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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第九話
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5

旅装束から動き易くて清潔な部屋着に着替えたテルラ達は、全員が食堂ではなく部屋で食事を取った。

訊いたら宿屋内なら出前をしてくれるシステムが有ったので、それを利用したのだ。


「なんか、見た事が無い物が多いな。基本的に赤いし。辛いんだろうか」


六人で会議が出来るサイズの円卓に並べられた食事を訝し気に眺めるグレイ。

ハンター用の部屋なので、荷物置きや装備保管庫等もしっかりしている。


「主食はお米ですね。これがお酒の原料だそうです。おかずに使われている赤いのはトマトですね。栽培に大量の水を必要とするお米と、逆に水を必要としないトマトが一緒に使われているのは、この街の特徴ですね」


「ふーん」


一行はテーブルに着き、女神に恵みを感謝してから食事を頂いた。

豚肉とピーマンとトマトの炒め物、トマトにチーズを乗せて表面だけ焼いたサラダ、すり身魚団子のトマトスープがどんどん胃袋に収まって行く。


「へぇ。肉も魚もトマトで味付けされてるのね。酸味が食欲をそそるわ」


カレンが感心している横で、グレイとプリシゥアはリスの様に頬を膨らませている。

頬張り過ぎて喋れない様だ。

テルラとレイは普段通りに上品に食べているが、言葉を全く発していないので、彼等なりに食事に夢中になっている。


「はー、美味しかった。ごちそうさまー」


「ごちそうさまでした」


カケラも残さずに食事を終えた。

食器を部屋の外に出しておけば掃除の人が片付けてくれるそうなので、安心して食後のまったり感を楽しんだ。

そうしているとドアがノックされたので、手筈通り、護衛役のプリシゥアが反応した。


「時間通りっスね。開けるっスよ? テルラ」


「お願いします」


プリシゥアが黒髪ボブの女を部屋に招き入れる。


「改めまして。ようこそ、リトンの街へ。テルラティア・グリプト様。そして、レインボー・オン・エルカノート様。仲間の皆様も」


「お座りください」


「ありがとうございます」


着席を進めたテルラが上座に座っているので、女はその対面に座った。

レイとプリシゥアはテルラの両脇に座り、カレンとグレイは離れた位置にあるベッドに座っている。


「この街でいったい何が起こっているんですか?」


「皆様は、ランドビーク王国第三王子、ハイタッチ・ガガ・ランドビーク様をご存知でしょうか。レインボー様ならご存知でしょう」


大きく頷くレイ。


「ええ。ハンターになった直後くらいに直接お会いしましたわ。敵として対立もしましたので、仲間も知っています。彼が何か?」


「そうでしたか。実は先日、そのハイタッチ様が突然この街にお見えになり、聖女様との面会をご希望なされました。断る理由が無かったので面会が許可されたのですが、事も有ろうか、面会の場で聖女様を暗殺しようとしたのです」


「なんですって? なぜその様な事を」


「衛兵が慌てて撃退したため、動機の質問は出来ませんでした。推理しようにも全くの意味不明です。その事も有り、王族であるレインボー様が聖女様に近付くのを嫌う一派が居るのです。王族の御前で聖女様をより厚く警護するのは失礼に当たりますから。それが門前払いの理由なのです」


「わたくしが原因でしたか」


テルラが金髪の頭を横に振る。


「いえ、レイが原因ではありません。ハイタッチ王子のせいです」


「テルラ……」


レイが感動している後ろで、いつの間にか着込んでいた黒コートの下で拳銃を撫でていたグレイが口を開く。


「あの時の王子は確か、物騒な物を召喚しようとしていたんだよな。多分、聖女の命で何かを召喚したかったんじゃないか? あの時もそんな事を言っていた。王女を生贄にすれば良い感じだとかなんとか」


それを聞いた黒髪ボブの女が青褪める。


「聖女様を召喚の生贄に? なんて恐ろしい。この事実を大聖堂に持ち帰っても宜しいでしょうか」


「勿論です。しかし、正面から暗殺しようだなんて、そんな大胆な事をする意味は何なんでしょうか」


テルラが考え込む。

黒髪ボブの女も考え込む。


「もしや、男の子を攫う女の魔物とやらも、ハイタッチ様が召喚したのでしょうか。魔物としては行動が異質ですし」


レイの思い付きに首を横に振る黒髪ボブの女。


「いいえ。リトンの街は荒野の中に有るせいか、魔物の害がほとんどありませんでした。知能が低い魔物は荒野を越えられないからです。その代わりと言うのも何ですが、よみがえり系の魔物が発生する様になりました」


「よみがえり系とは?」


テルラが訊く。


「死んだ生き物が甦るんです。死体が動いている状態なので、切っても叩いても中々死にません。その代わり魔法が良く効きます。死体のクセに食欲旺盛で、生きた人間や動物を噛み殺す、かなり厄介な魔物です」


「人間を食べるんですか」


「はい。かなり強いのですが、数が少ない事と、夜しか動かない事、そして知能が低い事が救いです。問題の魔物もこの系統なのですが、なぜか噛み付きません。男の子を攫うのみです」


「特殊な魔物だけれども、存在としては珍しくはないと」


「はい。知能が高いのか、なかなか倒せません。一度魔法で退治したのですが、何事も無く復活しています。これが不死の魔物としてご連絡差し上げた理由です。不死と言う括りなら全部がそうなのですが、他のよみがえりは身体を破損させれば成仏しますから、問題の魔物はやはり特殊です」


「分かりました。しかし、その魔物を退治するクエストを受けるかどうかはちょっと悩むところです」


「なぜですか? やはり失礼が有ったからですか?」


「いいえ、全く違います。僕達が使える魔法は、ちょっと特殊なんです。今回の魔物とはかなり相性が良くないと言わざるを得ません。プリシゥアの能力も防御寄りですし、カレンの魔法は夜には使えませんし」


「それなら問題は有りません。これも皆さんが門前払いされた理由のひとつなんですが、実は件の魔物を一度退治したのは末の聖女様なんです」


「聖女様自らが魔物退治をなさったんですか?」


「はい。行方不明者が増える事を聖女様は望んでおられません。ですので特例として勇者と共に討伐を行ったのですが、残念ながら倒したはずの魔物は復活してしまいました。聖女様は何度でも倒したいと願っておられますが、特例は二度も無いと反対されています」


「なるほど、聖女様に危ない目に遭って欲しくないと。湖の護り手ですから、この街の大聖堂がそう判断するのも当然でしょう」


「しかし、聖都の大聖堂の跡取り様と王女様のパーティーなら、聖女様とご一緒しても問題は無いと考える一派も居ます。ですので、もし皆様が宜しければ、明日、失礼ながらも裏口から聖女様と面会して頂けないかと思い、私がこうして使いに出されたのです」


「分かりました。聖女様にお会いしましょう。良いですね? みなさん」


仲間全員が頷く。


「ありがとうございます。ただ、先日の暗殺未遂も有りましたので、私を含めた護衛数人が同席します。ご了承ください」


「僧兵の私もテルラの護衛みたいなもんっスから、そっちと同じ行動になるっス。それが許されるのなら、こっちも構わないっス」


それで話は纏まったので、黒髪ボブの女は恐縮しながら退室して行った。

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