神の視点のプロローグ
お久しぶりです、涼御ヤミです。
ゆっくりですが、かま×なべの続編の更新をしていきます。
長い目で見てお付き合いいただけると大変嬉しいです。
今現在華都はネトゲ《ラプソディ・オンライン》の中にいた。
いや、中というと語弊があるかもしれない。正確にはラプソにログインしているというのが正しい。
煤けたように黒い剣を携え、黒いマントを翻す姿は実に様になっている。黒を基調とした衣装はさしずめダークヒーロー――ではなく、この歳にして中二病を患ってしまった可哀想な奴と言えよう。
そんなゴキブリのようなアバターに身を扮した華都の傍らには二人の女、女キャラがいた。
見た目におけるディテール割愛。ご想像にお任せしますという投げっぱを気取るつもりは毛頭ないため名前だけ言うと、中の人は知る人ぞ知る神宮寺月と濃野椛の二人だ。無論ネナベなどでは断じてない。それは穂積華都も例外ではないのだが。
決闘場内部、MAPは草木が生い茂る密林のような場所。
ステージは明るいが、現実世界の外は真っ暗。どこか遠くの方で鳥達が鳴いているが、メタ的なことを言うとそれは一種のBGMでしかない。
獣道のような開けた空間に華都達は立っていた。ジッと正面を見据え張り詰めた空気に身を晒している。
華都はこの空気が嫌いではなかった。むしろ普通に生活していては味わえない現実から乖離した空気にどこか酔いしれてすらいた。
軌を一にしてその五メートルほど先に華都達と同じようにつるむ三人組の姿があった。
男が二人に女が一人、あてにならない見た目年齢は双方ともに十代半ばといったところ。蓋を開けてもみると強ち間違ってもいないのだが。
まず初めに口を開いたのは中央にいたリーダー格と思しき男だった。男は熱い眼差しをしゃかりきに華都に向けると、
『待ちに待った対戦の時! 初のギルド戦! 俺は楽しみで夜も眠れなかった!』
俺は普通に寝てたけどな、と華都は思う。
それは大げさすぎるんじゃないかな、と椛は思う。
あくまでも思うだけだ。わざわざ口に出したりはしない。
『あたしは普通に寝たしちょっと大げさすぎるんじゃない?』
しかしそう平然と言って退ける女がいた。神宮寺月だ。思ったことを建前ではなく本音として口に出す。それが彼女の魅力の一つでもあるのだが。
『まるで遠足前夜に浮き立つ小学生みたいね』
それに関しては同意と言わんばかりに男の取り巻きが頷く。満場一致。
『お、お前らな……ともかく、だ。カザト!』
急に名指しされ、華都がぴくり反応を示す。
『お互い、今日はいい試合をしようぜ。俺はお前のライバルなんだからな』
『……おう』
面と向かって言われた言葉に面食らうことなく、華都は少し照れたように頷いてみせる。
こんなこと言う奴は今までラプソにはいなかった。
華都は華都でくさい台詞に苦笑いしながらも真剣に向き合う気概でいた。
いよいよもってギルド戦の火蓋が切って落とされようとするが、少しばかり待ってほしい。
これは月と玲霞の蟠りが解けてから少し先のお話。こうなった経緯は今から十日ほど遡る必要がある――
次回、すぐ。




