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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第九話
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6

テルラ達は夜明けと共に動き出したが、黒髪ボブの女はそれよりも早くに食堂で朝食を取っていた。

注文時にはまだ厨房に火が入っていなかったので、パンとチーズとミルクのみと言う質素な物だった。


「おはようございます。私はこれから昨日の話を大聖堂に持って行き、皆様をお迎えする準備をします。その後にお迎えに上がりますので、ごゆっくりと朝食をどうぞ」


そう言い残し、黒髪ボブの女はチェックアウトして行った。


「お言葉に甘えてゆっくりとメシを食うか。昨晩は仕事の話が有るからみんなに合わせたが、荒野越えで栄養不足なんだ。ガッツリ食うぞ」


グレイは朝から肉料理を注文し、その他のメンバーも具沢山のスープやリゾットを注文した。

この街の人間でも朝から外食する人はとても少ないので、広々とした食堂で静かに腹を満たした。

空いているのでそのまま席に留まって雑談していると、二時間ほどで黒髪ボブの女が戻って来た。


「お待たせしました。早速大聖堂にご案内致しますが、宜しいでしょうか」


「勿論です。お願いします。荷物を取って来ますので、少々お待ちください」


全員が一斉に立ち上がる。

通常なら荷物置き場として数日は部屋をキープするのだが、この街では何が有るか分からないので装備や荷物を全て持って部屋を引き払った。


「反対派の人に見付からない様に、朝の礼拝の人の群れに紛れ込み、裏口から大聖堂に入って頂きます。関係無い人が後に続かない様に気を付けてください」


黒髪ボブの女と一緒に人ごみの中を進み、大きく口を開いている正面玄関から外れて大聖堂の脇を進んだ。

大聖堂の裏が湖だからか、空気が潤っている。

裏口は使用人出入り口で、働き易い恰好をした女性達がくつろいだりうろついたりしていた。

そこを抜けると、大聖堂らしく人気の無い厳かな雰囲気の廊下に出た。

スタッフは朝の礼拝で忙しいから、普段より余計に人気が無いんだろう。


「こちらです」


黒髪ボブの女は、二人の壮年僧兵が護っている部屋に案内した。

その中には、黒髪ボブの女を加えた三人の女性僧兵に囲まれている少女が居た。


「お待ちしておりました。私が聖女ルエピ・ミックです」


質素な椅子から立ち上がった少女は、名乗ってから金色の頭を下げた。

水の流れを表している様なローブを着ている聖女は、テルラやグレイと同年代だった。


「テルラティア・グリプトです」


ハンター五人も順に名乗り、用意されていた質素な椅子に座る。

プリシゥアだけは、事前の宣告通り、テルラの横で立ったまま警護の姿勢を取った。

その椅子の脇に小さなテーブルが有り、そこに湯気立つお茶が置かれた。

お礼を言いながら口を付けると、やたらと甘かった。

そして、立ったままの女性僧兵に警戒されながら話が始まる。


「お行儀良くすると話がくどくなるから、聖女と王女ではなく、ハンター一行と街の平和を願う女として会話したいんだけど。良いかな?」


聖女は、いきなり砕けた口調で緊張を解いて来た。

テルラ達は面食らったが、そちらの方が気が楽なのは確かなので、すぐに気を取り直して頷いた。


「ではそうしましょう。僕の事はテルラとお呼びください。早速、不死の魔物の話を聞きたいのですが」


「私の事はルエピと。不死の魔物ね。よみがえりの事は彼女から聞いているわよね?」


ルエピが黒髪ボブの女を指差したので、テルラは頷いた。


「動く死体だとか」


「普通のよみがえりは、火で燃やすか水を掛けて腐食を促進させれば倒せるの。所詮は死体だからね。だから水の魔法が使える私が出張ったんだけど、奴は翌日にしれっと出現したわ。だからアレを不死と判断したの」


「火か水以外では倒せないんですか?」


「こん棒で頭を叩き潰せば倒せるわ。頭が無事なら手足が無くなっても動くけど、肉片になっても動く、みたいな怪現象は無いわ。肉屋の商品が動き出したって報告は無いから」


朝から肉料理を元気に食べていたグレイは舌を出して気持ち悪そうな顔になったが、仕事の話なのでテルラは気にせず話を続ける。


「死体でも脳みそが大事って事ですか。それなら僕達でも倒せそうですね。この討伐クエストを受けても良いと思います。そこで大聖堂か街の協力を得たいんですけど、聖女様から話を通して貰えますか?」


「え? 私にも討伐に参加して欲しいって?」


「え? いえ、そうではなく、出現場所の情報とか――」


「分かったわ! 私も参加してあげる! 私の水の魔法で再び奴を倒してみせるわ!」


テルラと同い年くらいのルエピは、人の話を聞かずに話を勝手に決めてしまった。

周りに居る女性僧兵が溜息を隠さずにうんざりしているので、いつもの事なんだろう。

警護の人が何も言わないのであれば、テルラ側もその方向で話を続けるしかない。


「まぁ、よみがえり退治に効果的な魔法が使える人が仲間になってくださるのなら、僕達としては助かりますけど」

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