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灰色の街で、光を拾う  作者: 秦はるま
第一章『ロウフォグ』
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第8話 調査二日目

 窓から差す淡い光がミナトを眠りから解放する。視界に入った光景が一瞬ミナトを惑わせようとしたが、すぐに昨日の出来事を思い出す。


「そうか……」


 老人の家に泊まることになったミナトだが今まで自宅以外で眠ったことはなかった。睡眠は自宅でといった固定概念があったので眠ることができるのか謎であったが、問題なかったのであろう。ここが夢の中とかでなければの話だが。


 起きようと体を起こすミナト。隣にはまだカイが寝ている。そして向かいのルカを探してみたが、姿は無いようであった。ざっと見渡してみたが、やはり青い光すら見つけることすらできなかった。

 別に部屋に留まっている必要がないとも思い、カイを残して昨日老人と話をした暖炉のある大広間へと向かっていった。


 天井も高く暖炉のあるおかげで暖かい空間に、お目当ての青い光はテーブルで座っていた。


「あっ、起きたんだね。おはよー!」


 いつでも見たことのない顔を見せてくれるルカ。それに対して面と向かうことができず顔を背けるミナトは言葉を返す。


「……おはよう、早いんだね」


「うん、なんだか目が冴えちゃったんだ。せっかくだし家でも探検しようとしたら、おじいちゃんが起きててね、『散歩に行ってくる』って感じで外に行っちゃった。いくら大きな家の目印があるからって外に行ったら迷っちゃいそうだよ──」


「すごいよね」と感心したかのように言うと、ミナトは「うん」と愛想がないような言い方で返した。そんな反応を見たルカはちょっと気まずいような顔をして指を頬に当ててからまた話し出す。


「そういえば、カイはまだ起きていないんだね。てっきり、朝もしっかり起きて運動とかしているタイプだと思ったよ」


「いつもの仕事の時間じゃなかったとかかな」


 この街の人は仕事中心なのでそんな発言をしたミナトに、ルカは「そうなんだ」と納得した顔で返した。


 しばらく他愛のない話をしていたらカイと老人がちょうどいいタイミングで集まってきた。


「なんだてめえらはもう起きてたってわけか」


「ほっほ、朝餉の支度でも始めようかの」


 こうして昨日と同じくみんなで準備を始め朝食をとる。


 朝食が終わり準備を始めようと寝室まで戻ってきた三人は今日の流れを改めて確認していた。


「──あまり遅くならないようにしないといけないね。昨日より早めの明るい時間に帰ってこれるようにしよっか。家を見つけられないと大変だし」


「俺様は何となくここがわかっから安心しろ」


「……この場所がわかるんだね。なら帰ってくることも問題なさそう」


「じゃあ心配事もなくなったし、今日もはりきって行こっかっ!」


 三人は昨日と同じ装備を身に着けて元気よく老人の家から出ていった。


 今日は昨日調査した方向と同じ方向を歩いていった。一日ではとても調査しきれる範囲ではなかったし、それに、


「昨日光を使ったけど、そこが今は霧だらけになっているか気になるからね」


 そんなルカの提案から昨日の調査した方向へと進むことを決めていたのである。一度通った道であるので獣道や岩場のような危険がないこともわかっており、ミナトもカイも反対することはなかった。


 しばらく歩いて目的の場所へ到着する。──厳密には木や建物といった目印があるわけではないので、昨日歩いた感覚を頼りにこの辺りであろうと目星を付けただけである。


「この辺りで合ってるかな? 霧が広がっているから、光を使った場所かそれとも全然関係ない場所に来ちゃったかちんぷんかんぷんだよ」


「おう、俺様の感覚的にもここいらで間違いねえと思うぜ」


「……何か変わった石とか目印なんかを置いてきた方が良かったかもしれないね」


「だよねーっ、でも近くに面白そうな石なんてないし──。草しかない!」


 広いスペースで実験したことが悪手であったのか、周りは草木が揺れるだけで木々も少し歩かないと存在していないほど広大に展開されている空き地。濃い霧に覆われているので、街の人すら知らない場所であるはずだが、野性味あふれる感じではなく人の手でも入っているかのように草木が茂っている。

 そんな実験するには整いすぎている空間で、三人は昨日の続きを行うために手持ちを確認する。カイは昨日渡された木の板を自分で持っていたので、取り出して扇ぐ構えをしていた。


 ルカはまたもやリュックから木の板を出す。今度は小さな木の板が二つであった。二つ合わせてもカイの持っている木の板の大きさにとても及ばないほどである。


「これミナトの分ねっ。少しでも光以外に使えるひみつ道具は必要だからね」


「チッチッチッ」と指を左右に振りながら言うと、ミナトに木の板をひとつ渡してくれた。


「……ありがとう、軽いね」


「でしょ! これなら長い間持ってても疲れ知らずだし、遠くに投げちゃうこともできるからねっ──」


 そう言ってルカは振りかぶって木の板を投げてみせる。思ったよりも遠くへ飛び霧で見失ってしまいそうなほどであったが、何とか視界にはとらえることはできたので取りに向かう。


「……飛ばせると何かあるの?」


「ふふん、特にないよ! でも怪しい人が来たときに投げればいい感じにダメージを与えられそうだよ!」


「……急に何もない場所に木の板を投げるルカの方が怪しいと思うけど」


「完全無欠の美少女になんてこと言うのっ! 全世界の人たちと友達(予定)なんだから怪しんでくる人なんていないよ!」


 木の板を拾いつつ言い合っているとカイの姿を見失いかけてしまったので、二人は今来た道を間違えないように慎重に戻っていく。


「昨日光を使った場所はこの辺りだよね。とても使った痕跡が見当たらない……」


「でも、なんだか昨日よりは霧が薄くなったように感じないっ? きっと霧にもこれ以上出せないーとかの限界があるとかじゃないかな」


「……あるのかな?」


「あるはずだよっ、調査して何もないとかより『光をたーくさん使ったら霧が晴れる!』とか思った方が何倍も良いに決まってるって!」


 希望を見つけたかのように顔を歪ませたルカの隣では、無表情ながらも「ルカがそう考えてるなら」と納得したかのような雰囲気を漂わせるミナトがコツコツと歩いていく。

 カイのところに戻ってくると木の板で周囲を扇ぎながら、


「なんかいいもんは見つかったか」


 まだまだ体力には余裕があるいつもの元気な声で聞いてきた。


「ぜんぜんだよ。ちょっと霧が薄くなってるような感じもあったけど、結局は辺り一面霧だらけだからね。他に光を出せる人でも見つけて協力してもらえれば可能性あるかもっ」


「んな奴どっかにいるんかよ。俺様はルカが初めてだっつうのに」


「私もこの街に来て会ったことないや。せっかく良い案が思いついたと思ったのにぃ──」


「光る人を探すのは無理そうだね……」


 風を感じながら三人は議論の停滞を感じる。そんな空気を変えようとルカは率先して話し出す。


「それにしても、扇いだ部分はちょっと霧が少なくなってきてるんじゃない? このままいけば──」


「おや、そちらに人が居るようだ」


 話題を変えようと口を開いた直後に少し離れたところから声が聞こえてきた。声の方へと振り返ってみるが姿は見えなかった。──厳密には霧と同化してしまっていて目を凝らさないと見えないといった状態であった。

 それもそのはず顔にまで灰色を装っているので、見えづらさMAX、怪しさMAXである。三人とも少し後退をしたが、謎の声の主の方が歩みを進めるのが早かったようで少しずつ輪郭が見えてくるようになった。


「子どもたちが三人。大人でないとはいえ話は聞かないといけません」


 ここでミナトは声に聞き覚えがあることを思い出す。少し前とかではなくつい最近、しかも今見えている容姿とほとんど似たような人である。ひとことふたこと話した程度ではあったが、昨日のようにあった内容をそう簡単に忘れるほど記憶力は悪くない。


「おや、ターゲットもいるようです。ますますあなたたちから話を聞かないわけにはいかなくなりました」


 全身灰色で纏われたルカを狙う集団──グレイウォッチだ。

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