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球技大会day3

 準決勝。


 その響きだけでここまで頑張ってきたかいがあったものだ。


「分かってるか?颯人。決勝で僕達は負ける。だから僕が活躍できるのはこの試合で最後だ」


「お前の意見に同意するなんて癪だが、まぁ概ねそうだな」


「だがここで大きな問題が発生しておる事実に気付いているか?」


「何だ?なにかまずいこどでもあるのか?」


 まさか!!この男気付いてないのか!!


「僕が筋肉痛ってことだよ!!」


「知るか」


 な、なんて淡白な返答だ!!


 これが親友のピンチに対するものかよ。


「まぁピンチと言っても、僕には秘策があるんだけどね」


 颯人が嫌そうな顔をする。


「僕はこの試合で例の技のためだけに尽力する。それ以外は一切行動しない」


「待て。俺はお前が活躍しようがしまいが死のうが何でもいいが、お前のせいで試合に負けるのはごめんだ」


 え、この人ナチュラルにめっちゃエグいこと言ってるの自覚してるの?


「まぁそこは心配するな知り合い。相手が僕に近寄らさなければいいんだ」


 ため息を目の前で見せられる。


「確かに何試合か前にお前の場所に人が来なかったが、それは相手がゴキブリに耐性がなかっただけで、準決勝の相手も同じとは限らないからな」


 そんなもの天才である僕が考えていないはずもないだろう。


「チッチッチ。だからこその秘策なんだよ颯人君(暗黒微笑)」


 人が本気で嫌悪を抱いた時、あんな顔をすると知ることができた僕であった。


 ◇◆◇◆


「さて相手の強さ診断に入ろうか」


 恒例、やり過ぎてくどい、ここっているの?など多くのご意見をメールで頂いているわけだが、僕は用心深い男なので一応聞いておく。


「颯人きゅん。今回の相手はどんな感じっすか?」


「同学年のサッカー部が多いクラス、強い以上だ」


 なるほど、颯人もめんどくさくなってきて端的にまとめてきたな。


「そんなことよりお前のその格好はなんだ?」


「どうしたんだ?サッカーするならこんな姿見のやつなんていっぱいいるだろ」


「ああそうだな。だがそれは雨の日の試合終わりの状況でしか現れないんだぞ」


 僕のお洋服は泥まみれであり、潔癖症でない人でも近づきたくないほど汚れている。


「これが僕の秘策、僕に近寄らせないための案だ」


 僕が全身に泥を塗りまくってる時、たまたま冷華と美桜先輩は近くを通ったが、冷華は他人のふりをし、美桜先輩は笑いを堪えるのに必死そうであった。


「ほら颯人。もう試合は始まるぞ」


「お前のそれはどんなに活躍してもかき消せない恥だと気付いた方がいいぞ」


 ピーーーーーーーー


 そんなわけで試合が始まる。


 僕は全身筋肉痛であり、うまく体が動かないが、僕の考え通り僕に近寄る人間はいないため、悠々と過ごしていた。


 奴が来るまでは


「なんだよこいつばっちいな」


 運悪く僕の近くでスローインとなり、一人の男が僕の前に立つ。


「な!!お前、空か」


「お前は!!」


 誰だっけ?


「お前さえ、お前さえいなければ!!」


 なんか急に怒鳴りだした僕を一方的に認識している男。


「あの時、お前が冷華のことを……」


 何だ?


 彼の言葉には、僕が冷華に対して何か悪いことをしたかのような言い草である。


 僕はほんの少し、思い出したくない過去を振り返る。


 僕の頭に小学生の頃の情景が浮かぶ。


 そこには泣いている冷華と顔を真っ赤にした男。


 まさか!!あの時の!!


「た、確かに僕が冷華のスイカバーを顔で潰して泣かせたのは悪いと思ってるよ!!」


「何だよそれ!!知らねぇよ」


 あれ?違うの?


 もう一度回想シーンに入る。


 そこには公園で遊ぶ子供達と、そこから離れた位置に一人立つ青髪の少女。


 僕はそんな彼女に対してある言葉をかける。


 すると彼女は泣き出してしまう。


 その後、僕は彼女をブランコに連れて行き


「あの時冷華のパンツを覗いたのは幼少期の気の迷いだったんだよ!!」


「それも知らねぇよ!!てか何だよそれ、羨ましいな!!」


 何言ってんだ?こいつロリコンか?


 そして、僕は過去を振り返るついでにこいつについて思い出す。


「何でまた僕が悪いみたいに言うんだ。冷華をいじめていたのはお前だろ?蒼太」


「ッ……」


 酷く歪んだ顔をする。


「俺も……あの時はガキだった。そんな理由で許されることじゃないことも分かってる。その時に彼女を支えてくれたことにはお前には感謝している」


 あれ?難癖つけられると思っていたが、なんか感謝されちゃったぞ?


「でもそれとこれとは話が別だ。お前は彼女をそろそろ解放してあげるべきだ」


 解放


 その言葉を聞いて思い浮かぶことは僕の中で一つしかなかった。


「やっぱり冷華はエグゾデ◯アだったんだな」


「お前いい加減にーー」


 ピーーーーーーーー


 前半が終わる笛が鳴る。


 恨めしそうに自身のチームに戻る蒼太。


「なぁ、あいつって」


「颯人、シリアスな場面を作りたいならもう少し近くで喋らないか?」


「は?お前臭いんだよ」


「香水か84持ってない?」


「モップならすぐに用意できる」


「……」


「……」


「お前はチームの要だろ?みんなに後半の動きでも話しとけよ」


「ああ」


 ベンチにいる冷華と目が合う。


 彼女はどこか躊躇うように目を逸らす。


 そして鼻を塞いでどこかに走り去ってしまう。


「ぴえん」


 ◇◆◇◆


「ここで僕は練習の成果を見せる」


 理由は言わないがメンタルを大きく削られる事件があり、僕は全身の泥を落とし水も滴るフツメンとなったわけだが、ついに僕の必殺技をお見舞いする時がきた。


 後半終了間際、コーナーキックとなりチャンスが訪れる。


 ディフェンスである僕の相手のゴール前に集まり、どうにか一点押し込もうという状況だ。


 そして僕のマークについてる男は親の仇とばかりに僕を睨みつける。


「なぁ蒼太」


「んだよ」


「お前の言う解放?リリース?クードバースト?はよく分からないけど」


「俺はお前が言ってる意味が分からん」


 颯人の蹴ったボールが綺麗な軌道を描き、僕の真上に近づいてくる。


「僕は彼女を縛った記憶なんてないけど、そう言うのは僕に言うんじゃなくて自分の手で解決すべきことじゃないかな?」


「……」


 彼が僕に怒っているように、僕も彼に対しての気持ちが収まったわけではない。


「それに、冷華を縛るって響きがちょっとアレだよね。僕はそういうの結構ウェルカムだから解放なんてするはずないだろ?」


「……」


 あ!!颯人のおんなじ目してるー。


「じゃあいくぜ!!」


 僕はちょうど真上にきたボールをオーバヘッドシュートで打ち


「あっ」


 空振ったボールは綺麗な軌道でゴールに吸い込まれる。


「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」


 盛り上がる会場。


「ッ///」


 死にたい僕。


「……」


 気まずい蒼太。


「よし」


 自然とガッツポーズがでる颯人。


 そして準決勝は1-0で僕達が勝利を収めた。


 ◇◆◇◆


 決勝。


「頑張って下さい旬会長(可愛い生徒会役員)」


「期待に添えるように頑張るよ」


「頑張んなさいよ龍騎(友達と思ってるけど実はいつの間にか惚れてる系)」


「おう。最後まで応援よろしくな」


「颯人君頑張ってねぇ(メスボ天川)」


「コンクリートと東京湾どっちがいい?」


「それってセットじゃなかったんだ」


 各々のイケメン達が多くの応援を受け、最終決戦に赴こうとしていた。


「ねぇ僕の応援ってないのかな?」


「あるわけないでしょバカ」


 GPSで僕の居場所を伝えると、僕は絶賛ベンチにいます。


 なぜって?


 そりゃさっきの試合でオーバヘッドかまして足を挫いたからに決まってんじゃん。


 そんなのも分からないとかバカなの?


「冷華は美桜先輩の方に行かないの?もしかして試合に出てる人で気になる人がいるとか?名前だけ教えて」


「コート外には一人いるけど、試合には出てないわね」


「でへへ、それってやっぱりb」


「それよりも空の方こそ美桜さんのところに行かないの?」


 うーん。


「何だか最後まで見るべきだと思ったんだ」


「びっくり。空にそんな普通の人みたいな感性があったなんて」


 わぁ。


「全てが普通じゃない冷華にだけは言われたくなかったよ」


「それに、向こうの試合を見に行かないのは正解かもね」


 ??


「なして?」


「あまりいい気分にはなれないと思うから」


 ますます分からん。


「まあいいや。小春と真白はどこに?」


「真白が決勝まで進んで、小春はそれの応援」


 おお!!


「決勝まで行ったのか」


「そのまま優勝して欲しいわね」


「冷華はどうだんだ?」


「負けたわ。さすがに本物のバレー部はちょっと厳しかったわ」


 ちょっとってところがすげーんだけどな。


「始まったわね」


 冷華との話の途中で試合が始まる。


「へ?」


 それと同時に点数が入る。


「さすが旬先輩ね」


「いやそんなレベルじゃないだろあれは」


 試合開始と同時に超ロングシュートがゴールにぶち込まれる。


「もうプロへのスカウトも凄いらしいわ」


「マジやべぇじゃん」


 やはりあの人が凄いと思うと同時に


「やっぱり何で僕なんだろ」


 彼の幼馴染の矢印が僕に向く理由に戸惑う。


「やっぱりみんなって物好きだよね」


「そうね。本物のゲテモノは勘弁して欲しいけど」


 そして試合は何度も大きな局面を迎える。


「おお!!」


 惜しい!!


「まずい!!」


 危なかった


「うわぁぁぁぁ」


 決められたー!!


「何だよ」


「いいえ」


 微笑ましそうに僕を見つめる冷華。


「キッズみたいに盛り上がって可愛らしいってか」


「ううん。そういうわけじゃないけど」


 嬉しそうに


「あなたとこうして笑い合える日々は楽しいものね」


「……」


 僕は大人しくなった。


 そして試合は5-1で敗北するのだった。


 ◇◆◇◆


「まだ美桜先輩の方が試合続いてるっぽいな」


 そして痛い足を引きずりたどり着く


「は?」


 コートにはポツポツと泣いている人達。


 そして美桜先輩がそれを慰めている。


「だから言ったでしょ、あまり気分のいいものじゃないって」


 僕は点数盤を見て納得する。


 そこには11-0と書かれた数字。


 完璧とは時に、人に絶望を与えてしまうものである。


「それに美桜先輩……」


 どこか……嬉しそうだな。

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