5話 毛虫退治
ども、徹夜明けのUNKNOWNです。
今回、ジルの本性がちょっとだけ・・・見えるのかな?
ではどぞ。
・・・・・・・
「・・・・・・。」
全力疾走してマスターの元に駆けつけた私は、ただ言葉を失っていた。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ズドン!!
そこには、涙目で足を震わせながらも手に持った銃を小部屋の中から大量に湧き出てくる獲物に乱射し続けるマスターの姿があった。
そこまではいい。
問題は、
「い゛ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ズドン!!
・・・・・
「のぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ズドン!!
・・・・
・・・・・・何故マスターはそんな毛虫ごときに苦戦しておられるので?
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
はっきり言おう。
僕は毛虫が苦手だ。
どのぐらい苦手かって?
近づくのもムリ。見るのもムリ。想像するのもムリ。触るのなんて絶対ムリ!!
そんな感じだ。
その毛虫が、たった今、僕の目の前に大量に蠢いている。
ムリ!!死ぬ!!!冗談抜きで死ぬ!!!
しかもあいつら、標準サイズ(だいたい3~4センチ、当社比)より大分でかくない!!?
1メートル以上あるよね絶対!!
しかもあいつら、隙あらばこちらに向かって飛びついてくるんだ!!!
どこにそんな脚力あるんだよ!!
ドアを開けた瞬間に目に入ったまさかの1メートル越え毛虫(大量)を暗視ゴーグルで明るくなってしまった視界に収めたとき、思わず思考がフリーズしかけた。
それでも飛び掛ってきた毛虫からなんとか回避できた僕はほめられてもいいと思う。
今僕が撃っているのは、折り畳み式の樹脂製ストックとピストルグリップを備えた、アサルトライフルのような外観・構造ながら12ゲージの散弾を使用する散弾銃。
アサルトライフルと同じように10連発の箱型弾倉を使用するので、弾切れになったときの再装填が非常にスピーディーだという特徴がある。
僕の銃にはさらにカスタマイズが加えてあり、ハンドガード下部先端にレーザーサイトを装着し、箱型弾倉は3つが粘着テープで束ねられて手返しがさらに早くなるように工夫してある。
「う゛ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
毛虫を視界に収めるたび、反射的に奇妙な叫びが僕の口から漏れてたりしてしまうのだが、そんな事はいちいち気にしていられない。
とにもかくにも僕の頭の中はいかにしてこの巨大毛虫たちから逃げ出すかを考える事でいっぱいだった。
ズドン!!ズドン!!ズドン!!
腰だめの姿勢からレーザーサイトで照準しながら3連射。
5メートルほどの至近距離から散弾を喰らった巨大毛虫は自らの体液をぶちまけながら絶命する。
1匹につき1発の割合で十分に倒せる事が一応わかった。
しかし、逃げようとしても毛虫のせいで足が震えて動かない。今にも腰が抜けてしまいそうだ。
次々と襲い掛かってくる毛虫。
いくら倒しても続々と湧き出てくる毛虫。
自分の視界を埋め尽くすほどに集結してくる毛虫。
「ぎびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
地獄だ。ここは地獄だ。行った事ないけど多分ここは地獄だ!
あまりの気持ち悪さに、もう銃を放棄して全速力で後退しようなんて考えてしまった。
射撃する手を止め、回れ右をしようとする。
(・・・・あ)
完全に足が動かない事を忘れていた。
結果、その場でただ動きを止めただけ。こ、これじゃイイ的じゃありませんこと?
もう気持ち悪すぎて思考もおかしくなりつつあるみたいだ。
頭がおかしくなりつつあった僕は、「とりあえず首だけでも回れ右だい!」なんて訳のわからない事を考えながら、ただ首だけを後ろに回した。
と、そこには毛虫・・・・ではなく。
「・・・・・・!!!」
なぜか呆れ顔でこちらを見ている使い魔の姿があった。
ありがたい!神の導きだ!!一応僕も神だけど!!
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・マスター、なにやってるんですか。
へっぴり腰で毛虫に散弾を乱射しまくるマスターを見ていると、思わずため息が出てしまった。
情けないですねぇ・・・?
あんなちょっとでっかいぐらいの毛虫がなんです?早く駆除しないと襲われますよ?まぁ襲われたところで大したダメージなんて無いでしょうけどね?
そんな事を考えていたら、ふいにマスターが動きを止めた。
どうやら体が思うように動かないらしく、止まったままの姿勢で凍りつくマスター。
(・・・・・ドジ?)
そのままマスターは真っ青な顔で、硬直して動かないらしい胴体はそのままに、首だけを器用に私のいる背後に向けた。
そこでやっと私の存在に気がついたらしく、まるで神でも見るかのような目で私を見てくる。
えぇい鬱陶しい、こっちみんな!マスターあなた神でしょうが!
そうこうしている間に、近付いていた巨大毛虫のうち数匹がついに飛びかかり攻撃の射程内にマスターを収めた。
私は口中でひとつ舌打ちをして、
(世話の焼けるマスター・・・・)
腰に佩いていたマチェットを抜き放ち、マスターの救助に向かった。
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
数分後。
「・・・・マスター、いい加減動いてください」
「・・・・ムリ?」
私とマスターの周りには、ただミンチになったかつて毛虫だったモノが散らばっているのみ。
あの後私は、使い物にならないマスターから取り上げた散弾銃も使って毛虫を殲滅した。毛虫は数こそ多いもののまったく強くは無かったため、特に何も考えずただ殺していたらいつの間にか湧出が止まっていた。
はっきり言って雑魚。取るに足らない相手だった。
しかし、
「マスター・・・・早く動かないと殴りますよ?」
「ムリ!!絶対ムリ!!毛虫の死骸とかもムリな事に今気が付いた!!」
そう。
ここにきて、マスターの毛虫嫌いが全力で発揮されているのだ。
マスターは大の毛虫嫌いだ。
かなり前に、マスターの姉上である|メグル様(ボクっ娘)がマスターが毛虫嫌いだということを知り、面白半分でちょっとした悪戯をしたことがある。
メグル様が部屋でくつろぐマスターに後ろ手で隠し持っていた木の枝(毛虫つき)をサッと顔の前に差し出したところ、突如意味不明な言語で絶叫しつつパニック状態に陥ったマスターは巨大な機関砲(35mm二連装対空機関砲、というそうだ)をおもむろに召喚し乱射、そこにいた毛虫もろとも神界にあった広大な林の一部を消滅させる騒ぎを起こしたのだ。
さすがにシャレになっていない。
というか、あれから200年以上経ったというのにまだ毛虫嫌いが治っていなかったとは。
しかしまあマスターはそういうレベルの毛虫嫌いなのだ。何とか策を弄してマスターを動かすしかない。
ならば、
「ほらマスター、こっちまで来れたらチョコレートあげますよ」
餌で釣る作戦。
「いらんわ!だいたいこんなスプラッターな状況の中で食べられるわけないでしょうが!!」
「まぁ、そもそもチョコレートなんて今持ってませんけどね?」
「しかも詐欺だった!!?」
餌で釣る作戦は失敗。
ならば・・・
「ならマスターがそこから10秒以内に歩き出さねば制裁を加えます」
「使い魔がマスターに制裁って・・・・」
「気にしたら負けです。さあマスター、行きますよ? 10・・・9・・・」
「ちょっと待った!!制裁の内容すらもわからないうちにカウントするとかひどくない!?」
「む。・・・わかりました。では、制裁は私がマスターを前方から抱きしめながらあんなことやこんなことをします。コレでどうです?」
我ながらいい案ではありませんか!
「あ、今の言葉を聞いたら足が動くようになった」
「なぜ動いたんですか!!」
「なぜ動くと怒られるんですか!?」
まったく、あと少しで小動物なマスターにあんな事やこんな事ができるところだったのに!
マスターは今の問答のせいでまた歩けるようになったようだ。
仕方ありません、また今度隙を突いて仕掛ける事にしましょう。
「・・・ジル、なんか悪い事をたくらんでるときの顔してる?」
「気のせいですよ」
私とマスターは、ダンジョンの出口を探すべく再び探索を始めたのだった。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
クロは毛虫が滅茶苦茶苦手です。
どのぐらい苦手かって、ど○エモンのネズミ嫌いとほぼ同レベルと言っていいほど苦手です。
ちなみにまだ書けてないんですがクロはなんだろう、小動物系・・だと思うんです。うん。
魅惑の抱き心地・・・みたいな(棒
次回はダンジョンから出られる・・・かも。
今回登場した武器は、ロシアの「イズマッシュ・サイガ12S」と「L-90(二連装高射機関砲)」です。
サイガかスパスか迷ったんですが結局は好物のロシアン兵器に。趣味全開!
※誤字脱字のご指摘、また感想などございましたらどしどしお願いします!