3 指圧師、クエストに誘われる
「すげぇ……産まれ変わったみたいだ」
「私、こんなに魔力を感じるの初めて……」
アルトに続いて一緒にいた2人のコリもほぐしてやった。そしたらとたんにエネルギーの循環がよくなったみたいだ。
閉まってた蛇口を開いてやったような感覚っていうのかな、ここまで変化があるのを見るのは俺もはじめてだった。
しかしこんなに循環の悪い奴らがよくも3人も集まったもんだ……
「これで一番簡単なFランククエストくらいならクリアできると思うんだけど……」
「いやぁ本当にすごい! 俺にこんな力があるなんて知らなかった、一体何をしたんですか?」
アルトが体中に循環するエネルギーに興奮を隠せない様子で俺に問いかけた。
「何って、コリをほぐしただけですけど……」
こんなこと5年間ほぼ毎日当たり前のようにやってたことだからそんなに驚かれるなんて、逆にこっちが驚きだ……
「コリをほぐすって要はマッサージしただけってことだよな? ウソだろ、こんな力が溢れてくるのはじめてだぞ」
一緒にいる巨大なハンマーを持つもう一人の男、テノルもこれまでにない体の充実感に高揚している。
3人組の紅一点、ソフラもいままで感じたことのない魔力に驚いてるのか自分の両手を見つめてた。
こんなに反応してもらえるなんて思わなかったけどなんか嬉しいな。
いままで誰をマッサージしててもお礼も言われなかったもんな……
「いける! これだけパワーが漲ってればFランククエストなんて訳ないはず!」
興奮しっぱなしのアルトはもうクエストに行きたくてしょうがない様子だ。
それを咎めるようにソフラがなだめる。
「もうアルトはすぐ突っ走るんだから、いくらなんでも急にそこまで強くはならないよ」
確かに通りだ、コリをほぐしてエネルギーは充実したけど限度はある。
そこまで強くなるなんてことはないはず……
「でもすげえよな! こんなにハンマーが軽いと思ったこと今までないぞ俺、これならFランクの雑魚モンスターくらいなら簡単にいけそうな気がする」
テノルもアルトと一緒で調子乗り屋みたいだ。
ついさっきまで落ち込んでたのがウソみたいにはしゃいでる。
「2人とも落ち着いて! もうちょっと冷静に考えないとまた失敗しちゃうよ! またクエストで震えて何もできなくなっちゃうよ。それよりこれだけ力が溢れてるならギルドに復帰させて貰えないかな?」
ソフラの言葉を聞いてアルトとテノルはハッとしてしゃぐのをやめ、腕を組んで考えだした。
ギルドに戻る……そう言う考え方もあるんだな……この3人がどう言う形で追放されたのかはわからないけど。
ただ俺はあれだけひどい言われ方をした元のギルドに戻りたいって気にはなれない。
難しい表情をしていたアルトが口を開いた。
「ギルドにはもう戻らない」
「なんで? せっかく力がみなぎってるんだし見直してもらえるかもしれないんだよ」
「俺もアルトに賛成だ! あいつら、俺らのこと才能がないとか散々バカにしやがって……今更戻れるかよ!」
「そう言う腹立たしさもあるけどさ、俺は単純にこの力を自分達だけで試して見たいんだ、あとさ……」
アルトが突然俺に顔を向けた。
「プットさん。もしよかったら俺達と一緒にクエストに行きませんか?」
「えっ!? 俺?」
まさかの提案だった。
コリをほぐしてやっただけでそんなことになるなんて……
「さ、誘ってもらえるのは嬉しいんだけど、俺には戦闘能力なんて全然ないしクエストに行ったって役に立てないと思うけど……」
本当はすごく嬉しいんだけど、俺がクエストなんてついて行っても足を引っ張るだけだ、何年そんなのから離れてたと思ってるんだよ……
「おぉ名案だ! プットさんがついて来てくれるならすげえ心強い!」
「ダメダメ! 悪いよ急にそんなこと言ったら。来てくれるなら嬉しいけど……」
あれ……テノルとソフラまで俺に来て欲しいって言ってくれるのか。
「役に立てないなんてとんでもない。もうすでにこれだけ俺たちの力を引き出してくれたプットさんが後方支援をしてくれたら安心だ」
いや、それは3人共信じられないくらいエネルギーが滞ってたからで……なんて言ってもわかってくれそうにないな……
「まぁ一回くらいなら……本当に役に立てないだろうけど……」
クエストに行きたい気持ちがつい勝ってしまった……
コリをほぐしただけでここまで煽てられた気が大きくなってたのもあるか。
どうせクエストに行ったらすぐ俺が役に立たないってバレるんだろうけど……
これだけ誘ってくれてるんだ、久しぶりにクエストに行くのも悪くない!
「「「やったあ!」」」
俺の返事に3人が満面の笑みで飛び跳ねて喜んだ。
不思議な気分だ……ついさっき指圧師って言われて追放されたばかりなのに、いきなりクエストに誘われるだけじゃなくて行くって言うだけでこんなに喜ばれるなんて……
夢じゃないよな? 夢だとしても出来過ぎなくらいだ……
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