色に染まっている。

それを手の甲で拭った。

外に出ると、ラルフが返り血ひとつ浴びずに手を振っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ