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後片付けを終えたカレンは、自室に戻って物置の中のリュックを開いた。
その奥に押し込んでいた錬金術の本を開く。
「要するに、聞いた事も無い材料と普通に有る材料を、変な器具を使い、複雑な手順に沿って正確に料理すれば何かが出来る。それが錬金術って事ね。分かったわ」
パラパラとページを捲る。
後半が白紙なのは、研究途中で中断させられたか、後を継ぐ者に任せたからか。
そして、最後の2ページ。
「ホムンクルス。金。タイトルだけで作り方が書かれていないふたつ。わざわざ最後に書いたって事は、これが最後の目的って奴だろうな。学校の教科書とかでも学習のまとめを最後に持って来るのが普通だし」
本を大リュックに戻したカレンは、大の字になってベッドに寝転んだ。
「はー、疲れた。ずっと生クリームをかき回してたから手が疲れたよ」
錬金術とは、世界を理解し、人の手で神の技を再現する学問。
テルラはそんな事を言っていた。
錬金術は宇宙の真理。
人の身で神の御業を再現しようとする行為。
錬金術の本にもそんな事が書かれていた。
だが、今のカレンではアイスを作るのが精一杯。
「使える技術かどうかは分からないけど、ま、出来る事を増やすのは損じゃないでしょ」
知らない事が沢山有って色々な勉強が必要そうな錬金術とは長い付き合いになるかも知れない。
だから、のんびりと向き合って行こう。
第六話・完