第四十話 終焉は始まりを連れて
零「さて、と...」
俺は横たわっている魔王に向かって近づいた
零「終わったんだな...」
その終わりは本当に呆気なかった
前世あんなに激闘を繰り広げたとは思えない程に
零「まさかこんな近くに魔王がいたなんてな」
零「今まで気づかなかったぜ」
零「まあ隠れていたんだからしょうがないか...」
そうして俺はゆっくりと魔王の胸についているバッジに腕を伸ばし...
そして...
零「......」
その腕が止まった
零「憤怒...」
俺はある事に気づいてしまった
零「あいつが憤怒として偽って生活していたなら...」
零「本物の憤怒はどこにいる...?」
零「七つの大罪は...集結していない..?」
零「いや...」
零「まだそういえばいたな」
零「能力が謎に包まれてる奴が」
零「あいつ、なのか...?」
俺がそう呟いた次の瞬間...
零「!!!」
後ろから投げられたナイフに素早く反応しそれを回避した
???「今の避けられんのかぁ」
零「....」
そいつは森の奥からこちらに歩み寄ってきた
零「そうか...」
零「憤怒はお前だったんだな」
その聞き慣れた声が森の奥から聞こえてきた
零「なぁ」
零「雨宮湊!」
そいつはやがて俺の前に姿を現した
湊「いつから気づいてたんだい?」
本物の憤怒雨宮湊はそんな質問を投げかけてきた
零「気づいたのは本当にさっきだ」
湊「そっか...」
零「逆に聞きたい」
零「お前はどこから聞いていたんだ?」
湊「どこから、か」
湊「強いて言えば...」
湊「全部かな!」
零「.....」
湊「だからあいつが魔王な事も君が前世勇者な事も知ってる」
湊「君が前世の力を使える事も、ね」
零「.....」
零「で、お前はここに何しにきたんだ?」
湊「何しにか...」
湊はピンと人差しを俺の足元に向け
湊「それ、貰いにきた」
そう言ってバッジを指差した
俺は急いで魔王からバッジを回収し自分の胸元に取り付けた
零「俺はお前のコピーを倒したんだ」
零「お前なんかに負けるわけねーだろ」
俺はそう言って湊に剣先を突きつけた
湊「.....」
そして数秒見つめ合った後
あろう事か湊は笑い出した
零「何がおかしい?」
湊「いや、あまりにも面白い事言うんだなーって」
零「面白い?」
湊「あまりにも面白い勘違いだよ」
湊「今そこに倒れてる奴が俺のコピー?」
湊「1ミリもコピーできてねーよ」
湊はまるで人が変わったかのように表情がストンと抜け落ちた
湊「あいつが思い描いた憤怒の能力は怒った分だけ強くなる能力」
零「....それが憤怒の能力だろ?」
湊「その勘違いが面白いって言ってるんだよ」
湊「俺の憤怒の能力はそんな簡単な能力じゃない」
湊「俺の今までの戦い方を思い返してみろよ」
俺はそう言われ湊の戦い方を思い返した
俺の記憶にいた湊はいつも
零「何かを...無効化していた...」
そうだ、少し考えれば分かる話だった
湊は魔王のように高火力でゴリ押しなんてしなかった
湊はあの試験の日
能力を死を無効化していた
湊「よく分かってんじゃん」
湊「憤怒の本当の能力は...」
湊「自分が許せないと感じた事象を書き換える能力」
零「....」
俺は言葉を詰まらせた
チートすぎんだろ...
湊「例えば」
湊「君の剣は前世の力なのに、現世で使うのは許せない...」
湊「とかなっ!」
湊がそう言った瞬間
零「っっ!!」
俺が今まで握りしめていた剣は
パッ!と消えた
湊「安心しろよ」
湊「俺との戦いが終わったら元に戻ってる」
湊「さて..勇者?」
湊「勇者の代名詞ともいえる剣がなくなった訳だが...」
湊「お前はどうやって勝つんだ?」
零「...一ついいか?」
湊「絶体絶命の時に質問とはいい度胸してるな」
湊「ま、いいけど」
零「お前はなんで自分が憤怒だと明かさなかったんだ?」
湊「......」
湊は空を見上げた
湊「何度だって訴えた」
湊「俺がこの能力に気づいたのはこの学園に入学してから半年がたった時だった」
湊「俺は試験で能力を開花させ、自分の能力があの七つの大罪の憤怒だと言う事に気づいた」
湊「でも...」
湊は歯を食いしばり拳を握った
湊「もうこの学校には憤怒の能力者がいた」
零「....魔王..」
湊「俺は学園長に言った」
湊「俺こそが憤怒だと」
湊「でも..」
湊「学園長は実績がある魔王を信じた」
湊「これが俺がプレデターじゃなく、Dクラスにいる理由だ」
零「なるほどな...」
湊「だからな、これでも俺はお前に感謝してるんだ」
零「?」
湊「学園のルール上試験以外での殺傷は禁止」
湊「だからな、俺はこいつを試験で倒してくれたお前に感謝してる」
湊「そこで一つ約束しよう」
零「約束?」
湊はそうしてその約束を言ってくるのだった
湊「俺はこの試験が終わってもお前の秘密をバラさないと誓うよ」
零「っ!!」
零「それは本当!?」
湊「あぁ」
零「そっかぁ」
零「じゃあさ..」
零「ほら!」
俺はその金色に光るバッジを湊に投げた
湊はそれを慌てながらもキャッチし
湊「なんのつもりだ?」
零「本来魔王の席はお前のだったんだろ?」
零「なら、このバッジは俺のじゃなくてお前のバッジだ」
零「それに...」
湊「?」
零「正直、剣がなけりゃ俺に勝ち目なんてないからな」
湊「ハハッ!なんだよそれ!」
湊は笑い出した
やがて落ち着いた湊は
湊「なら、これはありがたく貰っていく事にする」
湊「お前の事情は秘密にする」
湊「それでいいか?」
零「あぁ」
湊「そうか」
湊「じゃ、俺はもう行く事にする」
湊「お前もバッジをゲットする事を期待してる」
湊はそれだけ言って森の奥に消えていった
一人残された俺は
零「はぁ...また集め直しかよ」
そんな独り言を呟き
零「......」
月を見上げた
零「今頃、あいつはどうしてんのかなぁ」
俺はこの無人島のどこかにいるDクラスの戦友を想うのだった
第四十話 終了




