随分と狭い認識だな?
そろそろ……
国王が話した内容は……クーデターだった。
ゼタリウス王国の第2位の規模を誇る都市を治める公爵「ギードリュー=ジュザ=ハッティン」で、王弟でもある。
クーデターを興したのが、筆頭公爵な上に王弟というだけでも厄介なのに、奴が治める領地は国の食料庫と言われる程の農地を抱えている。
更に、他国との交易を管理している元締でもある。
さて、この至れり尽くせりな立場なのは、当然だが理由がある。
その理由は、王としての器もあり、聡明で人格者だからだ。
国王が何か有る度に口に出していた。
国王に何か有ってもギドが居るから心配無い……と。
そんな認識だからこそ、クーデターを興すとは夢にも思わなかったらしい。
しかし、実際にクーデターを興した以上は対処しなければならない。
そして、彼我の戦力は均衡していて、このままでは、どちらが勝つにしても国が疲労してしまい、他国の武力介入を許してしまう。
そんな時に、エクレシア王女は俺の事を思い出した訳だ。
「ライカ様。 どうか、私達に力を貸して頂けないでしょうか?」
「……」
「……ふん。 何を迷う事がある! 聞いた話が本当なら簡単な事であろう?
悩むという事は、聞いた話が虚偽である場合だけであるな」
王国騎士団長が、俺を値踏みしている。
「ねえ、ライカ」
「何だ、ルシア」
「ライカなら、この王城を破壊するのに、どれくらいの時間が掛かる?」
ルシアの意図を察した俺はあっさり答えた。
「……破壊するだけなら3秒も有れば充分だ」
この発言に、特に両騎士団長と両魔術士団長がざわめいた。
「どうやって?」
「魔力球を上空から叩き落とす」
「……それが3秒有れば、可能だと?」
「そうだ」
俺が答えた瞬間に、王国騎士団長が叫ぶ。
「不可能だ!」
「理由は?」
「そんな事が出来る訳が無い!」
「何故、決め付ける?」
「当たり前だ! そんなバカげた事を、たった1人で出来る訳が無い!」
「随分と狭い認識だな?」
「……どういう事だ?」
「お前が持つ知識で、この世界の全てを説明する事が出来るのか?」
「詭弁だ!」
「出来るのか?」
俺は同じ言葉を紡ぐ事で、返答を強要させた。
「……で、出来ない」
「そういう事だ。 それ程の力を持つ俺が参戦しても良いのか?」
「確かに、それ程の力を持っているのなら、即答しないのが普通と言えるな」
「陛下!」
「生殺与奪の権利を俺が持った状態で、制圧や鎮圧に防衛なら、話を聞いてから判断して参戦しても良い」
幾ら、文字通りの違う世界とはいえ、言葉を交わした人達が殺されるのは見たくないしな。
「ライカ様、ありがとうございます」
「聞いていなかったのか? 話を聞いてから判断すると言ったんだ」
「それで充分です」
「うむ。 それでは……」
「お待ちください、陛下」
今度は近衛騎士団長が口を挟む。
「聞いた通りの力を持っているか、確かめる必要はあるかと愚考します」
「陛下。 私も同意見です」
「私もです」
両魔術士団長も近衛騎士団長に賛成する。
こうなると、無視出来ない国王は……
「ライカ殿。 力を示してくれないか?」
「分かった」
俺達は場所を移動して、近衛騎士団と近衛魔術士団が使っている訓練場に到着した。
俺は、向こうが用意した訓練着に着替えたし、武具も「倉庫」に全て仕舞っている。
これで、俺は言い訳を、向こうは言い掛かりが出来なくなった。
そして、向こうは完全武装。
彼我の差にエクレシア王女は抗議したが、俺が止めた。
正直、この程度は誤差の範囲内で、1mの物差しに対して、数cmの違いでしかない。
「……準備は良いな?」
「ああ」
「「「「は!」」」」
「では……始め!」
「動くなぁ! 私が化けの皮を剥がす!」
王国騎士団長が叫び、他の団長3人の承諾を得ずに突っ込んできた。
「うぉおおおーーー!」
王国騎士団長は、普段使っている騎士剣を縦横無尽に振るうが、俺は全てを躱す。
そして、渾身の横薙ぎが振るわれた。
「殺った!」
「残像だ」
「……ぐはっ!」
オマージュを忠実に再現すると、王国騎士団長を殺してしまうから、デコピンにしたが、伸身5回転して壁に激突した。
「「「「「……な!?」」」」」
驚いているのは、国王と宰相と近衛騎士団長と両魔術士団長だ。
エクレシア王女は、余裕の笑顔で紅茶を飲んでいるが、パラソルはやり過ぎじゃね?
「「……炎槍」」
デコピンの衝撃から直ぐに立ち直り、両魔術士団長は魔法を放った。
「……螺旋空牙」
俺の魔法で、向こうの炎槍は消滅した。
「「……何!」」
簡単に言えば、相手の攻撃魔法をミキサーに掛けた。
詳細は、無数の小さな空気の刃で、攻撃魔法としての形を維持出来ない程に削った訳だ。
「それならば……氷槍」
「……岩槍」
近衛魔術士団長が氷槍を放つと、それに合わせる様に王国魔術士団長が岩槍を放つ。
「……裂風撃弾」
……バキン!!
普段使う「風撃弾」を、日本警察官の短銃に例えると、この「裂風撃弾」は、357マグナム級の威力を誇る。
その裂風撃弾で正面から当て、氷槍と岩槍を破壊した。
「まだよ! 光槍」
近衛魔術士団長が、3つ目の魔法を放つ。
「雷撃弾」
……パキン!
「……そんな!」
しかし、俺の雷撃弾が光槍を粉砕するが、その隙を突き、近衛騎士団長からの一撃が繰り出された。
「……聖十字剛剣!」
「……」
俺は、近衛騎士団長の一撃を人差し指と中指の2本で白刃取りにした。
「バカな!? ……ぐはっ!」
近衛騎士団長にもデコピンを放ち伸身5回転して壁に激突するが、気絶せずに自分で立ち上がり言った。
「我らの負けだ」
「それまで! 勝者ライカ!」
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