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第十六話 静寂に立つ少女

ガラガラ

扉を開ける

.......

静かだった

さっきまでの戦いが嘘のように何もない

重傷なもの

意識を失っているもの

動く気力も体力ないもの

様々だった

「随分と遅かったね.....」

かすれた声

視線をむけると

そこには悠がいた

壁にもたれかかり、洗い呼吸を繰り返していた

零「....まだ起きてたのか」

悠「なんとかね...」

小さく笑う

しかしその体はボロボロだった

悠は地面に寝転び

悠「で....」

一瞬息を整え

悠「勝ったのかい?」

零「......」

零「ああ」

短くそう答える

悠は天井を見つめ

悠「そっかぁ」

悠「俺の見る目は間違ってなかったんだね」

零「そうみたいだな」

悠はあまり喜ばなかった

喜べなかった

もう喜ぶだけの体力がなかったのだろう

悠「あーーー」

悠「待ってた甲斐があったなぁ」

悠「ありがとねKING」

悠は僕にフッと笑いかけ

悠「側近は少し休暇をもらうけどいいかい?」

零「......あぁ」

零「ゆっくり休め」

悠「ありが....」

悠「とう...」

悠はそれだけ言ってその瞳を閉じた

零「.......」

静寂

教室には荒い呼吸音すらもう残ってない

倒れた仲間、割れた窓ガラス、原型を止めていない机

あるのは

そこで戦闘が行われたという事実だけだった

零「やっと終わり、か」

僕が一息吐こうとしたその時

ガラガラと

背後でドアが開かれた

きっと学園長が試験の後始末をしにきたのだろう

僕はそう思い後ろを振り向くと

そこには....

見知らぬ少女が立っていた

きれいな黒髪とその真っ赤な瞳が特徴的な少女だった

少女は教室の惨状には目もくれず

ただ一直線に僕を見つめていた

零「誰だ?お前」

少女は数秒僕を観察し続けた後

やがてゆっくりと口を開いた

少女「.....君が、神谷零?」

静かな声

感情の乗っていないそんな問い

零「....だったらなんだ」

少女は僅かに笑みを浮かべ

少女「へぇ....」

少女「ここにいるって事は....」

少女「倒したんだ?EクラスのKING」

零「....そうだな」

少女は一歩また一歩と教室に足を踏み入れた

靴の音だけが教室内に響き渡った

少女は歩いてくる間も一直線に僕を見つめてきた

零「.....見えてないのか?この状況が」 

そう問いを投げかけた

だが少女は

少女「ん?」

不思議そうに首を傾けて

少女「見えてるけど?」

そう、即答した

少女「でも...」

少女「別に興味ないし」

あっさりとそう答えた

零「.......」

その狂気じみた少女に僕は言葉を詰まらせた

少女「それよりさ....」

少女はさらに一歩近ずき

気づけば僕の眼前にいた

少女「どうやって勝ったの?」

少女「あなた無能力者なんでしょ?」

少女「どうやってEクラス最強に勝ったの?」

零「.........」

零「あいつは能力は強かったが戦い方が単調だった」

零「ワンパターンだった攻撃を見切って倒した」

零「僕が強いんじゃなくてあいつが能力を使いこなせてなかっただけだ」

少女「ふーん?」

零「.....何が言いたい」

僕は圧をかけるように低くそう言った

少女は僅かに口角を上げ

少女「別に?」

少女「ただ気になっただけ」

少女は数十秒間僕をまじまじと観察した後

少女「君、面白いね」

そう一言告げ

少女は踵を返した

零「おい!待てよ!」

僕は思わず少女に静止をかけた

少女は上半身だけを翻し

少女「水瀬美月」

零「え?」

美月「私の名前」

美月「覚えておいてよ」

美月「きっとこれからも関わるだろうからさ」

ガラガラ

それだけ言って美月と名乗った少女は去ってしまった

残されたのは...

壊れた教室、倒れた仲間

そして

零「なんなんだよ....あいつ....」

理解の及ばない存在への違和感だけだった

僕がその場で何もできずに呆けていると....

ガラガラと

再度扉が開かれた

僕は美月が戻ってきたのかと思い、勢いよくそちらに振り返った

しかし....

学園長「.....どうしたんだい?そんな慌てて」

そこにいたのは今度こそ学園長だった

零「.....いえ、特に....」

学園長「そうか?」

学園長「それにしても....」

学園長は教室全体を一瞥し

学園長「随分と派手にやってくれたな」

零「.....御影に言ってください」

零「僕はただバリケードを作ったら破壊されただけですよ」

学園長「.....まあいい」

学園長「入ってこい」

学園長がそう合図すると

教師が何人も教室に入り

担架で倒れている生徒達を運びだした

学園長はそんな様子を横目に

学園長「なぁ....神谷零」

そう言葉を投げかけてきた

零「.....なんですか?」

学園長「戦闘中に私の視界から突如としてKING二人が消えた」

学園長「あれはどういう手法を使ったんだ?」

僕は分かっていたとはいえ少しどきりとし、言葉に詰まった

零「......」

零「御影の能力ですよ」

零「御影の力で異空間にワープさせられそこでの戦闘を強いられた」

零「僕は御影の隙をついてたまたま勝てた」

零「ただそれだけですよ」

学園長は不気味に笑い

学園長「ほぅ?」

学園長「つまり御影は後一撃与えれば勝てる状況で相手にチャンスを与えるため転移したのか?」

学園長「そして世界に能力を二つ持っている者は見た事がない」

学園長「御影は二つ能力を持っているそれこそsssランクにいてもおかしくないような人材」

学園長「そういう事か?」

零「.......」

あぁ....どいつもこいつも....

その時、美月の顔が脳裏にうかんだ

零「それはわかりません」

零「ですがあれは僕の力ではない」

零「僕から言えるのはそれだけです」

学園長「.....ふむ」

学園長「まぁ、私も断定ができるわけじゃない」

学園長「<今は>そういう事にしてやろう」

学園長「さて.....」

学園長「私はこれから試験の後始末で忙しいんだ」

学園長「君は今日は寮に戻って休みなさい」

学園長「あぁ、寮はEクラスのものに変わっているから」

学園長「間違えないように」

零「.....分かりました」

僕は初めて勝ったんだという実感が湧いた気がした

学園長「Fクラスの勝利はこの学園が創立されてから初めての快挙だ」

学園長「改めて」

学園長「おめでとう神谷零」

零「.......」

僕は学園長のそんな言葉を背に受け

教室から出るのだった


第十六話 終了






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