球技大会day2
一日目から内容が濃すぎる球技大会だが、2日目は僕のメイン会と言っても差し支えない。
今日はいきなりトーナメントの最初からの試合である。
「僕の背中は任せたぜ」
「いやお前ディフェンスなんだからお前が俺の後ろに行くんだよ」
マジレス正論頑固親父の言葉に渋々後ろに下がる。
「よかった、小春は大丈夫みたいだな」
遠くから応援している小春の姿が目に入る。
「よかった、真白の頭は大丈夫じゃないみたいだ」
どうやら昨日、小春のことを知った真白は、自分がバスケに誘ったせいで怪我をさせてしまったと罪悪感を覚えたらしく、ずっと小春を警備するかのようにウロチョロしている。
守るつもりがむしろ男が寄ってきそうだな〜と思っていると、ある二人組がやってくる。
「冷華に旬先輩、どうしたんだ?」
「私と旬先輩は応援出来ないから、今のうちにエールでも送っておこうと思ってね」
「ごめんね空君、少し冷華ちゃんを借りてくよ。でもきっと君達なら勝てると思うから次回のお楽しみってことで」
「いえいえ、生徒会で忙しいのにわざわざ来てくれただけでも嬉しいですよ」
冷華を連れて行くだけなのにここまで報告に来るとは、なんて律儀なんだ。
二人の行動に感心していると
「じゃあ空、私達は美桜さんの応援行ってくるから頑張ってね」
「へ?」
んだって?
「生徒会の仕事があるから僕の応援が出来ないんじゃないのか?」
「いいえ、生徒会の運営は他の人に任せてるから私と先輩はフリーよ」
つまりこの人達は美桜先輩の試合見たいけど、一応僕の応援を少ししに来たってわけか。
「いやー、少し嫌味たらしく聞こえるかもしれないけど、冷華ちゃんがいないと応援すらまともに出来ないんだ」
そりゃ旬先輩が一人突っ立ってたら、世の女の子達が見逃すはずがない。
訓練を受けていない肉食獣に待てなんてできるはずないんだから。
だが、冷華がいると話が変わってくる。
巷では『氷の女王』だの『エ◯サ』だの言われている彼女と二人になった場合、男は旬先輩のスペックの高さに、女は冷華の圧によって誰にも寄り付かなくなる。
実はこれが冷華が生徒会に入った原因の一つではあるが、語るのだるいんで未来の僕に託そうと思う。
そんなこんなで旬先輩と冷華のファイアーブリザードコンビが去っていき、試合が始まろうとしていた。
「対戦相手は三年だったな。まぁ颯人と龍騎がいるんだ。旬先輩が言ったように負けることはないだろう」
僕がブツブツと独り言を喋る姿を薄気味悪そうに見てるクラスメイトを無視していると、『ピー』と笛の音が鳴った。
前回の一方的な試合と違い、今回の相手は中々やるようだ。
「わー相手結構強いなー」
試合が始まっても独り言が止まらない僕は、コートに一人ポツンと立っていた。
「おい空!!オフサイドだけ気をつけてよ!!」
「分かってるよ颯人」
何故僕がここまで呑気でいられるのかはCMの後で説明しよう。
『…………………………パワ』
ん?どうやらスキップしちゃったみたいだね。
まぁ説明させてもらいますと、僕is嫌われている。そんな僕にボールを取られると屈辱。
じゃあどうするか、あいつに近づかなければいいじゃん。
これが答えである。
その結果、僕のいないところで激しい鍔迫り合いが起こっているが、僕がここを空けてしまうとまずいので、僕は近づくことができない。
さらに厄介なのが
「空来てるぞ」
「無理だってこれ!!」
僕にボールが回ると、すごい形相で相手が何人も突っ込んでくる。
僕が基本的に練習したのはパスとディフェンスであり、ドリブルに関してはほぼ習っていないため、ボールはすぐに他の人に渡ってしまう。
そのため、今現在ある意味最も目立っているのは僕であり、最も活躍していないのも僕であろう。
「これ一番カッコ悪いやつやん」
今現在点数は1-0で僕達が勝っているにも関わらず、相手の顔には計画が成功した清々しい表情の奴らばかりである。
「まずいな、ここまで僕をメタってくるなんて予想外だ。こいつら僕を陥れる代わりに自分達も劣勢に立つのを理解してるのか?」
きっと彼らは男子の英雄になり、女子から冷ややかな目で見られるであろう。
「だが奴らのことなぞどうでもいい!!このままだと僕の『ドキッ!!サッカー男子のハーレム計画』に大きな支障をもたらしてしまう!!」
今、美桜先輩は試合中で冷華がその応援に行き、小春は昨日のこともあり周りに質問攻めで試合全然見れてないし、真白はSPに夢中で試合見てないけど活躍しなーー
くてもよくね?これ。
悟りを開いた僕は颯人と龍騎に全任せし、3-0で勝つことができた。
「んー、先輩達のクラス結構強いはずなのに、案外点差ついたな」
「まぁそりゃ片方だけ固めてたら守れるんだからな、やりやすかっただろ」
「先輩達チーム練習サボってたのかな?」
「いや、むしろ他よりもしたと思うぞ」
「?」
賞賛の嵐を受けた汗も滴るいい男達が先程の試合について語り合う。
どうやら対戦相手のクラスの人達と仲がいいようで、普段との差に疑問を抱いてるようだ。
てかそんなことよりこの龍騎とかいう男、もう三年とも仲良くなってんのか!?まだ転校してきて一ヶ月もたってないぞ!?
コミュ力の高さを痛感しながら、しおりを読む。
「なぁ颯人、僕達の試合はまた直ぐだよな」
「そうだな」
龍騎との会話を終えると真っ先に僕の下にくる颯人。
こいつ口ではああ言ってるけど絶対僕のこと大好きだろ。
「うへぇ、昨日とのギャップが激しすぎるって」
「我慢しろ、今日勝ち残れたら明日は準決勝だぞ?」
ほう?
「そう言われるとやる気がでるな。次の相手は強いのか?」
「そうだな、一年だが中々強いらしい」
「何?」
まずいな
初日は相手が弱すぎて目立てないという想定外の自体が起きたが、普通に考えて強い相手だと僕が活躍できない可能性がある。
「一応颯人レーダーにかけておくか」
「初めて聞いぞ、それ」
「hey颯人。僕達のクラスは勝てるのか?」
「うーん、まぁ五分五分くらいじゃないか?」
この慣用句には言葉の後ろに『サッカー部が俺だけだから』がついてるため、勝率は7割くらいとみえた。
「つまり、向こうの連中が絶対零度を当ててきたら、僕達の負けってことか」
「俺は絶対零度の命中は60はあると思ってる」
「はぁ?地割れなら分かるが、それはありえないね」
「おい!!試合始まるぞ!!速くコートに入れ!!」
クラスメイトの名前すら覚えてない奴からの折檻が入る。
「ヒー、怖い怖い」
「悪い」
お互いに定位置に戻る僕と颯人。
そんな颯人に先程の男が声をかける。
「お前が試合前に談笑なんてすることあるんだな」
「……だから悪かったて」
「別に攻めているわけじゃない。ただ、あいつといる時のお前は少し違うな」
しばしの沈黙
「そんなもんだろ、人間なんて」
「それもそうなんだがな」
「そんなことより試合に集中するぞ」
「ああ、頼んだぞ次期エースさん」
◇◆◇◆
ピーーーーー
試合開始の笛が耳に響く。
「颯人!!」
「おう」
いつもと同じように颯人と龍騎のコンビネーションにより、開幕からゴールを奪いとるように思われたが
「ふ、甘いですね」
そんな連携を崩した相手は、高身長でイケメン、そしてあの動き的に運動もできるであろう男だった。
だが、何故かイケメンに対してアレルギー持ちの僕が最初に感じたのは、嫌悪感よりもその男の溢れんばかりの小物臭であった。
「うお、やるな!!お前が噂の太郎か」
「はい、僕こそかの有名な嚙真瀬太郎です。以後お見知りおきを」
二人の男が衝突し合う。
龍騎と謎の男がボールを奪い、奪われる凄まじい攻防が繰り返され、その光景は漫画の1ページを飾るような熱さがあった。
「でもこれは現実なんだから速くパスしてくれないかな」
完全に二人だけの空気になってしまい、ギャラリーは大盛り上がりだが、フィールドにいる人は完全に手元無沙汰だ。
そんなわけで空気読めない代表の僕は二人からボールを奪いさる。
二人ともお互いに集中していたようで、呆気なくボールを盗られてしまう。
突然の出来事に周りは沈黙。
そんな中声を上げた人物は、ちょうど僕からボールを奪われた二人だった。
「さすが天川だな!!俺も熱くなりすぎて周りが見えてなかった」
「天川……なるほど、彼が。ふっ、それでこそ僕の……」
なんか龍騎の奴、僕の全肯定BOTになってないか?
あとお前は誰だよ雑魚風イケメン。
とりあえずボールを颯人に渡し、僕は自身のポジションに戻る。
「うーん。今のを活躍と捉えるには薄い上に、むしろ悪目立ち感が否めないしなー」
主人公のお約束である友情・努力・勝利のうち勝利は決勝で負け確っぽいし、友情は僕から最も程遠い言葉だ。
そうなってくると、僕を魅せるためには努力の部分をひけらかす必要がある。
「お!!そんなこと考えてるとチャンスじゃんか」
颯人がボールをキープしているが、どうやら攻めあぐねている様子だ。
そんな中で僕の前方は颯人に集中するあまりガラ空きである。
「Hey 愛しのダーリン パスプリーズ」
「……」
僕の掛け声に嫌悪感剥き出しになりながらもボールを渡してくれる。
「このままボールを相手のゴールに」
シュートはせず、ボールを浮かせる。
僕はディフェンスであり、その役割はトップの人間のサポートである。
僕は何でもできるあいつらとは違う。
だから僕が出来ないことは
「ナイスだ天川!!」
主人公様がしっかりと回収してくれる。
龍騎の放ったボールは突き刺すようにゴールを捉えた。
周りから大きな喝采が飛ぶ。
その標的は彼であり、僕ではない。
でも、それはそれでよかったと思
「うわけなないじゃん」
ヤッベ
完全に龍騎の奴を目立たせてしまった。
てか結構いいパス出来たから僕も褒められるべきじゃない?
「クソ!!あの時」
(プロの選手だとディフェンスの人もかなり人気が高いぞ)
って言ってた颯人の言葉を信じるんじゃなかった。
「ま、でも」
僕の視界の先には大喜びしてる小春と試合の光景と小春が大きく動くのが心配で大混乱している真白の姿。
「よくやった」
「サンキュ」
褒めてくれる友人。
「ナイスパスだ天川」
「べ、別にあんたのためにしたんじゃないんだからね!!」
「ん?そうなのか?じゃあ勝手に感謝しとくな」
通じ合い始める心。
「ふっ、まさに青春じゃねーか」
ギラギラと光る太陽に手をかざし、まるでそれを捕まえるように強く拳を握り締める。
「僕たちの戦いはこれからだ!!」
「いやホントにそうだから、君のせいで試合再開できないんだから速く自分のコートに戻りなさい」
「あ、すみません」
◇◆◇◆
上手く締められなかったためか、そのまま何も進展なく試合は後半に進んだ。
「いやもうあの感じで終わって僕達の勝利での次週でよかったんじゃないか?」
「そんな上手くいくわけないだろ。前半は何とか1-0だが、一年なのにかなり体力がある奴が多い、このままだと押し込まれるぞ」
険しい顔をする面々。
「え?何言ってんだ颯人。このまま角でボールキープすれば勝てるじゃないかジャマイカ」
僕の発言でメンバー全員が静まりかえる。
「天川、それはお前……」
僕のことを全力でよっこいしょしてくる龍騎も何か言葉に詰まる様子だ。
「このバカでアホで能無しのことは無視でいい。後半は少し守り目でいく。あの10番は俺が見とく、以上だ」
颯人が負けイケメンのマークにつくようで、彼の動きさえ止めれば多分このまま何事もなく終わるだろ。
そう思ってた時期が僕にもありました。
「ハァハァ、何であいつら疲れてるはずなのに強くなってるんだよ」
僕達のチームが疲労を見せる中、相手チームはベンチから出てくると生き生きとした顔で我先にと攻め込んでくる。
そうしていつの間にか一点押し込まれ、点数は1-1となった。
「なるほどそういうことか」
近くで僕ほどでないにしろ、疲労を見せながら颯人が呟く。
「ハァ、なんだよ、んっ、そういうことかって」
「…………」
颯人の目線の先には、ベンチで貼り付けたような笑顔で座る真白の姿があった。
「根性論なんて今時流行らんと思うがな」
「完全に……同意、だね」
別に僕は奴らに彼女に対する気持ちで負けた覚えはない。
どんなに頑張る気概があっても人間には当然のように限界がある。
普段運動していない僕と彼らじゃ、地の差が大きく出てしまう。
「まぁ、だからと言って、、、負けるわけには……ハァ、いかんぜよ」
このままじゃいけないことは火を見るより明らかだ。
だからといって、それこそ根性で解決できるような問題じゃない。
「なぁ颯人。どうすればいい?」
「知らん。俺はあの10番につかなきゃならんから自分で考えろ」
そんなご無体なぁ
「お前は人を煽る才能があるんだから、相手の根性でもへし折っとけ」
煽る?
僕みたいな底辺の人間は皆に対してリスペクトの気持ちしか持ち合わせていないのに、そんな僕が人を煽るなんて無理に決まってるだろ。
すると某イケメンが僕の目の前に現れる。
「初めまして天川さん。僕の名前は噛真瀬太郎。真白さんと仲良くさせてもらっています。以後お見知りおきを」
はあぁぁぁぁ????
「な〜にをふざけたこと言っちゃってんの君〜!!」
言葉とは裏腹に、動揺を隠し切れない僕を嘲笑うかのようにあっさりと抜きさる噛真瀬とか言う男。
そのままシュートを打つかのように思われたが、寸前で颯人にボールを盗られてしまう。
そのままボールは外へと飛んでいく。
「何だかあの人よりもあなたの方が僕の敵になりそうですね」
「そう思ってる内は、多分お前はあいつに勝てんだろうよ」
睨み合う二人。
「なんかイケメン二人が見つめ合うとBL展開始まっちゃいそうだよね」
「はぁ……って天川!!」
「おいおい、僕を知ってることは褒めてやるが、先輩にはちゃんと敬語を使えよ」
「な!!誰があんたなんかに」
「で、お前らって何でそんな頑張れるの?」
「はぁ?そんなのカッコよく見せたいからに決まってんだろ。振られたあんたとは違って俺にはまだチャンスがあるんだ!!」
「ま、そりゃそうだよな」
なら作戦は決まったようなもんだな。
「善良で温厚な僕でも、さっきの言葉にはカチンときちゃったからな」
お前らのメンタルへし折ってやんよ。




